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忘れな草Ⅲ

町を歩いていると、ふと目にとまった宝石店。
ショウィンドウにはりつく。

さっき、愚かにも自分を女と間違えてしつこくナンパしてきた相手を、路地裏につれていき鋭い蹴りを放った後、こめかみに銃をつきつけて「死にたいのか?」とにっこり笑顔で問いかけてきたところだ。
ティエリアの格好はいつもと同じユニセックスな服装。
黒のガーネットのチョーカーが首に光り、髪には翡翠の花形にはめこまれたプラチナの髪飾りが輝いている。

ショウウィンドウの中を見る。

ちょうど、携帯がなった。
「はい、もしもし?」
「あ、ティエリア?今どこ」
「今、宝石店の前です」
「なんでそんなとこに。まぁいいか。近いから今から合流すんな」
「はい、分かりました。宝石店の中で待ってますね」

携帯を切って、宝石店の中にはいる。
「いらっしゃいませ」
ケースの中をのぞくと、ショウウインドウに飾られていたのと同じ髪飾りがあった。
値段は高い。
同じ蒼い宝石なのに、ケースの中にあったのはブルーサファイア。
少し落胆する。

でも、その髪飾りがどうしても欲しい。

「よ、宝石なんか見つめて。ティエリアにしては珍しいな」
私服でカッコよく決めたロックオンが、背後に立っていた。
「髪飾りが・・・・欲しいんです」
「買ってやるよ」
「でも・・・・僕が欲しいのは、この髪飾りじゃない」
「どういうこった?」
ロックオンの手をひいて、ショウウィンドウを見せる。
「ああ。さっきのケースの中のと同じデザインだな。ショウウインドウの中ってことは、売り物じゃないのかもな」
「でも、あれがどうしても欲しいです」
「ティエリアが物に固執するなんて、珍しいな・・・・」
「あなたに送った、忘れな草の髪飾りだ」

「待ってろ。今、店の人と交渉してくるから」
ティエリアとロックオンは宝石店の中に通された。
ここは、ロックオンがいつもティエリアのために宝石を買うなじみの店だ。
ソファアに腰かけ、上客の扱いを受ける。
出された紅茶を飲んで、ティエリアは思う。
あの宝石の色は、ブルーサファイアじゃない。もっと淡い水色だ。そう、忘れな草の花のような明るい水色。
なんの宝石だろうか。
忘れな草をイメージした髪飾りは、すぐにショウウィンドウから取り出され、本当は売り物ではないのに、上客とうこともあって、売って貰えることになった。

「こちらでよろしいので?ブルーサファイアの同じデザインのほうがオススメですが・・・」
「ティエリアが、こっちがいいって」
「こちらは、展示品なので質もブルーサファイアに比べて落ちますが・・・・・・」
こそこそと、ロックオンの耳元で支配人が呟く。
想像していたよりも低い値段に、驚くロックオン。
「サファイアじゃない蒼い宝石なんてはじめてだ」

自分が惹かれた理由は、宝石ではなく、髪飾りのデザインのせいだ。そして、明るい水色という、まるで空を溶かしたような色のせいだ。

どうしようか。
ロックオンが困っている。

展示品だけを買うにはあまりにも失礼な値段だった。
「ブルーサファイアの、髪飾りも一緒に買うよ」
「ありがとうございます」
支配人は、にっこりと微笑んだ。

そのまま、ショウウィンドウにあった髪飾りは梱包されるまでもなく、ティエリアの髪に支配人がつけてくれた。
「この宝石は、ブルートパーズといいます」
「トパーズだったのか・・・」
トパーズといって連想する色は黄色だ。インペリアルトパーズともいわれ、トパーズの中でも一番一般的なものだろう。
他にも、ピンクトパーズなど色は様々ある。ブルートパーズもそう珍しくない。
サファイアに比べると、その宝石としての価値は高級なサファイアになれば雲泥の差だ。

ブルーサファイアの髪飾りは綺麗に梱包される。
それとティエリアが髪につけている髪飾りの支払いをカードですませ、店をでる。
店を出ると、ブルーサファイアの髪飾りが反対側の翡翠の髪飾りをとられてつけられた。
「両方につけてもいいんじゃね?」
「そうですね・・・」
同じデザインのものということは、両サイドにつけても問題はないはずだ。

「忘れな草。僕を、忘れないで・・・・」
ロックオンにキスをする。
店の支配人は、にまにまとその瞬間を目撃して、微笑んでいた。
「ティエリア・・・・」
紅くなってロックオンの手をとって、ティエリアは歩き出す。

空のような片方のブルートパーズと、海のようなブルーサファイアの髪飾りを、太陽の光で輝かせながら。


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ドバ(吐血)
タチバナ様に朝にかいた忘れな草の挿絵(?)をかいてもらった。
思わずそれから連想してまた小説を書く・・・。
飯くったら気分悪くなってきた・・・・ぐぇふ

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