桜のあやかしと共に8
浮竹は、キッチンで昼食を作っていた。
今、白哉はいない。妹のルキアのネモフィラの花畑に出かけてしまっていた。
ふと、気配を感じて振り返る。
「京楽?」
「ひどいなぁ、シロ。ボクを忘れちゃったの」
「「春」?そ、そんなばかな・・・「春」は死んだはずだ!」
浮竹は、顔面蒼白になった。
「こうやって、この世界に戻ってきたんだよ。シロ、君に会うために。京楽春水だっけ。ボクの生まれ変わり・・・・どこにいるの?その京楽春水の魂を吸えば、ボクは完全に生き返る」
「「春」そんなことしちゃだめだ!俺の「春」は死んだんだ」
「じゃあ、ここにいるボクは?」
「春」は、浮竹を抱きしめた。
「十四郎ただいまー。昼食できたかな?」
「お、さっそく帰ってきたようだね」
「春水、逃げろーーー!!」
京楽は、自分そっくりな「春」を見て、一瞬動きを止める。
「君は・・・「春」?なぜ、いるんだい」
夢の中で、いつも鏡で見る顔だった。
「シロ、さぁのこの京楽春水を贄に・・・・」
「「春」愛してる。でも、それはもう過去のことなんだ」
浮竹は、桜の花びらをふっと吹いて、「春」を燃やす。
泣きながら。
「シロ・・・・どうして?」
「俺は今この春水を愛している。たとえ「春」であっても、奪うことは許さない」
「シロ・・・・一緒にいこう?」
燃えながら、「春」は浮竹を抱きしめる。
浮竹は、やけど一つ負わずに、「春」を抱きしめ返した。
「ごめんなさい「春」。俺には春水が必要なんだ」
「シロ。一緒に眠ろう」
「「春」・・・・・・・・」
シロは、そのまま灰となった。
その場に残された浮竹は、意識を失っていた。
「十四郎!」
京楽がかけよって揺り動かすが、ぴくともしない。
『ああ・・・・間に合わなかったか』
「夜刀神!?」
『「春」は桜の王の魂に入り込んだ。もう、起きない。誰かが、その意識の中にもぐりこんで起こすまでは』
『ちょ、夜刀神、人の意識にもぐりこむのは帰ってこれない可能性が高いんだぞ!』
『でも、するよね?君は』
「うん」
京楽は力強く頷いた。
「ボクたちの危機に、かけつけてくれたんだね。ありがとう。浮竹の意識の中にもぐるよ。手伝ってくれないかな」
京楽は、浮竹をベッドに寝かすと、意識を集中させる。
『ボクが外からサポートするよ。どうか、無事に桜の王と一緒に戻ってきてね』
京楽は、浮竹の意識の中にもぐりこんでいく。
その世界は、いつも夢に見る120年以上前の「春」が生きていた時代だった。
浮竹は、着物姿で、「春」と楽しそうにお茶をしていた。
「おや、こっちにまできたのかい。しつこいね。シロは誰にも渡さない」
「それはボクのセリフだ。十四郎は、渡さない」
京楽は、呪符を「春」に向かって飛ばす。
「春」は、それをシールドで防ぐ。
「ボクも、力はあったんだよ。主に浄化力だけど・・・・シロ、少しまっててね。今、邪魔者を排除するから」
「「春」?そこに、誰かいるのか?」
浮竹には、京楽の姿は見えていないようであった。
「十四郎!」
京楽が叫ぶと、浮竹がピクリと反応する。
「誰だ?俺の名を呼ぶのは・・・どこか懐かしくて、愛しいかんじがする」
「シロ、ボクだけを見て」
「春」を、京楽は浮竹の力を勝手に使って、桜の花びらをふっと吹きかけて、氷漬けにした。
「「春」!?」
場面が変わる。
「春」が血まみれで横たわっていた。近くには「春」をはねた馬車があった。
「いやだああああああああ!「春」「春」!!!!!」
「浮竹、目を覚まして!これは「春」が君を自分のものにするために見せている夢だ!」
そこで、京楽の姿が浮竹にも見えた。
「春水!?俺は・・・「春」は・・・・・」
「「春」は今、君の精神の中にもぐりこんで、魂の状態だけでいる。追い出せるかい?」
「「春」・・・お前は、死んだんだ。そう、これは過去の夢」
「シロ・・・行かないで」
また場面が変わって、ネモフィラの花畑になった。
「一緒に眠ろう?」
「「春」・・・・・」
浮竹は、「春」を抱きしめて、それから桜の花びらをふっと吹いた。
「春」は、桜に包まれる。
「せめて、桜に包まれて、眠れ」
「シロ・・・・残念だよ。でも、またくるから」
「春」は、浮竹の中から消える。
でも、消滅したわけではなく、魂魄が逃げていったのだ。
