桜のあやかしと共に5
「ふん・・・・・」
「どうしたの。珍しく機嫌悪いね」
「夜刀神のやつ・・・・俺がお前を見つけたことをからかってきやがった」
「夜刀神って、ボクに似た青年のこと?」
一度、閑古鳥なく術者の浮竹の店で、式である夜刀神の京楽と出会っていた。その時は、浮竹と白哉もいたが、子猫姿だった。
「俺はあいつが苦手だ。嫌いというわけじゃんないんだが、観察するのが好きらしく、俺がお前を好きなことを観察するとか言ってた」
「はぁ。でも、人間じゃないんだよね」
「ああ。災厄を招く神だ。式の形をとってはいるが、神であることに変わりはない。だが、俺も桜の王といわれるだけあって、あいつと戦うことになったらそこそこいけると思う」
「もう、喧嘩はだめだよ」
京楽はそう言って、浮竹に紅茶を出した。
「私には緑茶を」
白哉の分も紅茶を出したのだが、白哉は嫌そうな顔をする。
「白哉君はいつでもマイペースだね。はいはい、緑茶ね」
「あやかしまんじゅうも頼む」
「はいはい・・・・・・・」
3時のおやつをとっていると、依頼人がきたベルの音がした。
「おや、依頼かな?」
「みたいだ。俺と白哉も同席する」
「うん、いいよ」
依頼人は、少年だった。
「河童に、金玉とられたああああ!!!!」
「え、まじで」
「河童・・・・・・」
「河童は悪戯好きだからね」
「お願いだよ、ぼくの金玉取り返して!」
「京楽、どいてろ」
浮竹は、手のひらに桜の花びらを出すと、ふっと息を吹きかけて、少年を包み込む。
「河童に金玉・・・・・あれ?金玉ついてる」
「河童は人を騙して遊ぶからな。金玉が本当に取られたなら、やばいが実際にそこまでする河童はいない。退治されると分かっているからな。でも、悪戯がすぎているな。一度会って、注意しよう」
「あ、依頼料千円しかないんだけど、千円でいい?ぼくまだ小学生だから」
「金はいらないよ。退治するわけじゃないからね。ちょっとその河童に会って、こらしめるよ」
「裏山の湖に出るんだ。地図、描くね」
少年は微妙な地図を描いた。まだ子供だから仕方ない。
「私はここに残る。河童は好きではない。下品だ」
「あーはいはい。じゃあ、白哉君はお留守番頼むね」:
「任せておけ」
「じゃあ、俺たちは出発しようか。河童の好物のキュウリを持っていこう」
そして、浮竹と京楽は、悪戯が好きな河童のいる湖まできた。
「きゅうりでつるの?」
「きゅうりは、反省した後に与える」
浮竹は、桜の花びらを手に乗せると、ふっと息をふきかけた。
湖が割れて、河童がいた。
「浮竹って、すごいね」
「なんじゅコラ、ぼけえええ!!俺を河童のいなずち様と知っての行動か」
「俺は桜の王の浮竹十四郎だ」
「げええええ、桜の王!す、すみません、さっきの子供はただ悪戯したかっただけで・・・命ばかりはお助けを・・・・」
「もう、人間に悪さをしないな?」
「は、はい」
河童は、きゅうりをもらって喜んだ。
「きゅうりもらった!」
「なんていうか・・・・浮竹と行動するよになってから、あやかしは浮竹のこと知ってて、退治する回数減ったね」
浮竹は、少しだけ笑った。
「長生きしてる分、名前は覚えられているからな。桜の王を怒らすな・・・そう、4大あやかしの長老の1人にからかわれたことがある」
「河童君、これにこりて、もう悪さしないようにね。今度したら、退治しなくちゃいけないから」
「ひいいい。肝に銘じておきますううう」
湖は元に戻り、河童は水の中にちゃぷんともぐっていった。
「君のさ・・・その、桜の花びらをふっと吹くと、いろんなことがおこるね」
「こんなこともできるぞ」
桜の花びらを吹いて、湖の周りに花畑ができあがった。
「わあ、すごいね」
「気に入ったか?」
「うん」
「じゃあ、今度もまた桜の花びらをふいていろんなものを見せてやろう」
京楽は、浮竹の頭をなでた。
「なんだ?」
「いや、なんかかわいいと思ってね」
『かわいいのは、見かけだけかもねぇ』
黒い鳥が飛んできて、浮竹の頭上で声を出した。
