桜のあやかしと共に51
「だから、濡れ衣やいうてるやん」
新しく夏の朝顔の王になった、平子真子は、春の桜の王で、四季の王でもある浮竹に訴える。
「俺はまだ朝顔の王になって半月も経ってないねんで。全部の夏の花をすぐに従えるなんて無理や。あんたを襲った朝顔の花鬼たちは、前の王の市丸ギンに忠誠を誓ったやつらや。それを永久追放処分にしたあんたを恨んでの犯行やないのかいな」
「確かに、俺は市丸ギンを永久追放にした。けれど、襲ってくる時期が遅い」
「だからって、俺のせいにしなや。俺のせいじゃあらへんで。俺は藍染なんか嫌いやし、まして手下になるなんて死んでもいやや」
平子は、夏の王の館でやってきていた浮竹と京楽と会っていた。
浮竹がたくさんの朝顔の花鬼に襲われた。何故襲ったのか、生き残った花鬼に聞くと、平子真子に命令されたといって自害した。
なので、浮竹は京楽を連れて、平子のいる夏の王の館まで来ていた。
「彼、嘘はついてないみたいだよ」
「そうだな」
「だから、最初から言うてるやん。俺のせいやないって」
「話は分かった。まだ藍染の下についている花鬼は、処分対象になるが、いいな?」
「仕方あらへんな。俺の力にも限界あるさかいに。好きに処分してええで」
平子は、王としてまだまだ未熟で、夏の花鬼たち全てを従わせることができず、今回のような騒動を起こしてしまった。
「平子、お前は夏の王として、力をつけろ。そうだな、冬の椿の王の日番谷冬獅郎の元で、しばらく修行しろ」
「修行?王になったのに、違う王の元で修行せなあかんのかいな」
「四季の王の言葉だよ、平子くん」
「はいはい、わかりましたよ。言う通りにすればええねんやろ」
こうして、平子真子は、冬の王の日番谷冬獅郎の元で修行することになった。
「藍染についている、花鬼の数はけっこう多いな。特にひまわりの花鬼は強い」
「そうだね。厄介だね」
「そうだ。彼岸花の精霊の俺と、山の王の京楽の実力を知りたいと思っていたんだ。あの二人に、頼んでみるか」
「いいの?彼らは藍染と関係ないのに」
京楽が、二人のことを思って口にする。
「俺たちが接触してるんだ。いつか、藍染とも接触するかもしれない。それに、あの二人なら藍染の手下になることもないからな」
「確かに、彼らならそれはあり得ないね」
浮竹と京楽は、夏の王の館から異界渡りをして、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽の住む山にやってくる。
『やぁ、遊びにきたの?』
山の王の京楽の洞窟にくると、彼岸花の精霊の浮竹もいた。
『こんな朝から、珍しいな』
「お前たちに頼みたいことがある‥‥」
浮竹の説明で、案外あっさりと、二人は花鬼退治を了承した。
『最近、穏やかなあやかしばかりで、力がありあまってたんだよね』
『ふふふ、夏の花鬼か。美しい彼岸花にしてやろう』
二人は、そう言った。
「今からでも大丈夫か?」
『うん、問題ないよ』
『俺も平気だ』
浮竹と京楽は、二人を連れて夏の王の館に行き、浮竹が最初に襲われた朝顔の群生地に移動した。
桜の術で、桜の王に敵意を持っている者の心を揺さぶり、襲い掛かるようにした。
「あぶない、十四郎」
京楽が、ひまわりの花鬼を倒す。
『後は任せて?』
山の王の京楽は、青龍刀を取り出して風をまとわせ、襲いかかってくる花鬼たちを切り倒していく。
『さぁ、綺麗な花を咲かせるといい:』
彼岸花の精霊の浮竹は、襲いかかってくる花鬼たちから、彼岸花を咲かせて養分として倒してしまう。
「強いな」
「そうだね」
浮竹と京楽は、襲いかかってこられてもいつでも対処できるようにしていた。
『これで、最後だよ!』
山の王の京楽は、一人で百体近いひまわりの花鬼を数分もかからずやっつけてしまう。
彼岸花の精霊の浮竹の周囲には、彼岸花が咲いていた。
どれも、元は藍染の手下である、花鬼たちであった。
『あれ、もうおしまい?』
『ものたりないな』
「君たちの強さは十分にわかったよ」
「ああ。これだけ強ければ、藍染も手を出せないだろう」
『藍染って?』
「俺をはじめとした季節の花の王たちの長で、長老神をしている。穢れをもたらす、神になれなかった男だ。四季の王でもある、俺の命を狙っている」
『わお。やっかいな相手と敵対してるんだね』
「慎重な上に神出鬼没でな。ある理由があって、四季の王である俺を直接殺せないんだ。だから、こうやって花鬼やあやかしを操って、俺を殺そうとしている」
『藍染か‥‥養分にしたら、きっと大輪の彼岸花が咲くんだろうな』
危ない橋を渡りそうな彼岸花の精霊の浮竹を、山の王の京楽に回収してもらう。
異界渡りをして、四人は山に戻る。
「二人とも、思っていた以上に強くて、俺は安心した。藍染が手を出してきても、撃退できるだろう」
「そうだね。ひまわりの花鬼は強いのに、数分もしないで百体くらいやっつけるとか、けっこうすごいね。彼岸花の精霊の浮竹も、相手を彼岸花の養分にしてしまうし」
『俺はただ、美しい彼岸花を咲かせただけだぞ?』
「うん、綺麗な彼岸花がたくさん咲いたね?」
京楽がそう言うと、彼岸花の精霊の浮竹は妖艶に微笑んだ。
『俺が咲かせる彼岸花は美しいだろう?』
「ああ、そうだな」
浮竹が頷く。養分にされた花鬼から咲いた彼岸花は、特別に美しかった。
『ボクたちの助力がいる時は、遠慮なく言ってね?』
頼もしい山の王の京楽の言葉に、浮竹も京楽も頷いた。
「じゃあ、俺たちは戻る。またな」
『しゅわしゅわが飲みたい』
彼岸花の精霊の浮竹が、ご褒美にくれと言いたげなので、買い置きしてあったコーラを一度京楽の自宅に戻りとってくると、渡した。
『しゅわしゅわだ!』
『よかったね、浮竹』
再度別れを告げて、四人は別れた。
「ギンは降格処分の上に永久追放。おまけに私を裏切った。さて、どうしたものか‥‥」
藍染は、かっこつけてはいるが、おまるに座っていた。
怒った浮竹が、藍染の侍女をしている桜の花鬼に命じて、この前の2,5倍のモレ草を盛ったのだ。
死んでもおかしくない量だったのだが、藍染はしぶとかった。
1週間以上トイレで過ごし、寝る時はいつもれてもいいように、おまるに跨ったまま眠った。
モレ草。
強烈な下剤の効果のある薬草であった。
藍染は、今日の料理にもモレ草が入っていたとも知らず、下痢を病気と思うのだった。
- トラックバックURLはこちら