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桜のあやかしと共に3

桜の花が散り、葉桜になる季節。

浮竹と京楽と白哉は、億のするマンションで、いつもは浮竹と白哉は子猫姿で、京楽の仕事が入った時や食事の時、寝る前などに人化して過ごしていた。

「はぁ。浮竹と知り合って3か月。いまだにキスとハグだけなのが悲しい」

「私の目が届く間は、しばらくは浮竹には手を出させないぞ」

黒猫の白哉が、京楽の頭の上にのって、かじった。

「あいたたたたた」

「白哉、あまりかじるとバカがうつるぞ」

「ひどい!」

「む、バカがうつるのか。水でうがいしてこよう」

白哉は美しい青年姿になると、本当に水でうがいをはじめた。

「浮竹、君さぁ、ボクのことほんとに好きなの?」

「た、多分・・・・・・」

「ボクが「春」の生まれ変われりだから、好きなだけなんじゃない。ボクを見てくれていない」

「そんなつもりはない!俺は京楽のことだって好きだ!」

浮竹は、人化すると京楽に抱きついた。

「この愛しい気持ちを、どうしたらお前に伝えられる?」

浮竹は、涙をにじませていた。

「京楽、浮竹を泣かせたのか。ことと次第によっては・・・・・」

「白哉、すまないが二人で少し話がしたいんだ。外に・・・ルキアのところにでも、行っててくれないか」

「・・・・・分かった。兄がそういうなら、従おう」

白哉は、黒い子猫姿になると、35階のベランダから飛び降りた。

風を操るので、地面に激突などすることもなく、すたっと着地して、上を見上げる。

「「春」か・・・・・「春」なぜ、死んでしまったのだ」

白哉は、「春」のことを気に入っていた。浮竹と同じで兄のような存在だった。

浮竹の恋人で、家族だった。

まだ幼い白哉に、浮竹と一緒にいろんなことを教えてくれた。

人間であったが、浮竹と契約をしており、不老だったが不死というわけでなく、子供をかばって120年も前に交通事故で、浮竹と白哉の目の前で死んでしまった。

浮竹のショックは相当なもので、一時期自閉症になった。

白哉やルキア、他の花の精霊たちの甲斐甲斐しい看護のおかげで、3年かけてやっと立ち直った。

もう「春」のことなど、忘れてしまったかのように振る舞う浮竹の目の前に、京楽が現れた。

白哉でも分かった。

この青年は「春」であると。

「春」と同じ黒いうねる髪、鳶色の瞳、堀の深い顔立ち。

外見まで「春」とほとんど一緒だった。

「浮竹・・・兄は、どうしたいのだ。「春」を再び手に入れたいのか、「京楽春水」を手に入れたいのか・・・・あるいは、同時か」

白哉は、風を操って花びらになり、妹であるルキアの住むネモフィラの花畑の丘にきていた。

「兄様、こんな時間からどうしたのですか?」

「ルキア。恋とは、難しいものだな」

「兄様に、ついに好きな方が!?」

「違う。浮竹だ」

「ああ、浮竹さんですか」

ルキアは、少しがっかりしたようだった。

白哉には、かつて緋真という女性の妻がいた。ルキアの実の姉だった。緋真が不治の病にかかり、死に際に妹であるルキアを探し出して妹として家族に迎えてやってほしいという遺言に従い、当時生きていた花の精霊を記録している書簡庫に入り、ルキアを発見した。

