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桜のあやかしと共に 外伝8

冬の王である日番谷冬獅郎から冬を託されて、冬の終わりがきて春がきていた。

桜が咲く季節、太陽はぽかぽかしていて、妖狐の浮竹は、京楽のマンションで狐姿になって日向ぼっこをしていたら、眠ってしまっていた。

夜刀神は、その隣でこうもり姿で同じように日向ぼっこをして、寝ていた。

妖狐の浮竹の体に体を重ねるようにして、浮竹までオッドアイの白い子猫姿になって、昼寝していた。その隣には黒い子猫になった白哉も寝ていた。

「はぁ。ボクだけか‥‥たぬきだけど、ボクも変化して寝よう」

京楽は、桜鬼になったことで、桜の高位精霊と同じ地位にいるのだが、普通は変化すると猫になるのだが、なぜかたぬきだった。

最初に変化した時は、白哉につぶれたあんぱんと言われるほどに酷かった、

何度か変化を繰り返すうちに、たぬきでもかわいいたぬきになれたので、京楽は満足していた。

「さて、寝ようかな」

浮竹たちが寝ている窓辺のソファーの、あいているところで丸くなって、京楽も眠った。

ぴんぽーん。

チャイムが鳴って、まだ眠りの浅かった京楽は、人型に変化して対応する。

新聞の勧誘であった。

今時新聞をとる家なんて少ないので、適当にあしらって、もう一度寝ようとしたら、たぬきの尻尾が出たままになっているのに気づいた。

「見られたかな‥‥まぁ、見られても偽物の尻尾だって思うから、大丈夫でしょ」

京楽は、今度こそ日当たりのいいソファーの上で眠った。

起きると、夜になっていた。

妖狐の浮竹は、妖狐の姿で、猫じゃらしで、子猫姿の浮竹と遊んでいた。

夜刀神は、そんな妖狐の浮竹の傍で人の姿で緑茶を飲みながら、あやかしまんじゅうを食べていた。

白哉も、黒い子猫姿で妖狐の浮竹に猫じゃらしを目の前にちらつかされて、つい前足が出て、猫なので体が反応してしまう。

「もう、みんな起きてるなら、ボクも起こしてよ」

「すまん。あんまり気持ちよさそうに眠っていたものだから」

浮竹が、猫じゃらしに反応しながら言う。

「昼からこんな時間まで‥‥‥ボクってば、7時間も寝てたの?」

「そうだな。今日の夜は寝れんだろうな」

『精霊の俺、眠れない桜鬼の京楽とむふふするのか?』

「しない!」

猫パンチを決められても、子猫なので痛くなかった。

「今日は海鮮鍋にする予定なのだが」

白夜が、人の姿になって、キッチンに移動する。鍋とガスコンロを持ってきた。

京楽はまだたぬきのままで、浮竹の子猫のままだった。

「戻れない‥‥こんな時に、時の呪いか」

かつて、西洋の桜の女神の求婚を断って、変化すると時間がある程度たたないと元に戻れないという呪いを受けた。

数年に一度しか発動しないのだが、最近よく子猫姿になるので、時の呪いも発動しやすくなっていた。

「白哉、鍋は任す。俺と京楽は、猫缶でいい」

「え、ボクは人の姿に戻れるよ」

「相方を猫の姿のまま一人で過ごせと?」

「わかったよ。ボクもたぬきのままでいるから」

『おや、夜のむふふはできなくなったな』

『子猫とたぬきの姿でむふふするかもしれないよ?』

妖狐の浮竹と夜刀神が、からかってくる。

いつもなら、浮竹のハリセンがうなるのだが、今絶賛子猫の姿中なので、ハリセンはとんでこなかった。

『ツッコミ役がいないと、からかっても面白くないねぇ。むふふはいつだろう?』

『元に戻ったら、きっとむふふするんだろうな』

「お前たちは、一度むふふから離れろ」

浮竹が、高級猫缶を食べながら、呆れる。

京楽も、たぬきの姿のままで高級猫缶を食べる。

「お、おいしい‥‥」

「ドッグフードはまずいだろ。猫缶のほうが絶対美味しいに決まっている」

「浮竹、兄に後でチュールをやろう」

白哉は、妖狐の浮竹と夜刀神と、海鮮鍋を食べていた。

「ボクにもチュールを」

「兄は、自分で食え」

「差別だ!!!」

「当り前だ。兄である浮竹と比べれば劣るに決まっている」

『ねぇ、この海鮮鍋、苺入ってるんだけど‥‥』

『こっちにはバナナ入ってるぞ』

「ただの海鮮鍋では面白くないので、フルーツを入れて闇鍋にしてみた」

「白哉ああああ!鍋は任せると言ったが、闇鍋にしろとは言ってないいいい」

浮竹が、心の叫びをそのまま出す。

『あ、でもこのフルーツ闇鍋けっこうおいしいかも』

『俺も思った』

妖狐の浮竹と夜刀神は、平気な顔でフルーツ海鮮鍋を食べる。無論、白哉も。

「京楽、兄には特別にこれをやろう」

皮をむいていない鍋に入っていたバナナをもらって、京楽はどうすればいいのか途方にくれる。

『そうだ。精霊の俺、これはどうだ?』

妖狐の浮竹が取り出したものは、またたびだった。

「にゃおーん」

またたびによって、すっかりご機嫌になった浮竹は、妖狐の浮竹にもふられまくる。

「にゃーん」

『いつもこうなら、かわいいんだけどなぁ』

『いつもこんな桜の王はいやだよ‥‥浮竹をとられちゃう』

『ふふ、京楽、嫉妬か?』

『ボクもかまってよ』

夜刀神は、苺を食べながら、京楽にもまたたびをあげてみた。

「にゃーお」

『わお、桜鬼のボクまでまたたびによってる。しかもたぬきなのに、猫みたいになくし』

『たぬきもかわいいな』

妖狐の浮竹は、京楽ももふる。

もふられる二人を見て、白哉もうらやましくなったのか、黒い子猫になって、はじめてまたたびを体験して、へろへろになるのであった。

その日は、妖狐の浮竹と夜刀神は泊まっていった。

朝になり、すっかりもとに戻っている浮竹を見て、二人は残念がるのだった。

『つまんない』

『そうだねぇ。もうちょっともふればよかった』

「昨日のこと、ちゃんと覚えているからな。またたびは‥‥たまになら、いい」

『うわ、ツンツンしながら、少しだけでれたよ!』

「うっさい!」

余計なことを言う夜刀神をハリセンでしばいて、浮竹は赤くなるのであった。

ちなみに、7時間も仮眠した京楽は、夜も9時間寝て、頭痛を訴えるのであった。





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