月明かりの下で外伝
「ユリエス!!」
カリンは、蒼銀の髪を風に揺らすユリエスに向かって飛び込んだ。
ユリエスはしっかりとカリンを抱きとめると、優しく微笑む。
水色の瞳は、まるでオパールのように色を変えていく。
「カリン。いこう、サーラの世界へ。この世界とは行き来ができるから」
ユリエスに抱き上げられて、カリンは頷いた。
「うん、行こう!みんなに会いに!」
真昼の月が大きくなり、月明かりを二人に浴びせる。
サーラに続く道の途中で、カッシーニャが欠伸をしてこちらを見ていた。
「カッシーニャ。ありがとう」
カリンは、世界の記憶、意識体だけのカッシーニャにかけよると、その蒼銀の毛に顔を埋めた。
「さぁ、いこうか。私を倒した黒き聖女カリン、それに私の半身ユリエス」
二人はカッシーニャに乗って、サーラの3つの月へと走り出す。
サーラにつくと、そこはユリエスの家の前だった。
よく見ると、ユリエスは腰にシルエドを下げていた。
(お帰り。我らが主)
「ただいま!!!」
精霊ドラゴンたちの声を聞きながら、隣にいつの間にか建てられた家から、マリアードとアルザが飛び出してくる。
「カリン様、お帰りなさいませ!」
「お帰り、カリン」
「只今」
マリアードは微笑むと、早速カリンを自分の家に連れ込み、花嫁衣裳を着せた。
「えっと?」
「ユリエス様と、いってらっしゃい」
「うん!」
ユリエスがそーっと窓から、カリンの様子を見ている。そして、花嫁衣裳のカリンを見て、顔を覆って地面でごろごろしていた。
「ユリエス、いい加減なれたら?」
アルザが面白そうに、ユリエスを棒でつついている。
「ラ・サーラ・リ・エーダ。我は翼となり風とともに羽ばたかん」
真っ白な翼を魔法で生やしたユリエスに抱き上げられて、カリンは花嫁衣裳のまま教会へと飛んでいく。
アルザも、マリアードもその後を追う。
リーンゴーンと鐘のなる、リトリア王家の王族が結婚式をあげる場所で、二人は結ばれた。
渋い顔をしているが、王も王妃もいる。王太子ユリアドも、弟のユリニカも。
たくさんの人に祝福されて、二人は結婚式をあげた。
カリンはユリエスの腕の中から、ブーケを空に向かって投げる。
それは、この世界にアルザが召還した藤原レンカの手の中に。
「いや・・・俺、嬉しくないんだけど!寵姫とかやってるけど、男だから!!」
「レンカ君もきてくれてありがとう!」
カリンはとても嬉しそうだった。
たくさんの人に祝福されて。ユリエスとカリンはまたこの世界で生きる。たまには現実の世界に戻ったりもする。
マリアードとアルザはもう結婚してしまった。
さぁ、今日も空を見上げるとサーラの3つの月が耀いている。
「ああ、今日も綺麗な月だ」
300年後の世界で、レンカはカリンの結婚式を思い出して、微笑む。ユリシャが、レンカの白い長い髪を結い上げる。
「結婚式か。どうだ、あげるか?」
「いらない。ユリシャは俺の側にいつでもいるから」
サーラの3つの月は、サーラに住まう者たちにいつでも銀の微笑みを与える。
さぁ、あなたもいつか、サーラの月を見るかも?
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