「春水・・・俺を抱いていてくれ」
「うん」
「春水・・・つらい目に合わせてごめん」
「それは十四郎のほうでしょ?あんなに愛していた「春」が蘇った」
「俺は大丈夫だ」
浮竹は泣いていた。
『かたがついたようだね。便利屋のボクと桜の王の魂を、引き上げるよ』
「夜刀神か」
「ボク一人の力じゃ、浮竹の意識の中にもぐりこめなかったから」
「そうか。礼を、しないとな・・・・・」
まず、京楽が目覚めた。
浮竹は、まだ意識を取り戻さない。
「大丈夫かな、十四郎」
『うまくいったんでしょ?「春」の魂は逃げていったみたいだけど』
『桜の王、起きてくれ』
ゆっくりと、浮竹の瞳が開かれる。
「すまない・・・・・」
それだけ言って、浮竹は人の姿を保っていられずに、白猫のオッドアイの子猫になってしまった。
「にゃああんん」
ぺろぺろと、京楽をなめる。
「十四郎、つらいんでしょ。無理しないで寝て?」
「にゃあ」
浮竹は、ひと声鳴くと、京楽の腕の中ですうすうと眠りにつく。
『もう起きないとか、ないよな?』
『大丈夫。桜の王は「春」の死を受け入れているし、便利屋のボクを選んだ』
術者の浮竹は、眠る子猫の浮竹を心配そうに見つめた。
「ごめん、ボクも疲れたよ。浮竹と一緒に寝るから、ボクらの分の昼食が用意してあると思うんだけど、それでも食べて、起きるのまってて」
『ゆっくりおやすみ』
『護衛は任せろ』
「じゃあ・・・・・」
京楽も、ブレーカーが落ちたように眠ってしまった。
人の意識の中に潜り込むには、生命力と体力を使う。消耗が激しいようだった。
『「春」は結局、体を失っただけだ。また、来るだろうね』
『桜の王の幸せを、壊せたりさせないぞ』
二人は意気込んで、護衛の任についたが、結局「春」は現れなかった。
「京楽春水・・・ボクの、生まれ変わり」
泉の奥で、「春」は新しい器をもらい、それに宿った。
「シロ・・・・待ってて。必ず、迎えに行くから」
「春」は、自分が拒絶されたと分かっていなかった。
否、そういう風に蘇った。
「春」は、桜の花びらを泉に浮かべながら、愛しいシロのことを思うのであった。
今、白哉はいない。妹のルキアのネモフィラの花畑に出かけてしまっていた。
ふと、気配を感じて振り返る。
「京楽?」
「ひどいなぁ、シロ。ボクを忘れちゃったの」
「「春」?そ、そんなばかな・・・「春」は死んだはずだ!」
浮竹は、顔面蒼白になった。
「こうやって、この世界に戻ってきたんだよ。シロ、君に会うために。京楽春水だっけ。ボクの生まれ変わり・・・・どこにいるの?その京楽春水の魂を吸えば、ボクは完全に生き返る」
「「春」そんなことしちゃだめだ!俺の「春」は死んだんだ」
「じゃあ、ここにいるボクは?」
「春」は、浮竹を抱きしめた。
「十四郎ただいまー。昼食できたかな?」
「お、さっそく帰ってきたようだね」
「春水、逃げろーーー!!」
京楽は、自分そっくりな「春」を見て、一瞬動きを止める。
「君は・・・「春」?なぜ、いるんだい」
夢の中で、いつも鏡で見る顔だった。
「シロ、さぁのこの京楽春水を贄に・・・・」
「「春」愛してる。でも、それはもう過去のことなんだ」
浮竹は、桜の花びらをふっと吹いて、「春」を燃やす。
泣きながら。
「シロ・・・・どうして?」
「俺は今この春水を愛している。たとえ「春」であっても、奪うことは許さない」
「シロ・・・・一緒にいこう?」
燃えながら、「春」は浮竹を抱きしめる。
浮竹は、やけど一つ負わずに、「春」を抱きしめ返した。
「ごめんなさい「春」。俺には春水が必要なんだ」
「シロ。一緒に眠ろう」
「「春」・・・・・・・・」
シロは、そのまま灰となった。
その場に残された浮竹は、意識を失っていた。
「十四郎!」
京楽がかけよって揺り動かすが、ぴくともしない。
『ああ・・・・間に合わなかったか』
「夜刀神!?」
『「春」は桜の王の魂に入り込んだ。もう、起きない。誰かが、その意識の中にもぐりこんで起こすまでは』
『ちょ、夜刀神、人の意識にもぐりこむのは帰ってこれない可能性が高いんだぞ!』
『でも、するよね?君は』
「うん」
京楽は力強く頷いた。
「ボクたちの危機に、かけつけてくれたんだね。ありがとう。浮竹の意識の中にもぐるよ。手伝ってくれないかな」
京楽は、浮竹をベッドに寝かすと、意識を集中させる。