「夜刀神・・・焼き鳥にされたいか!」
『あははは、君たちっておもしろいねぇ。観察のしがいがあるよ』
「消えろ」
ふっと、浮竹が桜の花びらを吹くと、夜刀神に雷が落ちた。
夜刀神は平気そうな顔で、飛び続けていた。
「構うだけ、時間の無駄だ。帰ろう」
『じゃあ、ボクもついてく』
「お前は、主人の元に帰れ。寂しがっているんじゃないのか」
『ああ、それもそうだねぇ。ボクの浮竹はけっこう寂しがりやだから』
「じゃあ、とっとと消えろ」
ふっと、桜の花びらを浮竹が吹くと、竜巻がおきて夜刀神ははるか彼方におしやられてしまった。
「夜刀神かぁ。災いを司る神らしいけど、なんか性格は明るいね」
「自分の主人第一主義者。守るためなら、残酷になりまくる」
「ひえええ」
京楽は、夜刀神を怒らせないようにしようと思うのだった。
「帰ってきたか」
億ションに戻ると、白哉があやかしまんじゅうを食べながら、ルキアと話していた。
「やあ、ルキアちゃんこんにちわ」
「あ、京楽さん浮竹さんこんにちわ。兄様がお世話になっております。勝手にお邪魔させていただいております。兄様がどうしてもというので」
「ああ、いいよ。楽にしていて」
「はい・・・・でも、このあやかしまんじゅうおいしいですね」
「二十箱買ったからな。ルキアも、一箱もって帰るか?」
浮竹がそう言うと、ルキアは嬉しそうにあやかしまんじゅうを一箱受け取った。
「河童の件は、片付いたのか?」
「うん。浮竹のこと知ってたらしくって、すぐに終わったよ」
「浮竹の名を知らぬあやかしなど、そうそういないだろう」
白哉は、緑茶をすすりながらそう言った。
「え、そうなの?」
「まぁ、5千年も生きてるからな・・・四大あやかしの長老もやってるし、あやかしたちの管理を任されているが、放置してる」
「あやかしの管理・・・・・なんか、すごいね」
「俺は、京楽と一緒にいれる今のこの時がいいんだ」
「浮竹・・・・・」
「京楽・・・・・」
「ごほん」
「「あ」」
白哉に咳払いをされて、二人きりと錯覚するような甘い時間はすぐに終わるのだった。
ちなみに、その日はルキアは白哉の部屋で泊まることになり、ネモフィラの花冠を京楽と浮竹に作って、渡してくれた。
「今度、ルキアちゃんのいるネモフィラの花畑に遊びにいくよ」
「本当ですか!」
「ルキア、この男は「春」ではないぞ」
「あ、分かってます」
ルキアは、一瞬悲しそうに目を伏せた。
「でも、「春」の生まれ変わりなのですよね?京楽さんのこと、私は好きです」
「あはははは、浮竹の嫉妬が怖いから、あんまりそういうことは口にしないようにね」
浮竹は、京楽の足を踏んづけていた。
「今日は、海鮮パスタでも作ろうか」
浮竹は、気を取り直して、四人分の食事のことを考える。
京楽は金持ちなので、食事代をけちる必要などなかった。
「兄様は、いつも浮竹さんの手料理を食べられてうらやましいです」
「浮竹の料理の腕は、5千年生きた証のようなものだからな」
「確かに、料理うまいよね」
「兄は、浮竹の手料理を食べれることにもっと感謝をしろ」
「してるよ!」
「いや、まだ足りない」
白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の頭にかじりつく。
「白哉、バカがうつるぞ」
「浮竹って、時々ひどいよね」
そう言いながらも、京楽はからからと笑う。
その日ふるまわれた海鮮パスタは、一流レストランの味だった。
夜になり、浮竹と京楽は、二人で同じベッドで眠る。
まだキスとハグだけであるが、二人きりでいられる夜が、二人は好きだった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
お互いを抱きしめあいながら、眠りにつく。
そして京楽は自分が「春」である夢を見る。
夢はいつも鮮明で、なぜ自分は「春」ではないのだろうと、京楽は心の片隅で思うのだった。
「
「どうしたの。珍しく機嫌悪いね」
