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桜のあやかしと共に11

秋を司る桔梗の王、卯ノ花列は、原因不明の病にかかり、臥せっていた。

もともと治癒能力が高い、癒しの王と呼ばれる女性だったが、自分には術の効果が出ない。

見舞いにやってきた桜の王こと、浮竹は卯ノ花の症状に、心当たりがあった。

夜刀神がおこした災厄に見まわれた後の、人間のようだったのだ。

「原因は穢れだな。卯ノ花、何か心当たりはあるか?」

「そう言われましても・・・そういえば、何かで憔悴しきった者たちがでた村で術を使いました。あの村で治癒行動をしてから、病にかかったような・・・・」

「その村は、穢れで汚染されていただんだろう。治癒術を使う者は、穢れに弱い。穢れを祓おう」

「どうやってですか?」

「俺の知り合いに、穢れを祓う浄化のプロフェッショナルがいる」

「術者の浮竹君のことかい?」

「ああ、そうだ」

京楽の問いに、浮竹が答える。

「でも、部外者を桔梗の王と会わせることになるけどいいの?」

「穢れを甘くみてはいけないぞ。このままでは、衰弱して死んでしまう」

「そうなんです。衰弱が激しいのです。自分に術をかけているのですが、私の術は自分にはききにくいもので・・・・・」

「桔梗の王、4大あやかしの長老だから、まだ生きていられるんだ。普通ならとっくの昔に死んでいる」

「あら・・・・」

とうの卯ノ花は、そこまで深刻に考えていなかったのだ。

はじめは風邪のような状態が続き、次に熱が出て、最後は血を吐いて死んでしまう。

今、風邪の症状が出て、熱がではじめたところであった。

「まだ間に合う。術者の浮竹に連絡して迎えにいこう」

「うん。ボクが迎えにいくよ。浮竹は、術者の浮竹からもらった浄化の札で、桔梗の王の穢れを少しでも祓って」

「やってみる」

京楽は、スマホで術者の浮竹と連絡をとると、桔梗の王が療養している場所を教えて、迎えに行くといった。

迎えにいくと、当たり前のように夜刀神も蝙蝠姿でまぎれていた。

「君もくるの?」

『浮竹が行くなら。ボクも行く』

「まぁ、悩んでも仕方ないね。夜刀神、くれぐれも災禍をふりまかないように」

『さぁ、どうだろうねぇ。ボクの意思と関係なしに、災禍はふりかかるから』

『桔梗の王か・・・・女性なんだよな?』

「うん、そうだよ。穢れのせいで少しやつれていたけど、すごい美人だったよ」

『治癒術の使い手か・・・・でも、自分には治癒の術がほとんど効かないなんて、やっぱり世の中うまくいかないことだらけだな』

術者の浮竹は、高級車に乗るのははじめてで、少しどきどきしていた。

『浮竹の行く場所には、ボクも行くって、分かってたでしょ?』

赤い蝙蝠姿の夜刀神が、浮竹の頭の上でしゃべる。

「うん。でも、浄化するために行くのに、穢れを与える君までくるのは、ちょっと問題があるんだけど、二人はいつも一緒でしょ」

『当たり前だよ』

『夜刀神の穢れは、俺が祓うから安心してくれ』

「任せたよ・・・・・」

京楽と、術者の浮竹と夜刀神を乗せた高級車は、山のほうにのぼっていく。

そして、ある一定の場所で空間が変わった。

桔梗の花が咲き乱れる丘が見えて、その向こう側に古い和風の家屋があった。

「ここはもう、桔梗の王のテリトリーだよ。桔梗を枯らしたりしないでね?」

京楽達は、車を降りて外に出た。

そこかしこで、桔梗の花が咲いていた。

「京楽!」

「十四郎!桔梗の王は?」

「大分札で穢れを取り除いて、今眠ってる」

『眠っている間に、穢れを取り除いでしまおう。夜刀神の存在を知ったら、何か言われそうだ』

術者の浮竹の言葉にみな頷いて、古い日本家屋に入る。

奥の真っ白な部屋で、人形のような女性が横たわっていた。

「これが桔梗の王、卯ノ花烈だ」

『綺麗な人だな。かわいそうに。今、穢れを祓ってあげる』

術者の浮竹は、卯ノ花の穢れを浄化した。

卯ノ花の白い顔の頬に、赤みがさして、健康体に戻っていた。

『じゃあ、俺たちはもう行くな?』

「ああ、ありがとう」

浮竹が礼を言うと、卯ノ花の声がした。

「お待ちなさい」

桔梗の王は目覚めていた。

「礼を、させてください」

『いや、俺たちはいいんで。帰ります』

『ボクも帰るよ』

「でも、命の恩人をただで帰すわけは・・・・そうだ、この秋の宝玉をあげましょう。私の術がつまっています。浄化できるなら、治癒術も使えるでしょう。普通では使えない、高位の治癒術の使い方が入っています」

『いいんですか』

術者の浮竹が、秋の宝玉を受け取る。

「かまいません。私の術は複雑なものが多いですから、使える人はあまりいませんが、あなたなら、使えるようになるでしょう」

『じゃあ、もらっておきますね』

「桔梗の王、体はもう大丈夫なのか?」

「ええ。おかげ様で、すっきりしました」

「よかった・・・」

京楽が、安堵する。

浮竹も、安堵した。

『じゃあ、ボクたちは帰るね・・って、車で送ってもらったんだった』

「ああ、今車を出すよ」

京楽は、術者の浮竹と夜刀神を家まで送っていった。

「卯ノ花、穢れの原因は長老神だと思う」

「ええ。そんな気がしました」

「長老神は災禍を呼ぶ。なぜ長老神でいられるのかもわからない」

「私にも、分かりません」

「とにかく、お互い長老神には気をつけよう」

「ええ」

桜の王と桔梗の王は、お互い体に気をつけてといいあいながら、別れるのであった。



「桜の王め。桔梗の王を助けたか」

その人物は、災禍をもたらした後の場所を見に行って、住民たちが何事もなかったかのように生きて、穢れも自然と祓われていることに激怒したのは、少し前のことだ。

「朝顔の王は私の手の中。あとは、椿の幼き王か・・・・・」

くくくと、その人物は笑う。

彼こそ、神のなりそこないの、長老神であった。







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