忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
06 2025/07 1 2 3 4 7 9 10 11 1213 14 15 16 17 18 1920 21 22 23 24 25 2627 28 29 30 31 08

桜のあやかしと共に4

「このあやかしまんじゅう、うまいね」

「小豆とぎが作っているからな」

「え、小豆とぎが?」

京楽は、火車におみやげとしてもらったあやかしまんじゅうを、億ションの部屋で浮竹と一緒に食べていた。

当たり前のように、浮竹の隣には白哉がいた。

「白哉君さぁ、ちょっとは遠慮ってものないの。居候のくせに」

「兄に遠慮しても何もならぬ。居候ではなく、いてやっているのだ。なんだかんだで、子猫好きだろう」

「う・・・・・」

今の白哉は、人の姿をしていた。

あやかしまんじゅうを、3人で分けて食べると、あっという間になくなってしまった。

「これ、本当にうまいな。火車の朧(おぼろ)に聞いて、どこで売っているのか聞いてみよう」

「小豆とぎが作ってるんでしょ」

「ああ。小豆とぎに聞いたほうがはやいか?」

「さぁ?」

京楽は、今日は依頼もないので、ゆっくりしていた。

浮竹は、スマホをとりだすと、小豆とぎに電話をかけた。

「は?」

その光景を、京楽はびっくりして見ていた。

「ああ、小豆とぎか。あやかしまんじゅうって、お前たちが作っているんだろう?どこで売ってるんだ?え、三途の川?うーん、取り寄せは無理そうか・・・・え?送ってくれる?ありがとう。代金は、現金でいいか?え、クレジットカードがいい?」