「夜刀神のやつ・・・・俺がお前を見つけたことをからかってきやがった」
「夜刀神って、ボクに似た青年のこと?」
一度、閑古鳥なく術者の浮竹の店で、式である夜刀神の京楽と出会っていた。その時は、浮竹と白哉もいたが、子猫姿だった。
「俺はあいつが苦手だ。嫌いというわけじゃんないんだが、観察するのが好きらしく、俺がお前を好きなことを観察するとか言ってた」
「はぁ。でも、人間じゃないんだよね」
「ああ。災厄を招く神だ。式の形をとってはいるが、神であることに変わりはない。だが、俺も桜の王といわれるだけあって、あいつと戦うことになったらそこそこいけると思う」
「もう、喧嘩はだめだよ」
京楽はそう言って、浮竹に紅茶を出した。
「私には緑茶を」
白哉の分も紅茶を出したのだが、白哉は嫌そうな顔をする。
「白哉君はいつでもマイペースだね。はいはい、緑茶ね」
「あやかしまんじゅうも頼む」
「はいはい・・・・・・・」
3時のおやつをとっていると、依頼人がきたベルの音がした。
「おや、依頼かな?」
「みたいだ。俺と白哉も同席する」
「うん、いいよ」
依頼人は、少年だった。
「河童に、金玉とられたああああ!!!!」
「え、まじで」
「河童・・・・・・」
「河童は悪戯好きだからね」
「お願いだよ、ぼくの金玉取り返して!」
「京楽、どいてろ」
浮竹は、手のひらに桜の花びらを出すと、ふっと息を吹きかけて、少年を包み込む。
「河童に金玉・・・・・あれ?金玉ついてる」
「河童は人を騙して遊ぶからな。金玉が本当に取られたなら、やばいが実際にそこまでする河童はいない。退治されると分かっているからな。でも、悪戯がすぎているな。一度会って、注意しよう」
「あ、依頼料千円しかないんだけど、千円でいい?ぼくまだ小学生だから」
「金はいらないよ。退治するわけじゃないからね。ちょっとその河童に会って、こらしめるよ」
「裏山の湖に出るんだ。地図、描くね」
少年は微妙な地図を描いた。まだ子供だから仕方ない。
「私はここに残る。河童は好きではない。下品だ」
「あーはいはい。じゃあ、白哉君はお留守番頼むね」:
「任せておけ」
「じゃあ、俺たちは出発しようか。河童の好物のキュウリを持っていこう」
そして、浮竹と京楽は、悪戯が好きな河童のいる湖まできた。
「きゅうりでつるの?」
「きゅうりは、反省した後に与える」
浮竹は、桜の花びらを手に乗せると、ふっと息をふきかけた。
湖が割れて、河童がいた。
「浮竹って、すごいね」
「なんじゅコラ、ぼけえええ!!俺を河童のいなずち様と知っての行動か」
「俺は桜の王の浮竹十四郎だ」
「げええええ、桜の王!す、すみません、さっきの子供はただ悪戯したかっただけで・・・命ばかりはお助けを・・・・」
「もう、人間に悪さをしないな?」
「は、はい」
河童は、きゅうりをもらって喜んだ。
「きゅうりもらった!」
「なんていうか・・・・浮竹と行動するよになってから、あやかしは浮竹のこと知ってて、退治する回数減ったね」
浮竹は、少しだけ笑った。
「長生きしてる分、名前は覚えられているからな。桜の王を怒らすな・・・そう、4大あやかしの長老の1人にからかわれたことがある」
「河童君、これにこりて、もう悪さしないようにね。今度したら、退治しなくちゃいけないから」
「ひいいい。肝に銘じておきますううう」
湖は元に戻り、河童は水の中にちゃぷんともぐっていった。
「君のさ・・・その、桜の花びらをふっと吹くと、いろんなことがおこるね」
「こんなこともできるぞ」
桜の花びらを吹いて、湖の周りに花畑ができあがった。
「わあ、すごいね」
「気に入ったか?」
「うん」
「じゃあ、今度もまた桜の花びらをふいていろんなものを見せてやろう」
京楽は、浮竹の頭をなでた。
「なんだ?」
「いや、なんかかわいいと思ってね」
『かわいいのは、見かけだけかもねぇ』
黒い鳥が飛んできて、浮竹の頭上で声を出した。
「夜刀神・・・焼き鳥にされたいか!」
