桜のあやかしと共に41
「鏡?」
「はい。映った者の姿のままでてきて、ドッペルゲンガーになるんです」
依頼人は、布でくるんだ、古い鏡を京楽に渡す。
「京楽、それ、雲外鏡だ。付喪神がついているわけじゃなくって、鏡自体があやかしだ」
「ひええええ」
依頼人は、京楽に鏡を押し付けると、逃げてしまった。
はらりと、鏡を包んでいた布がとれる。
姿が映ったのは、浮竹だった。、
「十四郎?」
浮竹が、二人になっていた。
「わぁ、俺が二人いる」
「俺のほうが本物だ」
「違う、俺のほうが本物だ」
京楽は、見た目も声も妖力も変わらない二人を見て戸惑う。
でも、はっと思いこんで、二人の浮竹にキスをした。
一人は顔を赤くして、おとなしくなり、もう一人は顔を赤くして、ハリセンで京楽をはたきまわす。
「こっちが、本物だね」
「なぜじゃ。なぜばれた」
「化けた相手の記憶や癖はないようだね。雲外鏡、まだまだ修行が足りないよ」
「そうか。では、記憶も癖も追加しよう」
再び、浮竹が二人になる。
「こっちが偽物だ」
「違う、こっちが偽物だ」
二人はぎゃあぎゃあと言い争いあう。
京楽は、今度は浮竹の尻を触った。
二人とも、怒ってハリセンではたいてきた。
「うーん、どっちも同じ反応‥‥‥そうだ、十四郎はボクだけが好きなんだよね?」
「いや、「春」も好きだし、白哉もあのばかな夜刀神も妖狐の俺も好きだ」
「俺も同じだ。あのあほうの夜刀神は、いつかぎゃふんと言わせてやる」
「困ったなぁ。判別がつかないよ。ボクの前に好きだった人のこと言える?」
京楽が聞くと、浮竹達は自信満々に。
「「春」」が好きだ」
「「春」」を今でも愛してる」
そう言った。
「記憶まで一緒かぁ。参ったなぁ」
京楽は、二人の浮竹を相手に、白哉ならどうだろうと、白哉を呼んだ。
「おーい、白哉くん」
「なんだ、さっきから騒々しい‥‥‥‥浮竹が二人?」
「どっちかが雲外鏡なんだよ。どっちかわかる?」
「浮竹、兄は私に借金があるな?」
「え、そうなの十四郎」
京楽が、反応する。一方、二人の浮竹は。
「「おとついかりたジュース代の120円が借金か」」
声をはもらせて言い返してきた。
「すまぬ。私にも、どちらが本物なのか分からぬ」
「あちゃー、白哉くんでもだめかー。こうなったら‥‥」
京楽は、妖狐の浮竹に電話をかけた。
妖狐の浮竹は、こうもり姿の夜刀神の京楽を連れて、京楽のマンションにやってくる。
『俺をいれたら、3人になるな』
そう言いつつ、匂いをかいだ。
『うーん。こっちが若干油揚げのにおいがする。こっちは、稲荷寿司のにおい』
「ちょっと、君だけが頼りなんだから」
『冗談だ。こっちが雲外鏡だ。古い付喪神のようなにおいがする』
「わしの負けじゃあ。さぁ、叩き割るなりなんなりするといい」
ぼふんと、一人の浮竹が鏡になった。
『もう一度、今度はこっちの浮竹になれる?』
「なれるが、なんじゃ?」
ぼふんと音を立てて、雲外鏡は妖狐の浮竹になった。分かりやすいように、髪をリボンでくくる。
『やぁ、遠慮なしで抱きしめてみたかったんだよね』
そう言って、夜刀神の京楽は、雲外鏡の妖狐の浮竹を思い切り抱きしめた。
ボキボキバキっ。
骨が折れる音がして、浮竹も妖狐の浮竹も、それに京楽も顔を蒼くする。
『京楽、お前、こんなことを俺にしたかったのか』
『できないから、雲外鏡に頼んだの』
雲外鏡は、妖狐の浮竹の姿で気絶していた。妖狐の浮竹は、雲外鏡の傷を癒してあげた。
「助かったわい。わしは、もうしばらく‥‥そうじゃな、こっちの浮竹とやらになっておくとしよう」
京楽は、違いが分かるように、雲外鏡の浮竹の髪をポニーテールにした。
