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桜のあやかしと共に 外伝7

「これが一番おすすめの、惚れ薬です」

「そんなもの、いらないぞ」

「まぁまぁ、そう言わず。すでに惚れている相手に使うと、もう夢中になってきますよ」

「ふむ。まぁいいか。買う」

「毎度あり」

商売相手は、小豆とぎであった。その小豆とぎは、あやかしまんじゅうの経営にも参加していて、商売が好きで、商売上手でもあった。

桜の王には金がある。

それを知って、小豆とぎはなかなか売れない惚れ薬を売り払った。

桜の王に、また愛しい者ができた。

あやかしまんじゅうの販売店でも、噂になっていた。それを聞きつけての、商売であった。

「京楽に飲ませよう。アルコールだと変に思われるから、ジュースに混ぜとくか」

浮竹は、つい軽い気持ちで惚れ薬をオレンジジュースに混ぜた。

そして、数日が経ち、惚れ薬のことなどすっかり忘れていた。

妖狐の浮竹tと、夜刀神の京楽が遊びにきていた。

おみやげにと、シフォンケーキをもってきた。

京楽が紅茶をいれようとして、茶葉を切らせていたことに気づく。

「緑茶でいいかな?」

『なんでもいいぞ:』

「私の緑茶を使うな。なかなか手に入らぬ代物なのだ」

白哉が反対するので、何か飲み物はないかと冷蔵庫を探すと、オレンジジュースがあった。

京楽は、それを出そうとして、浮竹が惚れ薬を入れていたことを思い出す。

「だめだ、飲むな!」

「なんで?」

『どうしたんだ、精霊の俺』

『なにかやましいものでも?』

感に鋭い夜刀神が、にやにやする。

「なんでもない!俺が飲む!」

浮竹は、惚れ薬を飲んでも、京楽を愛しているので、京楽だけに惚れる自信があった。

オレンジジュースを一気飲みして、バタンと浮竹は倒れる。

『精霊の俺!?大丈夫か?』

『ちょっと、そのオレンジジュースの中身の残り、ちょうだい』

京楽が、夜刀神にオレンジジュースを渡す。

『あちゃ、何か薬いれたね。なんの薬かまでは分からないけど』

「十四郎が薬を?ボクに飲ませるつもりだったのかな」

『桜の王のことだし、多分そうだろうね。浮竹、気を付けて‥‥』

ぱっと目覚めた浮竹は、妖狐の浮竹を見た。

「好きだあああああああ」

『ぎゃあああああああああ』

浮竹に押し倒されて、妖狐の浮竹は驚く。

『た、助けてくれ~~~~~~』

『ちょっと、桜の王、何とちくるってのさ』

「十四郎?ボクがいるでしょ?」

「京楽のことも好きだけど、妖狐の俺も好きだ。今すぐ結婚して子作りしよう」

「十四郎!?」

『ぎゃあああああああ』

服をはぎとられて、キスされて、妖狐の浮竹が悲鳴をあげると、夜刀神が人の姿になって、浮竹の頭を殴る。

『しっかりしてよ、桜の王!ボクの浮竹に何するのさ!』

「夜刀神‥‥‥‥お前でもいい。好きだ。結婚して今すぐ子作りしよう」

『もぎゃああああああああ』

節操のない浮竹に、白哉が緑茶をすすりながら。

「これでもいれたのはないか?」

そう言って、惚れ薬の瓶を取り出した。

『あ、それ小豆とぎが売ってるやばい惚れ薬。まさか、ボクと浮竹に飲ませるつもりじゃなかっただろうから、桜鬼のボクに飲ませようとして、証拠隠蔽のために自分が飲んで‥‥桜の王、アホだね』

「やらせろおおおおおおお」

『ほげあああああああ!!!』

夜刀神は、再び浮竹に押し倒されていた。

『こ、こんな効果の出る薬じゃなかったはずなんだけど』

京楽が、浮竹を羽交い絞めにして、夜刀神が不思議がる。

「体質とやらであろう。浮竹は、昔から薬に弱いというか、変な効き方をする」

白哉は、我関せずとうかんじで、シフォンケーキを一人で食べながら、緑茶をすする。

「解毒剤とか何かないの!?」

『あの小豆とぎの惚れ薬は、解毒剤とかなかったはずだよ。自然に効果が切れる待つしかないね』

「浮竹、寝ておけ」

白哉が、桜の術で京楽と白哉以外にせまってくる浮竹を眠らせる。

「二日は起きぬ。目覚めれば、薬の効果も切れているであろう」

「助かったよ、白哉くん」

『精霊の俺が、こんなに力強いなんて思ってなかった。見た目は綺麗だけど、力持ちだな』

『まぁ、ボクの浮竹に被害があまり及ばなくてよかったよ』

『服脱がされたんですけど!キスもされました!』

口調を変えて訴えてくる妖狐の浮竹に、夜刀神は。

『消毒しておかなくちゃね』

そう言って、妖狐の浮竹とキスをする。

そんな二人を生温かい眼差しで、京楽と白哉が見る。

『こ、これは違うぞ!ラブシーンじゃない!』

「兄らにはあまり興味をもっていないので、どうでもいい」

白哉の言葉に、妖狐の浮竹がショックを受ける。

『どうでもいいって言われた~~~』

『ちょっと、白哉くん、そういう言い方はないでしょ』

「好きなだけいちゃついてていいよ。ボクは、浮竹をベッドに寝かせてくるから」

「私も、恋次のところにでもいこう」

妖狐の浮竹と夜刀神だけが残された。

二人は、人の家でラブシーンの続きをするわけにはいかないので、素直に家に帰る。



「白哉、好きだあああああ!!結婚して‥‥あれ?俺は何を言って何をしようとしてたんだろう?」

2日たって、薬の効果の名残を少しだけ残して、浮竹は目覚めた。

抱きつかれた白哉は、優しく浮竹の背中を撫でる。

「兄の愛しい者は、これだ」

「これ‥‥‥十四郎、惚れ薬をオレンジジュースに混ぜたね?」

「あ‥‥京楽に飲ませようと買って‥‥皆に飲ませるわけにもいかないから、自分で飲んで‥‥そこから、記憶が途切れてる」

「はぁ。ボクは、何があっても十四郎だけを好きだし、今更惚れ薬なんて使わなくても、めろめろだから」

「う、うん‥‥‥」

浮竹は赤くなった。

なんだかいつもよりかわいく見えて、京楽は浮竹を抱きしめる。

「愛してるよ、十四郎」

「うん。俺も愛してる、春水」

浮竹と京楽は互いを抱きしめあって、キスをする。

「ほら、恋次、ラブシーンとはあのようにするのだ」

「うっす!勉強になるっす!」

恋次が見ているのに気づいて、浮竹は京楽をハリセンで殴った。

「ハリセンで殴るのも、ラブシーンですか、白哉さん」

「違う。あれは浮竹だけのものだ」

「はい。勉強になりました」

「びゃ、白哉、恋次くんはいつから」

「最初からいましたけど?」

恋次は悪びれもせずに、浮竹に言う。

「わああああ、全部忘れろおお」

浮竹は、恋次にもハリセンを食らわせるのだった。

ちなみに、白哉には弟なのでハリセンはなかった。ハリセンどころか、眠らせて場を解決してくれたので頭を撫でていた。

京楽も恋次も、白哉だけ特別扱いされてずるいなぁと思うのであった。










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