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桜のあやかしと共に9

「春」の一件があって、半月が過ぎた。

「春」はあれから、一度だけ浮竹の前に現れて、京楽の腕からかすめとり、浮竹に口づけて消えてしまった。

「「春」、まだ存在してるんだね」

「魂を浄化させないとだめだ。術者の俺に頼んで、浄化の札を作ってもらった。術自体は壊してくれたそうだから、今度会った時ちゃんと成仏させる」

浮竹は、「春」の死をきちんと受けいれていた。

「春水、好きだ。ぎゅーーーっってして?」

「ボクも好きだよ、十四郎」:

抱きしめあう二人を、白哉は何も言わずに茶をすすっていた。

「あやかしまんじゅうのストックがつきた。浮竹、兄の名で注文していいか?」

「ああ、いいぞ白哉」

白哉は、浮竹と京楽がいちゃこらするのにも慣れているようで、自分のリズムで日常を過ごす。

「買い物にいってくる」

「十四郎、一人じゃ危ないから、ボクの車で行こう」

「すぐ、そこだぞ?」

「それでもだめ。今の十四郎を一人で行動させれない」

浮竹は、歩いて15分の距離にあるスーパーに、京楽のもつ高級車で出かけた。

「大根が安いな・・・・・。ああ、サンマがあれば。でも季節じゃないしな」

「浮竹、スーパーじゃなくて、今度から通販で買わない?」

「だめだ。材料は新鮮なものでないと。あと、安いほうがいい」

「ボク、君と白哉君を養うくらい平気だよ?」

「まぁ、すでに養ってもらっているから、家事をしている」

「うん。すごく助かるよ」

本当は1つしかなかったベッドを、浮竹と白哉の分も買って、空いていた部屋を浮竹と白哉のj部屋として与えた。

「キャベツが少し高いな・・・・。ガソリンがねあがってるせいで、ほとんどのものが高くなってる」

「桜の精霊なのに、十四郎は現代の買い物事情にくわしいね」

くすっと、京楽は笑った。

買い物を終えて、車に乗ろうとすると、車の中に「春」が座っていた。

「「春」!性懲りもなく、また現れたね!」

「春」が車の外に出て、浮竹に近づく。

「シロ、ボクと一緒にいこう?」

「「春」、俺は春水を愛している。お前を愛していた浮竹十四郎は120年前、お前が死んだ時に一緒に死んだんだ」

「何を言ってるの、シロ。シロはここにいるじゃない」

「「春」・・・・愛している」

「ちょっと、十四郎!?」

浮竹は、「春」を受け入れたように見えた。

「春」を抱きしめて、キスをする。昔のように微笑みかけると、「春」は涙を流した。

「しょせん、かりそめ命か・・・。器があっても、術を壊された。さぁ、シロ、ボクがあやかしになる前に、その浄化の札で成仏させておくれ」

「「春」・・・・愛している。今は春水を愛しているが、「春」も愛していた」

浮竹は、泣きながら笑って、浄化の札を数枚手に取り、「春」を抱きしめながら、その背中にはっていく。

「お別れだ、シロ。120年前、君を残して死んでごめん。それから京楽春水!」

「な、なにさ」

「シロを泣かせたら、許さないからね」

「泣かせないよ!十四郎を残して死なない」

「じゃあ、ボクは一人で黄泉に帰るよ。ボクの転生先はすでにあるからね。消えるだけさ」

すううと、浄化の白い焔がたちのぼり、「春」を包んでいく。

「「春」!!」

「シロ、泣かないで」

「「春」ーーーーー!!!」

車の外で、完全に消えてしまった。

「帰ろう、十四郎」

「ああ・・・・・」

浮竹は、また泣いていた。

「ぐすっ・・・・春水、今日一緒に寝てくれ。寂しい」

「いいよ。君の傍にずっといてあげる」



全てが終わった旨を夜刀神と術者の浮竹に連絡した。

『思うにね、春の季節のあやかしの管理をやめた桜の王に、あやかしの管理をしてほしくて、花鬼が仕組んだみたいだよ」

「俺はもう、過去の俺じゃない。管理といっても、間引きだ。あんな行為、もうしたくない。あやかしがあやかしを殺す。そんなの、おかしい」

『まぁ、確かにねえ』

夜刀神は、浮竹に同情する。

『え、あやかしの管理って、あやかしを殺すことなのか?』

「そうだ。悪さをしたなら分かるが、数の調整だ。そんなの、おかしいだろう?」

『確かにおかしいね。他の長老たちはどうしてるんだい』

「俺と同じで、秋の桔梗と冬の椿は管理をやめた。夏の朝顔は、自分の花鬼を作って間引きさせてる」