「やばい、偽物って分かってるのに、かわいい‥‥あべし!」
本物の浮竹にハリセンでしばかれて、京楽は本物の浮竹に迫る。
「君の絹のような髪も、結わせて?」
「す、好きにしろ」
「わーい」
京楽は、浮竹の両サイドの髪を三つ編みにして、後ろでくくる。
「かわいいね」
「ふん、知るか。ああ、妖狐の俺に夜刀神、それに雲外鏡も。俺の作る夕飯を食べていけ」
「へ?わしもいいのかいの?」
浮竹の姿のまま、じじ臭い声を出す。
「確かに俺の姿になったが、悪さをしたわけでもない。退治する必要はない。今後、誰かに化けないこと。ドッペルゲンガー状態をやめるのが、条件だ」
「分かった。わしは、この時代にはいらぬのだな。夕飯をごちそうになったら、眠りにでもつくことにするよ」
「そうか」
『俺、においを判別するためだけに呼ばれたのか』
『自分のパートナーも分からなくなるなんて、まだまだだね』
「髪結ってないと、どっちがどっちだったか、分からないくせに」
『なんだって。やる気?』
「そっちがその気なら」
『はい、終了!』
妖狐の浮竹が、京楽たちの不毛な争いを止める。
浮竹はキッチンのほうに行ってしまい、白哉も手伝うと、キッチンに行ってしまった。
できたての夕食を食べながら、雲外鏡はそのおいしさに涙を流していた。
「できれば、俺の姿で泣かないでくれ」
「こんなに優しくされたのは、久方ぶりじゃて」
「思ったのだが、雲外鏡、術者の式になるつもりはないか?」
「へ?わしが式に?」
白哉の言葉に、皆首を傾げる。
「私のパートナーに、式を大量に操れる恋次という者がいる。その者の下で、働いてはみぬか?」
「わし、なんかでよいのか?」
「その、ドッペルゲンガーになれる能力を眠らせるにはおしい」
白哉は、恋次をスマホで呼び出すと、5分もせずに恋次がすっとんできた。
「白哉さん、式にしたいあやかしって?」
「この、雲外鏡だ。雲外鏡、元の鏡に戻ってくれ」
「あいわかった」
元の鏡に戻ると、雲外鏡は白哉の姿になった。
「おお、すごい。こいつは、式の中でもかなり強力な戦力になりそうっす」
「だそうだ、雲外鏡」
「わしでよければ、あんさんの式になろう。名がほしい」
雲外鏡は、元の鏡の姿に戻る。
「じゃあ、今日からあんたは俺の式だ。名は‥‥‥そうだな、雲(くも)でどうだ?」
「安直なネーミングセンスじゃが、それでいい」
「よかったな、雲外鏡」
浮竹がそう言うと、雲外鏡は笑った。
「おぬしらのおかげじゃて」
「恋次くん、雲外鏡をよろしくね」
「ああ、任せてくださいっす」
「恋次、雲外鏡を使いこなせるように、今夜は一緒に特訓だ」
「は、はい!」
そんな5人を、妖狐の浮竹と夜刀神は、ぼけーっと見ながら、浮竹の作ったデザートを食べていた。
『なんか、急に呼び出されたのに、蚊帳の外だね』
『いっぱい食ってやる』
妖狐の浮竹は、デザートを全て一人で平らげる。
白哉と恋次と雲外鏡がいなくなり、浮竹と京楽は、デザートが全部食べられてしまったので、作り置きしておいた苺パフェを冷蔵庫から取り出して食べる。
『あ、パフェなんてずるい!俺にも!』
『まだ、食べるの?』
『デザートは、別腹だ!』
「あと一人分しかないぞ」
『俺が食う』
『うん、ボクはいいよ』
「妖狐の俺、突然呼び出したりしてすまなかった。雲外鏡のことばかりで、あまり相手もできず」
『俺には、京楽がいるから大丈夫だ』
「そうか。帰りには、詫びの意味もかねて、あやかしまんじゅうをやろう」
『わーい』
京楽たちは、微笑みあうそれぞれのパートナーである浮竹たちを見て、苦笑するのだった。
「はい。映った者の姿のままでてきて、ドッペルゲンガーになるんです」