『ボクが外からサポートするよ。どうか、無事に桜の王と一緒に戻ってきてね』
京楽は、浮竹の意識の中にもぐりこんでいく。
その世界は、いつも夢に見る120年以上前の「春」が生きていた時代だった。
浮竹は、着物姿で、「春」と楽しそうにお茶をしていた。
「おや、こっちにまできたのかい。しつこいね。シロは誰にも渡さない」
「それはボクのセリフだ。十四郎は、渡さない」
京楽は、呪符を「春」に向かって飛ばす。
「春」は、それをシールドで防ぐ。
「ボクも、力はあったんだよ。主に浄化力だけど・・・・シロ、少しまっててね。今、邪魔者を排除するから」
「「春」?そこに、誰かいるのか?」
浮竹には、京楽の姿は見えていないようであった。
「十四郎!」
京楽が叫ぶと、浮竹がピクリと反応する。
「誰だ?俺の名を呼ぶのは・・・どこか懐かしくて、愛しいかんじがする」
「シロ、ボクだけを見て」
「春」を、京楽は浮竹の力を勝手に使って、桜の花びらをふっと吹きかけて、氷漬けにした。
「「春」!?」
場面が変わる。
「春」が血まみれで横たわっていた。近くには「春」をはねた馬車があった。
「いやだああああああああ!「春」「春」!!!!!」
「浮竹、目を覚まして!これは「春」が君を自分のものにするために見せている夢だ!」
そこで、京楽の姿が浮竹にも見えた。
「春水!?俺は・・・「春」は・・・・・」
「「春」は今、君の精神の中にもぐりこんで、魂の状態だけでいる。追い出せるかい?」
「「春」・・・お前は、死んだんだ。そう、これは過去の夢」
「シロ・・・行かないで」
また場面が変わって、ネモフィラの花畑になった。
「一緒に眠ろう?」
「「春」・・・・・」
浮竹は、「春」を抱きしめて、それから桜の花びらをふっと吹いた。
「春」は、桜に包まれる。
「せめて、桜に包まれて、眠れ」
「シロ・・・・残念だよ。でも、またくるから」
「春」は、浮竹の中から消える。
でも、消滅したわけではなく、魂魄が逃げていったのだ。
「春水・・・俺を抱いていてくれ」
「うん」
「春水・・・つらい目に合わせてごめん」
「それは十四郎のほうでしょ?あんなに愛していた「春」が蘇った」
「俺は大丈夫だ」
浮竹は泣いていた。
『かたがついたようだね。便利屋のボクと桜の王の魂を、引き上げるよ』
「夜刀神か」
「ボク一人の力じゃ、浮竹の意識の中にもぐりこめなかったから」
「そうか。礼を、しないとな・・・・・」
まず、京楽が目覚めた。
浮竹は、まだ意識を取り戻さない。
「大丈夫かな、十四郎」
『うまくいったんでしょ?「春」の魂は逃げていったみたいだけど』
『桜の王、起きてくれ』
ゆっくりと、浮竹の瞳が開かれる。
「すまない・・・・・」
それだけ言って、浮竹は人の姿を保っていられずに、白猫のオッドアイの子猫になってしまった。
「にゃああんん」
ぺろぺろと、京楽をなめる。
「十四郎、つらいんでしょ。無理しないで寝て?」
「にゃあ」
浮竹は、ひと声鳴くと、京楽の腕の中ですうすうと眠りにつく。
『もう起きないとか、ないよな?』
『大丈夫。桜の王は「春」の死を受け入れているし、便利屋のボクを選んだ』
術者の浮竹は、眠る子猫の浮竹を心配そうに見つめた。
「ごめん、ボクも疲れたよ。浮竹と一緒に寝るから、ボクらの分の昼食が用意してあると思うんだけど、それでも食べて、起きるのまってて」
『ゆっくりおやすみ』
『護衛は任せろ』
「じゃあ・・・・・」
京楽も、ブレーカーが落ちたように眠ってしまった。
人の意識の中に潜り込むには、生命力と体力を使う。消耗が激しいようだった。
『「春」は結局、体を失っただけだ。また、来るだろうね』
『桜の王の幸せを、壊せたりさせないぞ』
二人は意気込んで、護衛の任についたが、結局「春」は現れなかった。
「京楽春水・・・ボクの、生まれ変わり」
泉の奥で、「春」は新しい器をもらい、それに宿った。
「シロ・・・・待ってて。必ず、迎えに行くから」
「春」は、自分が拒絶されたと分かっていなかった。
否、そういう風に蘇った。
「春」は、桜の花びらを泉に浮かべながら、愛しいシロのことを思うのであった。
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