昼食でも
「あ、これください。これとこれとこれも」
フェルトはオーダーをとりにきた店員に、パフェ系のものやらアイスクリームをたくさん注文した。昼食というよりはデザートばかりだ。
「何もそんなに頼まなくても」
「だって、すごくドキドキして普通の食事なんてできないよ」
「にしては、食べるな」
さらりという刹那の頭をわしゃわしゃとかき回して、フェルトは凄んだ。
「そういうこと、言っちゃだめだよ、刹那。女の子には」
刹那はフェルトが注文したパフェを勝手にスプーンで食べていく。それを見て、フェルトは自分のストロベリーパフェを一口分スプーンですくい、刹那のほうにむけた。
「はい、あーん」
「ちょ」
大人しく食え。そうフェルトの目が語っていた。
刹那は黙って食べた。
そして、二人で笑いあう。何をしているのだと。
映画を見に行く。ただそんなデートなのに。でも、特別なのだ。だって見る映画が映画なのだから。
「DVDはやくでるといいな。買うんだけど」
「映画もまだ見てないだろう。気が早すぎだ」
「そうだね。でもDVD予約しようね」
「ああ」
二人は時間をかけて昼食となったデザートを空にすると、レストランを出て手を繋いで歩いていく。
「まだ、暑いね。もう9月も終わりなのに」
「まだまだ夏だ」
金色の太陽が、二人を照らして影を刻む。じりじりとアスファルトが熱をもっていく。同じように、二人の頬にも熱が少しだけ。
ちょっと紅くなって、でも二人で手を繋いで歩き続ける。
トレミーに帰ったら、みんなに映画の感想を言おう。でも、内容は教えない。
だって、きっとみんなも自分でみたいだろうから。
青空が、落ちてくる。そんな気分。
天気は晴れ。
暑いけど、すがすがしいまでに心地よい。
二人は歩き出す。
空を見上げてから、それから人ごみを掻き分けて。
そして、太陽に少しだけ照れ笑いを返したのだった。
- トラックバックURLはこちら