依頼人は、布でくるんだ、古い鏡を京楽に渡す。
「京楽、それ、雲外鏡だ。付喪神がついているわけじゃなくって、鏡自体があやかしだ」
「ひええええ」
依頼人は、京楽に鏡を押し付けると、逃げてしまった。
はらりと、鏡を包んでいた布がとれる。
姿が映ったのは、浮竹だった。、
「十四郎?」
浮竹が、二人になっていた。
「わぁ、俺が二人いる」
「俺のほうが本物だ」
「違う、俺のほうが本物だ」
京楽は、見た目も声も妖力も変わらない二人を見て戸惑う。
でも、はっと思いこんで、二人の浮竹にキスをした。
一人は顔を赤くして、おとなしくなり、もう一人は顔を赤くして、ハリセンで京楽をはたきまわす。
「こっちが、本物だね」
「なぜじゃ。なぜばれた」
「化けた相手の記憶や癖はないようだね。雲外鏡、まだまだ修行が足りないよ」
「そうか。では、記憶も癖も追加しよう」
再び、浮竹が二人になる。
「こっちが偽物だ」
「違う、こっちが偽物だ」
二人はぎゃあぎゃあと言い争いあう。
京楽は、今度は浮竹の尻を触った。
二人とも、怒ってハリセンではたいてきた。
「うーん、どっちも同じ反応‥‥‥そうだ、十四郎はボクだけが好きなんだよね?」
「いや、「春」も好きだし、白哉もあのばかな夜刀神も妖狐の俺も好きだ」
「俺も同じだ。あのあほうの夜刀神は、いつかぎゃふんと言わせてやる」
「困ったなぁ。判別がつかないよ。ボクの前に好きだった人のこと言える?」
京楽が聞くと、浮竹達は自信満々に。
「「春」」が好きだ」
「「春」」を今でも愛してる」
そう言った。
「記憶まで一緒かぁ。参ったなぁ」
京楽は、二人の浮竹を相手に、白哉ならどうだろうと、白哉を呼んだ。
「おーい、白哉くん」
「なんだ、さっきから騒々しい‥‥‥‥浮竹が二人?」
「どっちかが雲外鏡なんだよ。どっちかわかる?」
「浮竹、兄は私に借金があるな?」
「え、そうなの十四郎」
京楽が、反応する。一方、二人の浮竹は。
「「おとついかりたジュース代の120円が借金か」」
声をはもらせて言い返してきた。
「すまぬ。私にも、どちらが本物なのか分からぬ」
「あちゃー、白哉くんでもだめかー。こうなったら‥‥」
京楽は、妖狐の浮竹に電話をかけた。
妖狐の浮竹は、こうもり姿の夜刀神の京楽を連れて、京楽のマンションにやってくる。
『俺をいれたら、3人になるな』
そう言いつつ、匂いをかいだ。
『うーん。こっちが若干油揚げのにおいがする。こっちは、稲荷寿司のにおい』
「ちょっと、君だけが頼りなんだから」
『冗談だ。こっちが雲外鏡だ。古い付喪神のようなにおいがする』
「わしの負けじゃあ。さぁ、叩き割るなりなんなりするといい」
ぼふんと、一人の浮竹が鏡になった。
『もう一度、今度はこっちの浮竹になれる?』
「なれるが、なんじゃ?」
ぼふんと音を立てて、雲外鏡は妖狐の浮竹になった。分かりやすいように、髪をリボンでくくる。
『やぁ、遠慮なしで抱きしめてみたかったんだよね』
そう言って、夜刀神の京楽は、雲外鏡の妖狐の浮竹を思い切り抱きしめた。
ボキボキバキっ。
骨が折れる音がして、浮竹も妖狐の浮竹も、それに京楽も顔を蒼くする。
『京楽、お前、こんなことを俺にしたかったのか』
『できないから、雲外鏡に頼んだの』
雲外鏡は、妖狐の浮竹の姿で気絶していた。妖狐の浮竹は、雲外鏡の傷を癒してあげた。
「助かったわい。わしは、もうしばらく‥‥そうじゃな、こっちの浮竹とやらになっておくとしよう」
京楽は、違いが分かるように、雲外鏡の浮竹の髪をポニーテールにした。
「やばい、偽物って分かってるのに、かわいい‥‥あべし!」