『あははは、君たちっておもしろいねぇ。観察のしがいがあるよ』
「消えろ」
ふっと、浮竹が桜の花びらを吹くと、夜刀神に雷が落ちた。
夜刀神は平気そうな顔で、飛び続けていた。
「構うだけ、時間の無駄だ。帰ろう」
『じゃあ、ボクもついてく』
「お前は、主人の元に帰れ。寂しがっているんじゃないのか」
『ああ、それもそうだねぇ。ボクの浮竹はけっこう寂しがりやだから』
「じゃあ、とっとと消えろ」
ふっと、桜の花びらを浮竹が吹くと、竜巻がおきて夜刀神ははるか彼方におしやられてしまった。
「夜刀神かぁ。災いを司る神らしいけど、なんか性格は明るいね」
「自分の主人第一主義者。守るためなら、残酷になりまくる」
「ひえええ」
京楽は、夜刀神を怒らせないようにしようと思うのだった。
「帰ってきたか」
億ションに戻ると、白哉があやかしまんじゅうを食べながら、ルキアと話していた。
「やあ、ルキアちゃんこんにちわ」
「あ、京楽さん浮竹さんこんにちわ。兄様がお世話になっております。勝手にお邪魔させていただいております。兄様がどうしてもというので」
「ああ、いいよ。楽にしていて」
「はい・・・・でも、このあやかしまんじゅうおいしいですね」
「二十箱買ったからな。ルキアも、一箱もって帰るか?」
浮竹がそう言うと、ルキアは嬉しそうにあやかしまんじゅうを一箱受け取った。
「河童の件は、片付いたのか?」
「うん。浮竹のこと知ってたらしくって、すぐに終わったよ」
「浮竹の名を知らぬあやかしなど、そうそういないだろう」
白哉は、緑茶をすすりながらそう言った。
「え、そうなの?」
「まぁ、5千年も生きてるからな・・・四大あやかしの長老もやってるし、あやかしたちの管理を任されているが、放置してる」
「あやかしの管理・・・・・なんか、すごいね」
「俺は、京楽と一緒にいれる今のこの時がいいんだ」
「浮竹・・・・・」
「京楽・・・・・」
「ごほん」
「「あ」」
白哉に咳払いをされて、二人きりと錯覚するような甘い時間はすぐに終わるのだった。
ちなみに、その日はルキアは白哉の部屋で泊まることになり、ネモフィラの花冠を京楽と浮竹に作って、渡してくれた。
「今度、ルキアちゃんのいるネモフィラの花畑に遊びにいくよ」
「本当ですか!」
「ルキア、この男は「春」ではないぞ」
「あ、分かってます」
ルキアは、一瞬悲しそうに目を伏せた。
「でも、「春」の生まれ変わりなのですよね?京楽さんのこと、私は好きです」
「あはははは、浮竹の嫉妬が怖いから、あんまりそういうことは口にしないようにね」
浮竹は、京楽の足を踏んづけていた。
「今日は、海鮮パスタでも作ろうか」
浮竹は、気を取り直して、四人分の食事のことを考える。
京楽は金持ちなので、食事代をけちる必要などなかった。
「兄様は、いつも浮竹さんの手料理を食べられてうらやましいです」
「浮竹の料理の腕は、5千年生きた証のようなものだからな」
「確かに、料理うまいよね」
「兄は、浮竹の手料理を食べれることにもっと感謝をしろ」
「してるよ!」
「いや、まだ足りない」
白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の頭にかじりつく。
「白哉、バカがうつるぞ」
「浮竹って、時々ひどいよね」
そう言いながらも、京楽はからからと笑う。
その日ふるまわれた海鮮パスタは、一流レストランの味だった。
夜になり、浮竹と京楽は、二人で同じベッドで眠る。
まだキスとハグだけであるが、二人きりでいられる夜が、二人は好きだった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
お互いを抱きしめあいながら、眠りにつく。
そして京楽は自分が「春」である夢を見る。
夢はいつも鮮明で、なぜ自分は「春」ではないのだろうと、京楽は心の片隅で思うのだった。
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