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桜のあやかしと共に45

昔、桜の宝玉というものがあった。

桜の王の血族に代々受け継がれるものであるが、浮竹が桜の王になったのは今から5千年前。その前の前の桜の王から受け継がれてきたものだった。

本当は、大切にしないといけないものだった。

桜の秘術が入っており、浮竹はその秘術の全てを使えたし、内容は頭にしっかりと刻み込まれていた。

そして、はじめて愛した人間の「春」の死を塗り替えようと、桜の秘術でも禁忌の蘇りの術を浮竹は「春」にかけた。

だが、「春」は蘇らなかった。魂のレベルで、拒否されたのだ。

自暴自棄になった浮竹は、大切な大切な桜の宝玉を粉々に壊してしまった。

それが桜のただの一族であれば、極刑ものだった。

だが、王自らが壊した。

桜の宝玉は、こうして失われた‥‥はずであった。

だが、桜の宝玉はもう一つ存在する。

それは、桜の王の右目であった。

それを知る者は、浮竹だけのはずであった。だが、記憶を見られたのか、藍染にも伝わっていた。

「ほんと堪忍なぁ。桜の王。こないなことしたないねんけど、藍染様が桜の宝玉をどうしても欲しがっとるんや」

夏の朝顔の王、市丸ギンに、浮竹は右目をくりぬかれた。

「ああああ!!!!」

激しい出血と痛みで、何も考えられない。

「十四郎、今治癒するからしっかりして!」

「ほな、桜の宝玉はもろたで。さいなら」

「く、行かせるものか!」

白夜が、桜の術を使うが、桜の業火に包まれても、市丸は涼しい顔をして、去っていった。

「浮竹、兄がいなくなるなど、ないだろうな!私はいやだぞ!兄を失うのは、絶対にいやだ!」

京楽の卓越した治癒能力のおかげで、浮竹は一命を取り留めた。

右目は、再生して元の翡翠色に輝いていて、見ることもできた。

だが、もうそこには桜の宝玉は宿っていない。



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「ははははは!ついに手に入れたぞ!桜の宝玉を!」

藍染は、狂ったように笑っていた。

「朝顔の宝玉、桔梗の宝玉、椿の宝玉、それに桜の宝玉。これで、私はついに神となるのだ!」

4つの季節の花の宝玉を集めた者は、四季の王となり神となれる。

はずであった。

「何故だ!何故、何も起きない!」

宝玉たちは、かたかたと震えて、ピシリピシリと、罅が入っていく。

宝玉たちは、意思をもっている。四季の王にふさわしくない者の前で、粉々に砕け散った。

同時に、4つの季節の王の誰かを、四季の王にした。

神にはしなかったが、四季の王となれば、藍染と闘っても勝てる可能性がでてくる。

四季の王に選ばれたのは、桜の王、浮竹だった。


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その時、浮竹の体が黄金色に輝いた。

「十四郎、君‥‥‥」

「ああ。どうやら、四季の王になったらしい。宝玉を4つ集めて、神になるのにふさわしい者が掲げると、四季の王になり神となる。逆に、ふさわしくない者の場合、宝玉は砕け散り、季節の花の王の誰かが四季の王となる」

「じゃあ、藍染が宝玉を集めて神になろうとしたけど失敗して、十四郎が四季の王に選ばれたってことだね?」

「そうだな」

浮竹は、宝玉が砕け散ったことで、再び右目に宝玉を宿していた。

「四季の王というが、基本は何も変わらない。ただ、俺と俺の宝玉が敵とみなした者の前で、力を発揮する」

「へぇ。浮竹が神様になるんじゃないんだ。でも、神様の浮竹は遠いかんじがするから、四季の王までだね。ボクが許せる範囲は」

ふと、ベランダに敵の気配がした。

「またきたで~。もう一度、右目の宝玉もらうためにきてん。藍染様、一度失敗してるのに、もう一度試すって聞かなくてほんま、簡便やわ」

「俺は、四季の王として、藍染に加担する夏の朝顔の王、市丸ギンを敵とみなす」

「だからなんなん?この間みたいに、桜の術かけて敗北するん?」

「敗北するのはお前だ」

浮竹の体が金色に輝き、瞳も金色に輝いていた。

浮竹は、黄金の炎で市丸を焼いた。

「こんなもん通用するはず‥‥‥‥ぎゃあああ!!」

市丸は、黄金の炎に飲まれる。

「お前に愛しい者がいて、その者もお前を愛しいと思っているなら、一度だけ命を繋げるチャンスをやろう。代償は、愛しい者の命」

「あかん、あかんで。ボクが自分の命惜しさに、乱菊を差し出すとでも思うたんか?」

「乱菊‥‥‥召喚」

突然、召喚された乱菊は、目をぱちくりさせていたが、愛しい市丸の変わりはてた姿に、市丸にすがりつく。

「ギン、ギン、しっかりして!」

「あかん、ボクの傍から離れ、乱菊。今まで散々悪さしてきたつけがきたんや」

「市丸を愛する者よ。その命、捧げることはできるか?」

「できるわ。ギンを助けてくれるなら、あたしの命なんていくらでもあげる」

「十四郎‥‥‥‥」

京楽が、やめろと言いたげな顔をする。

浮竹は、四季の王としての裁きをくだす。

「市丸ギン、今日をもって、朝顔の王からただの朝顔の精霊に降格し、永久追放処分とする」

「ギン、聞いた?あたしの命も、あなたの命もどっちもとらないって」

「甘いわ、四季の王」

「愛する者を、犠牲にしてでも助けてくれと言っていたら、お前を殺していた」

「十四郎、立派だよ」

京楽は、浮竹の出した裁きは、甘くはあるが、誰の命もとらずにすんで、安心した。

市丸ギンの火傷を、京楽が癒す。

「さぁ、もうお前は夏の王でも朝顔の王でもない。どこへなりとも、その乱菊という愛しい者と消えるがいい」

「藍染様‥‥‥ボクは、あんたへの忠誠心より、乱菊のほうが大事や。乱菊、一緒にきてくれるかいな?」

「行くわ。どこまでも、あなたと一緒よ」

こうして、浮竹は四季の王となった。

市丸ギンは朝顔の王から外されて、藍染の部下であることもやめて、乱菊と共に、旅立っていった。

市丸ギンの夏の王がかけた穴を誰にすべきか、残された冬の椿の王日番谷冬獅郎と、秋の桔梗の王卯ノ花烈と会い、会議が開かれた。

結果、平子真子という朝顔の花鬼が夏の朝顔の王になることが決まるのであった。




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