『ああ、だからあの時朝顔の花鬼が暴れていたのかい』

「ああ。夏の朝顔の王から、消される通告があったんだろう。俺は、朝顔の王は嫌いだ。名を、市丸ギンという」

『ああ、そんなのいたねぇ』

夜刀神は、懐かしそうに昔を思い出す。

「桔梗の王卯の花烈、椿の王日番谷冬獅郎・・・・ああ、懐かしいな。皆、市丸以外は元気にしているだろうか」

『元気そうだよ?椿の王なんて、小さいくせにかわいい恋人がいたね』

椿は冬の花だ。

見た目は幼い少年だが、齢3千年をこしている。

『とにかく「春」があやかしになったり、悪霊になったりしなくてよかったよ』:

「ぐすっ・・・・・・」

浮竹が、涙を滲ませる。

『あ、ああ、もうこの話は禁句にしようか』

『でも、誰が「春」君に蘇りの術を・・・ただの花鬼にはできないだろう』

「長老神か、先代の長老か・・・そんなところだろうな」

『長老神?』

術者の浮竹が、首を傾げる。

「俺たち4大精霊長老の上に君臨する、植物のあやかしの神だ」

『名前は?』

「藍染。下の名は知らない。俺が桜の王として、5千年前に長老についた時にはすでにいた」

「ボクにはまだあやかしの知識は少ないから、全然分からないよ」

京楽の言葉に、夜刀神が笑う。

『少しずつ覚えていけばいいのさ。桜の王と同じ時間を生き続けるなら』

『そうだぞ。焦っても、なんにもならないしな』

術者の浮竹と夜刀神の京楽は、京楽の億ションにきて、モンブランを食べていた。

この前、夜刀神が作ってほしいと言っていたからだ。

『ああ、やっぱり桜の王が作るお菓子はおいしいねぇ。ボクの浮竹の作るお菓子もおいしくなってきたけど、プロの味ってかんじがする』

「ああ、話してなかったか。40年前、暇だったので人間に化けて、料理の学校に通っていた」

『『はぁ!?』』

「え、まじなの」

「人生が暇だったからな・・・・・白哉は知っているよな?」

「浮竹が、人のまねをするのが好きなことは知っている。高校なる場所へ通っていたり、姿を変化させて小学生になったりもしていた」

『うわー。桜の王の、精霊の長老の小学生なんてひくわー』

「うるさい!俺が何になろうが、勝手だろうが。それに、料理の学校には2年通ったが、他の場所には一時だけだ」

『ま、まぁ、桜の王が誰かに迷惑をかけたわけじゃないからいいんじゃないのか?』

「そうだぞ。料理の腕はもとからあったが、料理の学校に通うようになって、料理がますます好きになったしな」

「いやぁ、毎日浮竹の料理食べてるから、外で食べるとまずいって感じちゃってねえ。困ったよ」

京楽ののろけ話に、浮竹が赤くなる。

「べ、別にお前のためだけに作ってるんじゃないからな!白哉の分もちゃんとあるからな!”」

「浮竹、兄の料理はまさに神」

『夕飯食べていきたいなぁ』

『俺も、夕飯食べていきたい』

「私は元から食べるつもりでいる」

3人から熱烈なコールをされて、浮竹は幸せそうなため息をつきながら、キッチンに消えていく。

「浮竹の手前、言えなかったが、長老神には気をつけろ。あれは、神の領域にいるが、そちらの夜刀神と同じようなまがつかみの一種だ」

『へぇ、ボクと同じ災いの神か・・・・面白い』

「これは、警告だ。長老神は、浮竹をよく思っていない。仲のいい兄らも同様の視線で見られるであろう」

『じゃあ、白哉君も?』

術者の浮竹が聞くと、白哉が答える。

「私もよい目では見られていないな」

「今日はロールキャベツが中心だが、いいだろう?」

キッチンから、浮竹の声がする。

皆、それでいいと答えて、長老神のことはとりあえず保留にした。

できあがった夕飯を食べて、術者の浮竹は涙をにじませる。

『う、うまい・・・』

「そっちの俺に、レシピを書いたメモをやろう」

『ありがとう!!』

術者の浮竹は、浮竹に抱き着いた。

「百合ですな」

『百合だねぇ』

「人は、おかしな名をつけるな」

白哉は、さっさと食べ終わると、黒猫の子猫姿になってチュールが欲しいとにゃあにゃあ京楽をひっかく。

「白哉君、食べすぎじゃないの?浮竹の手料理の後にチュールなんて」

「兄の知ったことではないであろう。さっさとチュールよこせ」

白哉の傍若無人ぶりには、その場にいた誰もかなうことができなかったのであった。















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