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恋い焦がれ 狂ったメロディー

その日は、1限だけの授業だったので、ルキアは家でお留守番なる、掃除や洗濯をしてもらっていた。

ルキアは300万円を現金でもってきており、その金でシマムラで下着からワンピース、上着に靴にいたるまで買いそろえた。

「黒崎君・・・・」

泣きはらした目で、井上が久しぶりに学校に来ていた。

「井上・・・・ごめんな」

「少し、話があるの。それがを終わったら、黒崎君のこと全部忘れるから・・・・」

「ああ、分かった」

人気のないところで、井上は何かスプレー状のものを一護に吹きかけた。

「な・・・井上?」

一護の意識が朦朧としだす。

「運んで」

何処かで雇ったのか、男二人が一護の体を裏口からタクシーに乗せた。

タクシーの中で、井上は一護に何かを注射した。

思考がぐるぐるする。眩暈が酷い。

一護は、気づけば井上のアパートのベッドの上にいた。

裸にされて、手足はベッドの柵に括りつけられていた。

「いの・・・うえ・・?」

「私、黒崎君の子供を身籠るの。そしたら、黒崎君も私を無碍にはできないでしょう?」

一護の意識は、そこで途切れた。

遅いので、心配になって霊圧を探ってやってきたルキアに、意識のない一護を引き渡す。

「井上・・・貴様、一護に何をした!?」

「何も・・・ただ、子種をもらっただけ」

「貴様!」

一護を放っておくこともできずに、ルキアはタクシーを呼ぶと意識のない一護を連れて、石田の病院まで訪れた。、

「黒崎がどうかしたのか!」

インターン生である石田が、診てくれた。

「強い睡眠薬を大量に打たれたようだ。あと1日は目覚めないだろう。入院の準備と手続きをしてくる」

「何があったのだ、一護・・・・・・」

一護は、入院した。

丸一日、目覚めなかった。

点滴の管が痛々しい。

「朽木さん!朽木さんも寝ないと!」

様子を見に来た石田が、一睡もしないで一護の傍にいるルキアに、ソファーで横になるように提案した。

ルキアのお金で入院したので、VIPクラスの対応だった。

金は惜しまなかった。

「ああ・・・悪いが、そうさせてもらう。石田、すまないな、迷惑をかけて」

「とんでもない」

横になったルキアは、心労もあってか、眠ってしまった。

次の日の朝、一護が目覚めた。

「ルキア?」

ソファーで横になっていたルキアを揺り起こす。

「ん・・・一護?」

「どうしたんだ、お前、こんな場所で」

「それはこっちの台詞だ一護!貴様、井上に何をされた!」

「井上に・・・俺は・・・・・・」

思い出せない。

そこだけ、もやがかかっているようで、思い出そうとすると頭痛を訴えた。

「もう良い。無理をするな。あと1日安静が必要だそうだ。私が一度家に戻り、着換えとかいろいろもってくる。シャワーも浴びたいしな」

「俺もシャワー浴びてぇ・・・」

「駄目だ。お前がまだ安静にしておらねばならぬのだ。ほら、足元がおぼついていないであろう」

確かに、まだ眠気を感じで足元がおぼつかなかった。

「ここ・・・病院か?やけに豪華な部屋だけど」

「ああ。石田の病院のVIP病室だ」

「そんな金・・・」

「私が出した」

「ルキア!」

「いいのだ。これくらい、させてくれ」

「ルキア・・・・・」

ルキアは、一度一護の自宅に戻り、一護の着換えを下着から上着に至るまでそろえた。

「一護、良いか?」

コンコンとノックして部屋に入ると、一護の声がした。

一護はあれかたもう一度眠り、すっきりした顔をしていた。打たれた眠剤は全てぬけきっているようで、石田の父親にも診てもらったが、一部の記憶の混濁以外は、異常がないということで、今日一日を過ごせば、明日退院だと言われた。