ネモフィラの花の精霊で、緋真は梅の花の精霊であったので、ずっと梅か木の精霊を探していたのだ。草花とは思わなかった。

白哉はルキアと家族の契りを交わして、本当の家族になった。

白哉が心許せる存在は、ルキアと浮竹くらいだった。


-------------------------------------



「確かに、俺はお前の中で「春」を見ている。でも、「京楽春水」も見ているんだ。二人とも、同じくらいに好きなんだ」

「ボクも好き、ねぇ・・・・・」

京楽は、納得がいかないようだった。

「ボクが君を抱きたいと言い出したら、君はどうするの?」

「今は、まだだめだ。それに、京楽春水はそんな男じゃない」

「君の中のボクって、ちょっと美化されすぎてない?」

「いや、ただの頭の中が豆腐のバカだと思っている」

「ムキーーーー」

「ふふふふ」

浮竹は、自然に笑っていた。

「その笑顔。その笑顔、忘れないで。ボクのことが好きなら、遠慮なくアタックっしてきなよ。ボクも歓迎するし、君をボク色に染め上げたい」

ベッドに押し倒されて、浮竹は逡巡する。

「あ、京楽・・・・・・」

「怖い?」

「怖い。今はまだ、無理だ」

「無理やりは好きじゃないから、君の心の準備ができるまで、待つよ」

「京楽、愛している」

浮竹は、自分から唇を重ねてきた。

舌をからめあいながら、もつれあう。

ハグをして、キスを繰り返した。

「京楽、俺がお前を愛していると、信じてくれるか?」

「信じるしかないでしょ。ここまで好きっていわれちゃ。まぁ、ボクの前世が「春」であるせいだろうけど」

「京楽・・・・・」

「大切にするよ。いつか、パートナーの契約をしよう」

「うん・・・・・」

パートナー契約とは、結婚に似ている。

「んっ」

耳を甘噛みされて、浮竹は甘い声をあげていた。

「落ち着けー俺の息子おおおお」

浮竹は、潤んだ瞳見上げてきた。

「抜いてやろうか?」

「え、いいの?」

「俺のせいで、こうなったんだろう。責任はとる」

浮竹は、京楽の衣服をくつろげて、昂ったものを手でしごき、おそるおそる口に含む。

「うわ~、えろい・・・・・・・」

「んん・・・・・」

ぴちゃりと舌をはわせて奉仕すると、京楽は我慢ができずに浮竹の顔めがけて射精していた。

「あああ、ごめん!」

「いい。気持ちよかったか?」

「天国でした」

「もう一回、するか?」

「え、いいの?」

京楽は、キスとハグまでじゃないのかと思いながらも、邪魔な白哉もいないので、続きをお願いした。

浮竹は、手と舌を使って、また京楽を桃源郷に導く。

「うまいね、君。こんなの、どこで覚えたの」

「あ・・・・・・・」

「春」に仕込まれたとは言えなくて、言葉を濁す。

「うん、なんとんなく察したから。ありがとう」

「すまない・・・・・」

浮竹は、顔を洗いに洗面所に消えてしまう。

「はぁ・・・抱きたい」

率直な感想であった。

でも、考えてみれば、まだ出会って3か月しか経っていないのだ。

躊躇するのも無理はない。

「夕飯つくる」

「うん。トマトが賞味期限切れそうだから、使って」

「ミートスパゲッティにする。トマトソースを作ろう」

浮竹と京楽は、何事もなかったかのように日常に戻る。

さっきまで、卑猥なことをしていた様子など全くなかった。

「白哉に、多分気づかれるから、怒られるのは覚悟しておけ」

「えええーーーー!」

トマトをつぶしながら、浮竹は笑った。

「春水」

「ん?」

「これから、たまに春水って呼んでもいいか?」

「いいよ」

浮竹と京楽の距離が、ぐっと縮まった一日だった。

翌日に帰ってきた白哉は、京楽から浮竹の匂いがするので、怒ったが、最後までしていないという浮竹の言葉を信じて、京楽のすねを子猫姿で思い切りかじるだけにしておいた。

「白哉君てさぁ。浮竹のなんなの?」

「はっきり言ってしまえば、弟だ。異界にある俺の桜から株分けされた、桜だからな」

「あやかしにも、兄弟とかあるんだ」

「普通にあるぞ。家族とか」

「浮竹、白哉君手放す気ないね?」

「当り前だ。あんなかわいい弟、俺が認めた相手以外と交際するのもだめだ」

浮竹の貞操観念が高いのは、どうやら地であるらしい

「兄らは、できているのかいないのか、どっちなのだ」

「ん。一応、できてるよ?肉体関係はないけど、恋人だと思ってるよ」

京楽にそう言われて、浮竹は真っ赤になった。

「そ、そういうことにしておいてやる!」

浮竹は真っ赤になって、35階の窓から子猫どころか、人の姿で飛び降りた。

「ここ35階なんですけどおおおおおお」

「ん?だからなんだ?」

ふわふわと、宙を浮く浮竹は、背中に桜の翼が生えていた。

「白哉のように風を操れないが、翼を作れる」

「はぁ・・・でも、ここ35階だからね。隣人とかに見られないようにね」

「京楽、俺はお前を愛しているぞ!」

そう言って、浮竹は一度自分の桜に戻り、エネルギーを供給して帰ってくるのであった。


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「火車?」

「ええ。火車がでるんです。丑の刻に」

「ふーむ。あやかしだな。何か悪さはする?」

京楽が、依頼人から話を聞く。

「いえ、ただ現れるだけなんですけど・・・・怖がって、近隣の住民がすっかりこの定食屋にきてくれなくなって・・・・生活がかかってますから」

「退治する必要はなさそうだな。火車はわりと温厚な性格のやつがおおい。その火車、俺の知り合いだったりしてな」

浮竹が冗談半分で言った言葉であったのだが、次の日の丑の刻に出た火車は、本当に浮竹の知り合いだった。

「朧(おぼろ)じゃないか。なんで、こんな時間に人間界に現れたりしてるんだ?」

「ああ、桜の王。それが、前輪をなくしてしまって・・・この時間帯なら、人に見られないかなと思って」

「ばっちり見られて怖がられてるからな?」

「ひええええ。前輪、ないなぁ」

「前輪ってこれかい?」

定食屋の隅に置かれてあったタイヤであった。あやかしの匂いがするので、依頼人の了承をとって、持ち出してきていたのだ。

「ああ、助かります。これで、安全に運転して霊魂を三途の川に運べる」

火車は、前輪をはめると、からからと音を出して異界に去っていった。

「浮竹、君ってあやかしの知り合い多いね。桜の王ってのと、関係あるの?」

「いずれ、話す。その時まで、桜の王のことは気にしないでくれ」

「そう言われても、気になるんだけどなぁ」

すると、消えたはずの火車が現れて、京楽はびっくりしてこけた。

「あ、これ、お礼のあやかしまんじゅうです。どうぞ、桜の王」

「ああ、ありがとう」

「ではこれで」

「京楽・・・・大丈夫か?」

「思いっきり膝打った。打撲した」

「みせてみろ」

浮竹は、桜が咲くイメージをして、京楽の傷を癒してしまった。

「すごいね。浮竹って、治療もできるんだ」

「伊達に5千年は生きていないぞ」

「5千歳の恋人・・・・ボクとの年の差が半端ない」

「気にするな」

浮竹はからからと笑って、火車がもってきたあやかしまんじゅうを食べる。

つられて、京楽も食べるのであった。









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