忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
12 2025/01 2 3 45 6 7 8 9 10 20 21 22 23 24 2526 27 28 29 30 31 02

桜のあやかしと共に5

「ふん・・・・・」

「どうしたの。珍しく機嫌悪いね」

「夜刀神のやつ・・・・俺がお前を見つけたことをからかってきやがった」

「夜刀神って、ボクに似た青年のこと?」

一度、閑古鳥なく術者の浮竹の店で、式である夜刀神の京楽と出会っていた。その時は、浮竹と白哉もいたが、子猫姿だった。

「俺はあいつが苦手だ。嫌いというわけじゃんないんだが、観察するのが好きらしく、俺がお前を好きなことを観察するとか言ってた」

「はぁ。でも、人間じゃないんだよね」

「ああ。災厄を招く神だ。式の形をとってはいるが、神であることに変わりはない。だが、俺も桜の王といわれるだけあって、あいつと戦うことになったらそこそこいけると思う」

「もう、喧嘩はだめだよ」

京楽はそう言って、浮竹に紅茶を出した。

「私には緑茶を」

白哉の分も紅茶を出したのだが、白哉は嫌そうな顔をする。

「白哉君はいつでもマイペースだね。はいはい、緑茶ね」

「あやかしまんじゅうも頼む」

「はいはい・・・・・・・」

3時のおやつをとっていると、依頼人がきたベルの音がした。

「おや、依頼かな?」

「みたいだ。俺と白哉も同席する」

「うん、いいよ」

依頼人は、少年だった。

「河童に、金玉とられたああああ!!!!」

「え、まじで」

「河童・・・・・・」

「河童は悪戯好きだからね」

「お願いだよ、ぼくの金玉取り返して!」

「京楽、どいてろ」

浮竹は、手のひらに桜の花びらを出すと、ふっと息を吹きかけて、少年を包み込む。

「河童に金玉・・・・・あれ?金玉ついてる」

「河童は人を騙して遊ぶからな。金玉が本当に取られたなら、やばいが実際にそこまでする河童はいない。退治されると分かっているからな。でも、悪戯がすぎているな。一度会って、注意しよう」

「あ、依頼料千円しかないんだけど、千円でいい?ぼくまだ小学生だから」

「金はいらないよ。退治するわけじゃないからね。ちょっとその河童に会って、こらしめるよ」

「裏山の湖に出るんだ。地図、描くね」

少年は微妙な地図を描いた。まだ子供だから仕方ない。

「私はここに残る。河童は好きではない。下品だ」

「あーはいはい。じゃあ、白哉君はお留守番頼むね」:

「任せておけ」

「じゃあ、俺たちは出発しようか。河童の好物のキュウリを持っていこう」

そして、浮竹と京楽は、悪戯が好きな河童のいる湖まできた。

「きゅうりでつるの?」

「きゅうりは、反省した後に与える」

浮竹は、桜の花びらを手に乗せると、ふっと息をふきかけた。

湖が割れて、河童がいた。

「浮竹って、すごいね」

「なんじゅコラ、ぼけえええ!!俺を河童のいなずち様と知っての行動か」

「俺は桜の王の浮竹十四郎だ」

「げええええ、桜の王!す、すみません、さっきの子供はただ悪戯したかっただけで・・・命ばかりはお助けを・・・・」

「もう、人間に悪さをしないな?」

「は、はい」

河童は、きゅうりをもらって喜んだ。

「きゅうりもらった!」

「なんていうか・・・・浮竹と行動するよになってから、あやかしは浮竹のこと知ってて、退治する回数減ったね」

浮竹は、少しだけ笑った。

「長生きしてる分、名前は覚えられているからな。桜の王を怒らすな・・・そう、4大あやかしの長老の1人にからかわれたことがある」

「河童君、これにこりて、もう悪さしないようにね。今度したら、退治しなくちゃいけないから」

「ひいいい。肝に銘じておきますううう」

湖は元に戻り、河童は水の中にちゃぷんともぐっていった。

「君のさ・・・その、桜の花びらをふっと吹くと、いろんなことがおこるね」

「こんなこともできるぞ」

桜の花びらを吹いて、湖の周りに花畑ができあがった。

「わあ、すごいね」

「気に入ったか?」

「うん」

「じゃあ、今度もまた桜の花びらをふいていろんなものを見せてやろう」

京楽は、浮竹の頭をなでた。

「なんだ?」

「いや、なんかかわいいと思ってね」

『かわいいのは、見かけだけかもねぇ』

黒い鳥が飛んできて、浮竹の頭上で声を出した。

「夜刀神・・・焼き鳥にされたいか!」

『あははは、君たちっておもしろいねぇ。観察のしがいがあるよ』

「消えろ」

ふっと、浮竹が桜の花びらを吹くと、夜刀神に雷が落ちた。

夜刀神は平気そうな顔で、飛び続けていた。

「構うだけ、時間の無駄だ。帰ろう」

『じゃあ、ボクもついてく』

「お前は、主人の元に帰れ。寂しがっているんじゃないのか」

『ああ、それもそうだねぇ。ボクの浮竹はけっこう寂しがりやだから』

「じゃあ、とっとと消えろ」

ふっと、桜の花びらを浮竹が吹くと、竜巻がおきて夜刀神ははるか彼方におしやられてしまった。

「夜刀神かぁ。災いを司る神らしいけど、なんか性格は明るいね」

「自分の主人第一主義者。守るためなら、残酷になりまくる」

「ひえええ」

京楽は、夜刀神を怒らせないようにしようと思うのだった。


「帰ってきたか」

億ションに戻ると、白哉があやかしまんじゅうを食べながら、ルキアと話していた。

「やあ、ルキアちゃんこんにちわ」

「あ、京楽さん浮竹さんこんにちわ。兄様がお世話になっております。勝手にお邪魔させていただいております。兄様がどうしてもというので」

「ああ、いいよ。楽にしていて」

「はい・・・・でも、このあやかしまんじゅうおいしいですね」

「二十箱買ったからな。ルキアも、一箱もって帰るか?」

浮竹がそう言うと、ルキアは嬉しそうにあやかしまんじゅうを一箱受け取った。

「河童の件は、片付いたのか?」

「うん。浮竹のこと知ってたらしくって、すぐに終わったよ」

「浮竹の名を知らぬあやかしなど、そうそういないだろう」

白哉は、緑茶をすすりながらそう言った。

「え、そうなの?」

「まぁ、5千年も生きてるからな・・・四大あやかしの長老もやってるし、あやかしたちの管理を任されているが、放置してる」

「あやかしの管理・・・・・なんか、すごいね」

「俺は、京楽と一緒にいれる今のこの時がいいんだ」

「浮竹・・・・・」

「京楽・・・・・」

「ごほん」

「「あ」」

白哉に咳払いをされて、二人きりと錯覚するような甘い時間はすぐに終わるのだった。

ちなみに、その日はルキアは白哉の部屋で泊まることになり、ネモフィラの花冠を京楽と浮竹に作って、渡してくれた。

「今度、ルキアちゃんのいるネモフィラの花畑に遊びにいくよ」

「本当ですか!」

「ルキア、この男は「春」ではないぞ」

「あ、分かってます」

ルキアは、一瞬悲しそうに目を伏せた。

「でも、「春」の生まれ変わりなのですよね?京楽さんのこと、私は好きです」

「あはははは、浮竹の嫉妬が怖いから、あんまりそういうことは口にしないようにね」

浮竹は、京楽の足を踏んづけていた。

「今日は、海鮮パスタでも作ろうか」

浮竹は、気を取り直して、四人分の食事のことを考える。

京楽は金持ちなので、食事代をけちる必要などなかった。

「兄様は、いつも浮竹さんの手料理を食べられてうらやましいです」

「浮竹の料理の腕は、5千年生きた証のようなものだからな」

「確かに、料理うまいよね」

「兄は、浮竹の手料理を食べれることにもっと感謝をしろ」

「してるよ!」

「いや、まだ足りない」

白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の頭にかじりつく。

「白哉、バカがうつるぞ」

「浮竹って、時々ひどいよね」

そう言いながらも、京楽はからからと笑う。

その日ふるまわれた海鮮パスタは、一流レストランの味だった。

夜になり、浮竹と京楽は、二人で同じベッドで眠る。

まだキスとハグだけであるが、二人きりでいられる夜が、二人は好きだった。

「愛してるよ、浮竹」

「俺も愛してる、京楽」

お互いを抱きしめあいながら、眠りにつく。

そして京楽は自分が「春」である夢を見る。

夢はいつも鮮明で、なぜ自分は「春」ではないのだろうと、京楽は心の片隅で思うのだった。









拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(01/19)
(01/18)
(01/18)
(01/17)
(01/17)
"ココはカウンター設置場所"