本物の浮竹にハリセンでしばかれて、京楽は本物の浮竹に迫る。
「君の絹のような髪も、結わせて?」
「す、好きにしろ」
「わーい」
京楽は、浮竹の両サイドの髪を三つ編みにして、後ろでくくる。
「かわいいね」
「ふん、知るか。ああ、妖狐の俺に夜刀神、それに雲外鏡も。俺の作る夕飯を食べていけ」
「へ?わしもいいのかいの?」
浮竹の姿のまま、じじ臭い声を出す。
「確かに俺の姿になったが、悪さをしたわけでもない。退治する必要はない。今後、誰かに化けないこと。ドッペルゲンガー状態をやめるのが、条件だ」
「分かった。わしは、この時代にはいらぬのだな。夕飯をごちそうになったら、眠りにでもつくことにするよ」
「そうか」
『俺、においを判別するためだけに呼ばれたのか』
『自分のパートナーも分からなくなるなんて、まだまだだね』
「髪結ってないと、どっちがどっちだったか、分からないくせに」
『なんだって。やる気?』
「そっちがその気なら」
『はい、終了!』
妖狐の浮竹が、京楽たちの不毛な争いを止める。
浮竹はキッチンのほうに行ってしまい、白哉も手伝うと、キッチンに行ってしまった。
できたての夕食を食べながら、雲外鏡はそのおいしさに涙を流していた。
「できれば、俺の姿で泣かないでくれ」
「こんなに優しくされたのは、久方ぶりじゃて」
「思ったのだが、雲外鏡、術者の式になるつもりはないか?」
「へ?わしが式に?」
白哉の言葉に、皆首を傾げる。
「私のパートナーに、式を大量に操れる恋次という者がいる。その者の下で、働いてはみぬか?」
「わし、なんかでよいのか?」
「その、ドッペルゲンガーになれる能力を眠らせるにはおしい」
白哉は、恋次をスマホで呼び出すと、5分もせずに恋次がすっとんできた。
「白哉さん、式にしたいあやかしって?」
「この、雲外鏡だ。雲外鏡、元の鏡に戻ってくれ」
「あいわかった」
元の鏡に戻ると、雲外鏡は白哉の姿になった。
「おお、すごい。こいつは、式の中でもかなり強力な戦力になりそうっす」
「だそうだ、雲外鏡」
「わしでよければ、あんさんの式になろう。名がほしい」
雲外鏡は、元の鏡の姿に戻る。
「じゃあ、今日からあんたは俺の式だ。名は‥‥‥そうだな、雲(くも)でどうだ?」
「安直なネーミングセンスじゃが、それでいい」
「よかったな、雲外鏡」
浮竹がそう言うと、雲外鏡は笑った。
「おぬしらのおかげじゃて」
「恋次くん、雲外鏡をよろしくね」
「ああ、任せてくださいっす」
「恋次、雲外鏡を使いこなせるように、今夜は一緒に特訓だ」
「は、はい!」
そんな5人を、妖狐の浮竹と夜刀神は、ぼけーっと見ながら、浮竹の作ったデザートを食べていた。
『なんか、急に呼び出されたのに、蚊帳の外だね』
『いっぱい食ってやる』
妖狐の浮竹は、デザートを全て一人で平らげる。
白哉と恋次と雲外鏡がいなくなり、浮竹と京楽は、デザートが全部食べられてしまったので、作り置きしておいた苺パフェを冷蔵庫から取り出して食べる。
『あ、パフェなんてずるい!俺にも!』
『まだ、食べるの?』
『デザートは、別腹だ!』
「あと一人分しかないぞ」
『俺が食う』
『うん、ボクはいいよ』
「妖狐の俺、突然呼び出したりしてすまなかった。雲外鏡のことばかりで、あまり相手もできず」
『俺には、京楽がいるから大丈夫だ』
「そうか。帰りには、詫びの意味もかねて、あやかしまんじゅうをやろう」
『わーい』
京楽たちは、微笑みあうそれぞれのパートナーである浮竹たちを見て、苦笑するのだった。
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