電話の向こう側で、小豆とぎはあやかしまんじゅう20箱で2万円になるといっていた。

「じゃあ、妖怪配達で頼む。手数料もクレジットカードで払っておくから」

「あやかしが、スマホ・・・配達・・・・クレジットカード・・・・」

ちょっとしたカルチャーショックに見舞われて、京楽は頭を抱えた。

「知らなかったのか?退治屋の便利屋をしているわりには、無知だな」

「いや、ボクはどっちかっていうと幽霊のほうがおおいから。祓うの」

「ふむ。最近のあやかしは、現代文明に乗っているのも多いからな」

「そうなんだ」

浮竹は、小豆とぎにもう一度電話して、小豆バーも注文した。

「浮竹、たまには桜の精霊たちで宴を開かぬか。いやだが、この京楽とやらもきていいから」

「白哉が宴を開くなんて珍しいな。よし、桜の精霊たちに声をかけておこう」

その日の夜、異界への道が開いた。

宴は賑やかにおこなわれており、人間である京楽は珍しがられた。

「桜の精霊だらけだね・・・・・っていうか、ボク以外みんな桜の精霊?」

「そうだ。兄は、特別に桜の王である浮竹の寵愛を受けているから、この場にいられるのだ」

「浮竹って、やっぱりえらいんだ」

「当り前であろう。桜の王は、4大あやかしの長老の1人だぞ」

「いや、そんなこと言われても分からないし、知らないし」

「そこに座れ!桜の王がどうやってはじまったかを・・・・・」

白哉は、そこで突然スイッチが切れたように眠ってしまった。

「ああ、酔いつぶれたか。白哉は酒に弱いのに、宴好きだからな」

「そうなんだ」

「白哉とは、生まれてきて200年の付き合いだからな。弟のようなものだ。俺の本体の桜を株分けしたから、まぁ実際弟になるんだろうが」

でも、妹は契約したとはいえネモフィラの精霊のルキアである。

「うーん、ルキア・・・・・・」

「なんか、うなされてるよ。ルキアちゃんって、確か白哉君の妹だよね?」

「ああ。ネモフィラの精霊だ」

「花や木には、みんな精霊がいるの?」

「いや、年月を経た者や、力ある者が精霊になれる」

「じゃあ、桜の王って呼ばれてる浮竹はすごくえらいんだね」

「まぁ、否定はしない」

「桜の王、ルキアさんに迎えにくるように電話かけておきました」

「ああ、ありがとう」

浮竹は、白哉の体に自分が着ていた着物の羽織をかぶらせた。

「風邪、ひくなよ」



「兄様!」

1時間ほどして、桜の精霊の宴は他の花の精霊たちも混じるようになってきて、そこにルキアの姿があった。

「ああ、ルキア、元気か?」

「あ、はい。浮竹さんも、元気そうで何よりです」

「へぇ、この子がルキアちゃん・・・・・・」

ルキアは、浮竹の隣にいる京楽を見た。

白哉の話を聞いている限りでは、かなりいっているらしいが、普通の特異体質の青年に見えた。

「いつも兄様がお世話になっております」

「ああ、いいよいいよ。もう身内みたいなもんだからね」

京楽は、人懐っこい笑みを浮かべた。

「「春」さん?」

「え」

「あ、ごめんなさい!私ったら・・・兄様を連れて帰りますね。浮竹さんも京楽さんも、宴はほどほどに」

「ああ」

「うん」

京楽は、自分の姿までが「春」そっくりだとは知らなかった。

「ボクって、そんなに「春」に似てる?」

「ああ・・・生き写しのようだ」

浮竹は、懐かしそうに宴の中心で酒を他の桜の精霊たちに注がれて、それを飲んでいた。

「生き写しか・・・」

京楽は、複雑な気分だった。

「昔は、よくこうやって、桜の精霊たちで宴を開いて、そこに「春」も混じっていた」

「うん」

「春水。俺は、ちゃんと春水ってわかっているからな」

「うん」

絆を確かめるように、宴の最中であったが、キスをする。

桜の王に新しい恋人ができたと、大騒ぎになった。

「さぁ、皆宴はこのあたりでしまいにしよう。俺は京楽と人間界に戻る」:

「桜の王。やはり、異界にいてくれないのですか。あなたがいれば、異界の治安の悪さも・・・・」

「俺は人間界が好きだ。それに、俺がいたところで異界の治安の悪さは関係ないだろう。いた時もいなかった時も、あまり変わりなかったと聞いている」

「桜の王を惑わした人間・・・・・・」

「桜の王がいってしまう・・・・・」

「桜の王は・・・・・」

「ボクの浮竹は、桜の王じゃないよ。ただの、桜の精霊だ」

思いもよらなかった京楽の言葉に、浮竹の目が潤んだ。

ボクの。

自分のものだと、言ってくれた。

そんな扱いを京楽から受けたのは、初めてだった。

「京楽・・・・・・」

「浮竹、行こう。ボクたちのいるべき場所はここじゃない」

「ああ」

桜の精霊たちは、宴はおしまいだと悲しみだす。

「帰ろうか」

「うん、帰ろう」

白哉は、ルキアの手ですで人間界に戻っている。

浮竹と京楽も、それに続く。

「なぁ、春水」

「なに、十四郎」

名前を呼ばれて、浮竹は顔を赤くした。

「その、好きだぞ」

「うん。ボクも、好きだよ」

「「春」のことを重ねてしまう時があるかもしれないが、春水ってわかってるから」

「うん。信じてるから」

二人は、億ションに戻ると、お風呂に入って、同じベッドで眠った。

酒が入っていたせいか、眠りは浅く、京楽はまた自分が「春」である夢を見ていた。

「大好だ、「春」」

「ボクも大好きだよ、シロ」

「春」は、浮竹のことを十四郎からきているシロと呼んでいた。

「シロ、いつか別れることになっても、ボクは必ず君の元に戻ってくる」

「「春」そんな、縁起の悪いことを言わないでくれ」



「シロ・・・・・・」

京楽は起きた。

泣いていた。

シロと呼ばれた浮竹が、「春」を失って自閉症になったのを夢で見たのだ。

「十四郎・・・ボクは、「春」のようにはならない」

まだ眠る浮竹を抱きしめて、京楽は「春」がいかに浮竹にとって大切であったかを、再確認させられるのであった。




拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(07/08)
(07/08)
(07/06)
(07/05)
(06/30)
"ココはカウンター設置場所"