VIP室なだけあって、病室にトイレとバスルームがついていた。

そこで一護は風呂に入り、すっきりして病院服ではない普通の私服に着替えて、一護はベッドで、ルキアはソファーで夜を過ごして、次の日退院になった。

「一護、貴様が思い出せないから何も言わぬが、井上には気を付けろ。もう、一人であやつと一緒にいるのはだめだ」

「ああ。なんか俺も、井上にスプレーみたいなものふきかけられて・・・意識が朦朧としたところを注射されて・・・そっから覚えてねーが、なんか最悪なことされた気分だ」

ルキアは迷った。

一護から子種をもらったという井上の台詞を言うか、言わぬべきか。

思案した結果、言わないことにした。

それから、時間が目まぐるしく過ぎていく。

ルキアは一護と同じラーメン店でバイトするのが板についてきた。最初はメニューを聞いてオーダーを通すのもおぼつかなかったが、今では立派なウェイトレスだ。

そんなこんなで、ルキアがいられる1か月は、あっという間に過ぎ去ってしまった。

ちなみに、一護の入院2日と精密検査で50万はかかったが、それは一護に秘密にしておいた。

最後の夜、ルキアと一護は肌を重ね合わせた。

ルキアは、それから週末になると一護の自宅にきた。金曜の夜にやってきて、月曜の朝、出勤の時刻ぎりぎりまで現世にいた。

そんなこんなで、ルキアが現世にくるようになって2カ月が経った頃、井上が一護とルキアの元にやってきた。

「何の用だ、井上!」

「ふふふ。お腹の中にねぇ、黒崎君の子供がいるの」

「え・・・・・」

一護が目を見開いた。

「お前とする時は、いつも避妊して・・・」

「違うの。この前、一緒に子作りしたでしょ?」

「え・・・そうなのか、井上?」

「騙されるな、一護!全部虚言だ!」

ルキアが叫ぶ。

「でもねぇ、ほら、これ妊娠している証」

産婦人科で、妊娠しているとはっきりと書かれた記録を見せつけられた。

「頭が・・・痛い・・・・」

「黒崎君、帰ってきてよ。愛しいあなたの赤ちゃんがあなたを待ってるよ」

「井上、貴様という女は!一護は渡さぬ!」

蹲ったて頭を押さえている一護を前に立ちふさがり、それ以上井上が近づけないようにした。

「黒崎君、黒崎君、大好きだよ・・・・」

「井上、俺は・・・それでも、ルキアが好きだ!!」

「いやああああああああ!!!!」

井上は錯乱しだした。

手がつけられないくらい暴れ出して、その挙句放心し、太ももから大量の出血をした、

「あは・・・流れてく・・・・黒崎君との、愛の結晶・・・・・」

救急車を呼んで、一護とルキアは念のために井上に付き添った。

「でも、また頑張るから!頑張って、何度でも黒崎君の子供、身籠るから!子種、冷凍保存してもらっているから」

井上は、処置室に連れていかれた。

結果は、やはり流産だった。

ルキアは一護のことを信用している。きっと、眠っている間に井上が一方的に、子を宿す行為をしたのだろう。

病室にいき、一護とルキアは井上をみた。

「ふふ・・・朽木さんと一緒なのは余計だけど、黒崎君、また私のところにきてれた・・・・」

ルキアは逡巡した。

だが、このままでは、狂った井上は何度でも同じことをしでかすだろう。

もしかしたら、自分の命と引き換えにしてでも、ルキアと別れることを言い出しそうで。

「許せ、井上。お前から、一護が好きだという記憶を奪う」

「え、嫌!そんなのいやあああああああああ!!!!」

暴れ出す井上をルキアが抑え込み、記憶置換を使った。

でも、効かなかった。

何故かは、分からなかった。

「あははは、できないんだ。私の記憶、かき替えること。私は何度だって、黒崎君の子供を身籠るよ」

一護は冷たい目でこう言った。

「好きなようにしろよ。例え子供が身籠っても、俺はそれを自分の子供だとは認めねぇ。井上、お前が勝手に育てろ。そこに俺はいない」

「え、嘘、黒崎君・・・?」

「勝手にしろ。俺は一切関知しねぇ」

「そんな、嘘、黒崎君!やだよ!身籠ったら認知してよ!さもないと、レイプされたってみんなに言いふらして・・・・・・・」

ルキアが、井上の喉を締め上げた。

「かはっ・・・・・・」

「そんなこと、してみろ。貴様の名を、全ての知り合いから奪ってやる」

「朽木さ・・・・朽木さんが、全部悪いのに・・・・ぐ、ごほっごほっ」

喉を締め上げていた手を外す。

井上は大きく咳き込んだ。

「言っておくが、私は本気だぞ、井上。お前のバイト先も、親戚も、友人も、教師も。全てから、お前に関する記憶を奪う。アパートにだって、住めなくしてやる」

「そんな・・・・」

泣き叫び、暴れる井上に、医者がやってきて、困りてた末に鎮静剤を投与されて、井上は大人しくなった。



軋んだ歯車が奏でる狂ったメロディーは、通常の者に変わっていく。

静かな音を立てて。





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