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恋い焦がれ バイトするルキア

次の週の月曜日、一護はゼミとドイツ語の授業があった。

1、2回生の間にできる範囲で単位はとっておいたので、週に3回くらい授業を受けるだけで良かった。

ルキアは、とえあえず1か月は滞在できるそうで、空座町の滞在死神と1カ月間交代することになった。

大戦から3年と少し。被害が大きかった地域の復旧も進み、今は手の足りない死神を育成するために、真央霊術院の4回生以上上を、実際に隊の中にいれて、半ば一般隊士と同じ業務を受けさせていた。

建物の被害は建築すれば元にもどる。

でも、人材ばかりはそうもいっていられない。

失われたたくさんの隊士の死神の数は、半数を超える。

これから死神になる者達には、大きな期待がかけられていた。

ルキアは、いずれ隊長の座に就くことが決まっていた。卍解を扱えて、その上強い。これは、今は亡き浮竹の遺言でもあった。

「であるからにして、これはこうなり・・・・」

ドイツ語の授業に、ルキアも混ざっていた。

人数指定があるので、不思議に思われぬように記憶置換を使った。

「お前なぁ、いくら一緒の授業に出るとはいえ、そうほいほい記憶置換使うなよ」

昼休み、食堂で狐うどん定食を食べていたルキアに、そう言う。

「何かの副作用がでるわけでもない。別にいいではないか」

「でも、人に記憶いじられるの嫌だろ?」

「それがそうだが・・・・・」

「じゃあ、なるべく記憶置換は使わないこと。いいな?」

「分かった・・・・・」

しゅんとしょげたルキアの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。

「何をするのだ!」

「お利口さんって意味」

「口で言えばいいではないか!」

一護は、ルキアと同じ狐うどん定食を口にしながら、話を続ける。

「あと3週間は現世にいられる、でいいんだよな?」

「ああ。多分一度尸魂界に戻るであろうが。それ以後は、週末の土日にはこちら側にくるように手配しておいた」

「なぁ」

「なんだ」

うどんのあげを食べながら、一護が問う。

「白哉は許してくれたのか?」

「ああ・・・・兄様には、恋次と添い遂げられぬこと、一護をが好きなことを全部話した。不機嫌ではあったが、許しはもらえた。土日にこちら側にくる了承も得た」

「あの白哉が・・・ああでも、お前には特に甘かったよな」

「そうか?」

「お前、分かってなかったのか」

「いや、兄様は大分優しくなられた・・・・その実感はある。恋次を振って一護を選んだ時、叱責を覚悟していた。だが、ただ兄様は眉間に皺を寄せて「そうか、では、そなたの好きなように振る舞うがよい」とおっしゃられた」

「あの白哉がなぁ・・・・」

眉間に皺を寄せた顔はすぐに想像できた。中性的な美貌の白哉は、よく眉間に皺を寄せていた。

「あと3週間・・・貴様との蜜月だ」

「ぶーーーーー」

「汚い、吹き出すな!」

「蜜月って、お前なぁ。意味わかって使ってるのか?」

一護の問い、ルキアが口を開く。

「親密な関係・・・伝令神機でも、ちゃんと思った通りの言葉であっていると出てくる」

「なんかいろいろと便利だな、伝令神機」

ビービービー。

アラームが鳴った。

「虚か?」

「そのようだ。チャッピーの義魂丸を入れておくから、後は頼んだ!」

「おい待て、ルキア、チャッピーは!」

ルキアは死神化して、瞬歩で去って行ってしまった。

「うどんの続きを食べるんだぴょん」

「ぴょんぴょんうっせぇな」

「何!貴様のうどんも奪うんだぴょん!」

ルキアが虚を退治している間、食堂ではチャッピーVS一護が互いの昼食をかけてはしで争いあっていた。

やがてルキアが戻ってきた。

5分もかかっていなかった。

「早いな」

「何、小型のが一体だけだった。弱かったしな」

「そのなんだ、お前の腕もこの3年間で上がったのか?」

「勿論だ。卍解してもうごけるようになるまで鍛錬した」

「そうか・・・お前の卍解、見たことないからよくわかんねーけど」

「白霞罸だ。範囲内にいる敵と物体を全て凍り付かせることができる。だが、体全体の体温を少しずつあげていかねば、命に関わることもある。だから、滅多なことでは使わぬ」

ルキアは、それだけ言うとチャッピーの義魂丸を抜き取り、義骸に戻った。

「ルキア、その卍解はなるべく使うなよ」

「無論だ。私とて命は惜しい」

その日は、授業は昼までだった。一護は今はラーメン屋でバイトしていて、ルキアを連れてラーメン屋までやってきた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ?」

「俺結構バイトで忙しいから、ルキアが良ければなんだが、同じこのラーメン店で3週間バイトしないか?」

「バイトか・・・賃金を得るのだな。しかし、給仕の仕事か・・・まぁいい、当たって砕けろだ。引き受よう!」

「砕けてどうする・・・・」

一護は店長に、令嬢が社会学の勉強のために3週間ばかりバイトがしたいと言いだした。

店長は、ルキアを頭のてっぺんからつま先まで見て。

「OK。主に、給仕になるけどいいかい?」:

「はい」

ルキアはそう答えていた。

こうして、一護とルキアは、離れ離れになることなく、同じラーメン店で仕事をした。

1週間が経ち、ルキアは現世で初めて賃金をもらった。

きついだろうと、一護より短めに仕事を終わらておいたのので、賃金が1万5千程度だったが、それでもルキアにはとても大切なものだった。

「この金で、貴様に白玉餡蜜をおごってやろう!」

「いいのかよ。頑張って得た賃金だぞ?」

「だからこそ、貴様におごってやりたいのだ」

甘味屋まで出かけて、白玉餡蜜を2人前頼んだ。あとぜんざいも。

「ここでの勘定は私に任せろ」

ルキアは、自分で働いた金で食べれる白玉餡蜜が格別に美味しいのか、味わって食べていた。

「隙あり!」

一護の皿から、白玉を盗むルキア。

「ああもう、欲しいなら最初から言え。お前にやるよ」

「だめだ。貴様が食せ。私は、貴様の皿から奪うのが楽しいのだ」

「なんだそりゃ・・・・・」

ルキアはそれからも隙を見つけては一護の皿からとっていった。

ルキアは楽しそうだった。

実に、3年以上ぶりになる、心から楽しそうな笑顔だった。



噛みあった歯車は軋み出す。

狂ったメロディーを奏でて。






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