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小説掲載プログ
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帰郷、変態京楽の場合「息子さんを下さい」

「やったーこれで今季の授業も終わりだ!」

京楽がはしゃいでいた。

冬休みに突入したのだ。

京楽は特に予定がないので、冬休みはだらだらして浮竹と一緒に過ごそうと思っていたが、当の浮竹は故郷に一度帰ることが決まっていた。

「ねぇ、浮竹。一緒についていったら、怒る?」

「来るな!」

「一緒につれていってくれたら、甘味屋の食べ放題チケット1か月分あげるよ?」

「ぐ・・・何もない、田舎だぞ?」

「浮竹の生まれた所でしょ。一度見てみたい」

「食事代は自分でもてよ!俺の家に泊めることはできるが、広くないぞ!」

浮竹は、京楽が何を考えているのか分からなくて、つい口調が強めになった。

「この寮の部屋もせまいじゃないか」

二人で過ごすには十分な広さがあるが、上流貴族の京楽の思考からすると狭い部屋になるのだろう。

浮竹は思う。何故突然、京楽が浮竹の実家に来たいといいだしたのか。

思い当たるとしたら、息子さんを僕にください?・・・・でも、いくら京楽でもそこまでいかないか。

そうして、浮竹と京楽は、浮竹の故郷である南地方に足を向けた。

3回生であるが、成績が優秀で上の学年にも教えてもらっているせいで瞬歩は使えた。

それで、数日はかかる距離を1日に短縮した。

「へぇ、ここが浮竹の生まれ故郷かぁ」

もう、刈り取られた後の田んぼが広がっていた。森が近くにあって、よく猪や兎、鹿などをとって夕飯の足しにしたものだ。

「あれが、俺の家だ」

あばら家というほど酷くもないし、豪華というわけでもない。普通の建物の家だった。
3回建てで、けっこう幅があり、思ったよりも広かった。

「ここら辺は田舎だからな。土地代がバカ安いんだ。だから、家の面積は広めだ。何より、家族が多いしな」

「8人兄弟だっけ」

「8人兄弟と両親と、あと祖父が暮らしている」

「善は急げ!」

「おい、京楽!」

浮竹の家に向けて、京楽は全速力で走り出した。そのスピードの速さに、さすがの浮竹もついていけない。

ガラリと、戸をあけて、京楽は浮竹の家に入り込む。

「浮竹十四郎のお母様とお父様はいますか!」

「はい?母は私ですが・・・・・」

「お義母さん!息子さんを僕にください!」

「は?」

「京楽、このボケ!」

浮竹は、京楽の背中を蹴った。

「げふげふ!痛いじゃないか、なにするんだ浮竹!」

「すみません母上、こいつは変態なんです」

「は?あ、ああ・・・。手紙に書いてあった、十四郎の貞操を狙っている、十四郎のパンツを被ったり、盗んだりする、あの京楽様ですか?」

「いえいえ、人違いです」

回れ右をした京楽に、プロレス技をかける浮竹。

「そう、なんです。こいつが、あの変態京楽・・・・・・」

「ギブギブ!肩の関節が外れる!」

「手紙では書いてなかったけど、仲がいいのねぇ」

「母上、こいつは俺の貞操を狙っているんですよ」

「上流貴族の京楽様といい仲になれるなら、いいではありませんか!」

「母上のばかーーー!」

浮竹は、京楽の股間を蹴り上げて、家の奥へ引っ込んでしまった。

「父上はいないのか・・・・」

「お、十四郎じゃないか」

「お爺様!聞いてください、母上が・・・・」

「ふむ。では、護身のために、蹴術、究極奥義を授けよう・・・・・」

ごくり。

「その名も、金的蹴り」

ずさぁ。

「股間を蹴り上げるんでしょう」

「そうじゃ」

「すでに習得しています」

「む、いつの間に・・・・免許皆伝じゃ。浮竹蹴術、ここに極まれり」

「あー、お兄ちゃんだ」

「兄様」

「兄上ー」

「にいにい」

まだ幼い子をいれて、数人の妹や弟たちが、浮竹に群がった。

ずっと前に、浮竹が教えてくれた話では、田んぼや畑の仕事をしながら、読み書きや算術を学ぶ学校に行っているらしい。

「十四郎、ごめんなさいね。仕送りの額を減らしてしまって・・・・」

母親がやってきて、そう謝って、浮竹を抱き締めた。

「学校は楽しい?」

「俺の周囲にもれなく一人の変態がついてきますが、比較的楽しいです。このままいけば、護廷13隊の席官入りは間違いなしだと」

「期待していますよ、十四郎。死神様になれば、お給金が高いから、子供たちにお腹いっぱい食べさせてあげれるし、十四郎の薬のために重ねた借金も返済できます」

「不甲斐なくて申し訳ありません」

「京楽様、どうかうちの十四郎をお願いね」

「はい、お義母さん」

「京楽、お前というやつは・・・・・・」

結局数日間を京楽は浮竹家で過ごした。

「お義父さん、もう一杯」

いつも間にか、父親も懐柔されていた。

「いやぁ、こんな高い酒を飲むのははじめてで」

「安酒ですよ、さぁさぁ」

「流石は京楽家の方だ。お金はあるところにはあるんだなぁ」

浮竹の父親は、どちからというとのほほんとした性格だった。

兄弟たちとも、京楽は仲良くした。

そこに、上流貴族だから、という言葉はない。気さくで朗らかな人だと、父も母も言うが、その正体を知っているだけに、浮竹は胃に穴があきそうだった。

やがて、まだ休み期間ではあるが、学院の寮に戻る日がやってきた。

「君の真ん中の妹さん、一番君に似てるね。髪の色を白くすれば、女の子版浮竹だ」

「妹に手を出したら・・・・」

「いやだなぁ、浮竹、嫉妬してるの?僕が好きなのは浮竹十四郎、君一人だよ!」

むちゅーとキスをねだってくる京楽を押しやって、浮竹は父親と母親に挨拶した。

「では、学院にもどります。どうが、御病気などせぬよう・・・・」

「それはこちらの台詞だよ、十四郎。肺の病、酷くならないようにちゃんと薬をのむんだぞ」

「そうですよ、十四郎。京楽様、少し粗暴なところもありますが、基本は優しいいい子なんです。どうか、十四郎を頼みます」

「お義父さん、お義母さん、息子さんをくださってありがとうございます」

ばきぼき。

背後で、笑顔で浮竹が指の関節を鳴らしていた。

「で、では帰ります!とう!」

瞬歩で、京楽は逃げ出した。

「では父上、母上、またいつか。待て京楽、父上と母上に息子さんをくださってありがとうございますとは、何事だーーー!」

瞬歩で般若の面を被った浮竹が追いかけてくる。

「うひいいい、怒っているうううう。とてつもなく怒ってるうううう」

浮竹の弟妹は、お菓子で味方につけた。父親と母親には金をちらつかせて。

唯一味方にできなかったのは、浮竹の祖父であった。

蹴術の道場を開いているらしい。

懐柔しようとすると、上流貴族などくそくらえだといって、脛を蹴ってきた。

「もう、ご両親には挨拶したもんね!後は既成事実作って籍をいれるだけさ!」

カッ。

浮竹が、般若から阿修羅になった。

「京楽ーーーーーーー!!!破道の4、白雷!」

「もぎゃああああああああ」

変態京楽との帰郷は、こんな感じで終わるのだった。





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