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桜のあやかしと共に43

半年間の休眠から目覚めた浮竹と京楽を待っていたのは、あやかし退治であった。

白哉や恋次にはできなかったあやかし退治を、半月かけて消化して、一息ついたところで、新しい依頼が舞い込んできた。

「人を食い殺す恐ろしい山の王がいるんです。退治してください」

「どうでもいいけど、君、天邪鬼だね」

「けっ、正体がばれちまったか」

京楽に依頼をしてきた老人の男性は、天邪鬼だった。

嘘をつく妖怪として知られており、天邪鬼が言ったことはあてにならない。 

「とにかく、山の王が恐ろしい妖怪なんだ。人を100人以上も食い殺している。依頼料はここに置いていく、とにかく退治を頼んだぜ!」:

そう言って、天邪鬼は去ってしまった。

依頼料としておかれていたのは、山の幸であった。

「どうしよう、十四郎」

「天邪鬼は嘘をつくからな。あてにできない。そもそも100人以上も食い殺していたら、ニュースになるだろ」

「それもそうだねぇ。放置でいいかな?」

「いや、念のために、山の王とやらを確かめにいこう。いいあやかしなら、退治を依頼しにきた者がいると教えよう」

「うん、分かったよ」

浮竹と京楽は、人里離れた山まで、高級車で向かう。

「はぁ‥‥‥‥なんだか、友人だったあいつらに似た妖力を、山から感じるんだが」

「うん。ボクも感じる」

「山の王とやらが、転生した妖狐の俺か、夜刀神の京楽だったりしてな?」

山の麓で聞き込みをすると、山の王というのは大変人気のある、いいあやかしであることがわかった。

「退治する必要はないみたいだな。念のため、山の王に会って、天邪鬼が退治してくれと言っていた件を知らせよう」

山の中のあやかしの中から、花鬼を選んで、山の王の住処の洞窟を知る。

そこに踏み入ると、懐かしい夜刀神の妖力を感じた。

「夜刀神?‥‥‥‥いや、今は山の王か」

その洞窟に住んでいる気配はあったが、今はいないようだった。

「気配が、あっち側からする」

「ほんとだね。人間もまじってるみたい」

山の王は、彼岸花の精霊となった浮竹と共に、山の開拓をしようという連中と睨み合っていた。

「もめごとかい?」

「あ、術者の方!依頼を受けてくれたんでしょう?」

人間の一人が、京楽に猫なで声で話しかける。

「確かに、依頼はあったけど、依頼してきたのは天邪鬼だった。正式な依頼としては引きうけていないね」

「そんな!じゃあ、ここで私が依頼します。山の王と、その連れを退治してください!」

『浮竹、争いになるかも』

『それはそれで面白い』

山の王と彼岸花の精霊を見て、浮竹は涙を滲ませた。

「お前たち‥‥…転生、していたんだな?」

『浮竹と同じ顔?でも、気をつけて。あの子、桜の王だ』

『桜の王?なんだそれ。あっちの術者はあやかしのようだが、京楽にそっくりだな?』

山の王の京楽と、彼岸花の精霊の浮竹は、自分たちにそっくりな存在を知ったが、威嚇していた。

「山の王、それにその連れの子。ボクたちに敵意はないよ。さっきの人間の依頼は引きうけない」

『ほう』

彼岸花の精霊の浮竹が、じーっと京楽を見つめる。

『懐かしい感じがする。どこかで会ったことがあるのか?』

浮竹が、京楽の耳元で。

「転生したけど、前世の記憶が残っていないんだ。初めて会ったということにしろ」

そう耳打ちをしていた。

「山の王、俺たちはお前たちに危害を加えるつもりはない」

『ほんとに、そうみたいだよ?』

山の王の京楽が、彼岸花の精霊の浮竹と何度か会話して、4人は和解ということで落ち着いた。

「人間たちよ。愚かな争いはやめて、去るといい」

浮竹は、桜の花びらをふっと吹いた。

すると、雷となった。人やあやかしにはあたらなかったが、人間を脅すには十分だった。

「化け物だあああ!逃げろおお!」

その場には、4人が残された。

「まず、初めましてかな。ボクは京楽春水。花鬼だよ」

「俺は浮竹十四郎‥‥‥桜の王で‥‥ぐすっ」

『なぜ、泣く?』

彼岸花の精霊の浮竹は、きょとんとしていた。

「こ、これは目にゴミが入ったからだ!」

『ボクたちと姿が同じで名前も同じ。何か縁(えにし)を感じるね。浮竹、とりあえず帰ろう?人間はいなくなったみたいだし』

『ああ、そうしようか』

「ま、また会えるか?」

浮竹が、やや緊張気味に声を出す。

『会いにきてくれるならね』

山の王の京楽は、そう返した。

「また、会いにくるから」

「ボクも」

「じゃあ、俺たちも帰るな。また、絶対遊びにくるから!」

浮竹は、手をぶんぶんふって、別れをした。



「ほんとに転生してた。また会えて、嬉しい」

「そうだね。休眠してたかいがあったね」

「また、会いにいこう。一度きたから、今度は異界渡りで行けるから」

「うん」

浮竹と京楽は、彼岸花の精霊の浮竹と、山の王の京楽と、こうして再び邂逅するのであった。



‥‥








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