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桜のあやかしと共に42

それは突然だった。

妖狐の浮竹と、夜刀神の京楽がいなくなり、その妖力が完全にこの世界から気えてしまった。

「世代交代が、近いかもしれないと言っていたな。きっと、夜刀神の寿命に限界がきて、妖狐の俺も一緒に連れていったんだろうな」

「そうなの?」

京楽が、不思議がる。

「あの二人、嫌いじゃなかったのに」

「ちょっと、二人の最期の確認に行ってくる」

「あ、ボクも行くよ」

浮竹と京楽は、天逆海(あまのざこ)と会う。かすかだが、妖狐の浮竹と夜刀神の京楽の妖力の名残りがあった。

「ああ、あの二人なら一緒に逝ったよ。あたしが手にかけた。退治でもするかい?」

「いや、それはあの二人は望んでいないだろう。新しいあやかしにしたんだろう?」

「桜の王は、何もかもお見通しかい。そうだよ。あの二人は、またあやかしとして新しい命を芽生えさせる」

「また、会えるということか」

「そうなるねぇ」

「十四郎、この子、穢れの神だよ。放置していいの?」

「俺たちでは、どうしようもできない存在だ。放置でいいんじゃないか」

「あら、つまんない」

「二人の最期を確認しにきただけだ。争いをするためにきたんじゃない」

そう言って、浮竹と京楽は異界渡りをして、元の京楽のマンションに戻る。

「春水」

浮竹は、泣いていた。

「十四郎、おいで」

京楽に優しく抱きしめられて、ぽろぽろと涙をこぼす。

「あの二人が、好きだった。いきなり二人していなくなるなんて、ずるい。また、俺を置いていく‥‥‥春水も、いつか俺を置いていくのか?」

「ううん、ボクは君の傍にいるよ。逝く時は、あの二人のように一緒だよ」

「悲しいし、寂しい。少し、休眠しようと思うんだ」

「どのくらい?」

「ん、半年はどかな。それだけあれば、あの二人は転生しているだろうから」

「じゃあ、ボクも眠りにつくね。あやかし退治はどうする?」

「白哉には悪いが、恋次くんや阿散井一門に任せようと思う」

「そう。眠る前に、白哉くんと話さないとね?」



浮竹と京楽は、半年間休眠することを、白哉に話すと、白哉は当たり前のように受け入れた。

「理由は分かった。浮竹は長いと10年ほど休眠することがあったからな。半年など、短いほうだ」

「すまない、白哉。恋次くんがいるから、寂しくはないな?」

「浮竹、兄がいないと寂しいが、恋次もいるし我慢はできよう」

白哉は、静かに浮竹達の休眠を受け入れる。

「じゃあ、また半年痕に」

「ボクも、浮竹と一緒に眠るから」

「京楽、兄も浮竹を大事にな。同じ異界の桜の大樹で眠るのであろう?」

「ああ、そうなるな。あやかし退治については、恋次くんと白哉に任せる形になる」

「ああ、分かっている。住民のいなくなった、妖狐の浮竹と夜刀神の京楽の屋敷には、こちらから誰かを住まわせよう。人がいいか」

「そうだな」

浮竹は、休眠モードに入りかけており、眠そうだった。

「じゃあ、俺と京楽は、半年ほど眠りにつく。後は任せた」

そう言って、浮竹と京楽は、異界にわたり、桜の大樹の元へいく。

その中に入り、二人は半年間の休眠をすることにした。

「まだ起きているか、春水」

「うん、まだ起きてるよ」

「今度も、仲睦まじいまま、会いにきてくれるといいな」

「ボクの闇の部分が、正直君を独り占めできるとか思ったけど、考えてみれば白哉くんもいるし、君を本当の意味で独り占めできるのは今くらいかな」

京楽は、クスリと笑う。

「生まれ変わってもまた一緒なんて、いいね。ボクらも、そんな風になりたいね」

「俺たちは消えない。いつまでも一緒だ」

「うん」

「眠くなってきた‥‥おやすみ。また、半年後に」

「うん、おやすみ」

時が鮮やかに過ぎていく。

妖狐の浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹に、夜刀神の京楽は、山の王の京楽へと、転生していくのであった。










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