棺(2期)
その棺の中は空洞になっている。
中に入っているのは、花束と、彼が好んでつけていた手袋に、彼の衣服。
形見は、持たないことにした。
そうしないと、悲しみで支配されて戻ってこれそうにないから。
「さよなら・・・・・・」
ティエリアは泣いていた。いつもは感情を見せない整いすぎた、少女と見まごう容姿の中性の少年は、泣いていた。
泣き疲れて、もう涙などでないと思っていたのに、頬を流れる銀の波は止まりそうにない。
彼は、もうこの世界の何処にもいないのだ。
どんなに泣いても、昔のように、優しく頭を撫でてくれることはない。優しい声をかけてくれることもない。
泣きすぎて、記憶にある彼の顔の輪郭が鈍ってきている。
「もういいか?」
刹那に問われて、ティエリアは頷いた。
花束を手にもって、それを棺の上に乗せた。
「本当にこれで気がすむのか?もう一人で泣いたりしないか?」
刹那は優しい。
ロックオンが死んだと知って、ティエリアを支えてくれている。まだ集まったマイスターはティエリアと刹那だけだ。
二人だけで、やっていかなければならない。他のクルーたちを支えて。
青を意識した制服に身を包んだ刹那の側にいるティエリアは、刹那が知っている頃から全く時を刻んでいなかった。
今では、刹那のほうが背が上になっている。
イノベイターであるティエリアが、人のように時を刻むことはないのだ。時を刻まないように遺伝子操作されている。
それが新人類と呼ばれる存在故だろうか。
ティエリアは、涙をハンカチでふきとると、刹那に支えられて花束を棺の中に入れた。
「さよなら・・・・・」
別れの時だ。
ロックオン・ストラトス・・・・・・ニール・ディランディとの。
棺を宇宙に流したいといいだしたのは、刹那のほうだった。あまりにも、ティエリアがロックオンに固執しているのを見た刹那が、それを断ち切る手段として、彼の葬式をすると決めたのだ。
ティエリアは否とは言わなかった。
それでティエリアの気が少しでも紛れるのならと、刹那は思った。
「今度、地球に降りよう。ディランディ家の墓にも花を添えよう。一緒にいくな、ティエリア?」
「ああ・・・・・分かった」
悲しみを断ち切るには、ディランディ家の墓にも花束を添える必要があると、刹那は思っていた。すでに、何度もティエリアがディランディ家の墓参りに行っていると知ってのことだった。
死者へ花束を贈るのは、生きている者の自己満足かもしれない。
それでも、死している者の心が少しでも安らぐのであればと、人は死者に花を手向ける。
死は始まりに過ぎない。人は死して、巡り巡り命の輪をたどって、また違う形となる。
その環(わ)の中に、ロックオン・ストラトスがいるこを祈って。
「さようなら・・・・また、何処かで会いましょう」
ティエリアは、流れていく棺に向かって手を振った。
小さくなっていく棺。
宇宙に散っていく花束たち。
火葬もされず、永遠に宇宙を彷徨い続ける棺。
ロックオン・ストラトスの棺は流れ続ける。宇宙の何処かで、彼らの歩み出す一歩一歩を見守りながら。
中に入っているのは、花束と、彼が好んでつけていた手袋に、彼の衣服。
形見は、持たないことにした。
そうしないと、悲しみで支配されて戻ってこれそうにないから。
「さよなら・・・・・・」
ティエリアは泣いていた。いつもは感情を見せない整いすぎた、少女と見まごう容姿の中性の少年は、泣いていた。
泣き疲れて、もう涙などでないと思っていたのに、頬を流れる銀の波は止まりそうにない。
彼は、もうこの世界の何処にもいないのだ。
どんなに泣いても、昔のように、優しく頭を撫でてくれることはない。優しい声をかけてくれることもない。
泣きすぎて、記憶にある彼の顔の輪郭が鈍ってきている。
「もういいか?」
刹那に問われて、ティエリアは頷いた。
花束を手にもって、それを棺の上に乗せた。
「本当にこれで気がすむのか?もう一人で泣いたりしないか?」
刹那は優しい。
ロックオンが死んだと知って、ティエリアを支えてくれている。まだ集まったマイスターはティエリアと刹那だけだ。
二人だけで、やっていかなければならない。他のクルーたちを支えて。
青を意識した制服に身を包んだ刹那の側にいるティエリアは、刹那が知っている頃から全く時を刻んでいなかった。
今では、刹那のほうが背が上になっている。
イノベイターであるティエリアが、人のように時を刻むことはないのだ。時を刻まないように遺伝子操作されている。
それが新人類と呼ばれる存在故だろうか。
ティエリアは、涙をハンカチでふきとると、刹那に支えられて花束を棺の中に入れた。
「さよなら・・・・・」
別れの時だ。
ロックオン・ストラトス・・・・・・ニール・ディランディとの。
棺を宇宙に流したいといいだしたのは、刹那のほうだった。あまりにも、ティエリアがロックオンに固執しているのを見た刹那が、それを断ち切る手段として、彼の葬式をすると決めたのだ。
ティエリアは否とは言わなかった。
それでティエリアの気が少しでも紛れるのならと、刹那は思った。
「今度、地球に降りよう。ディランディ家の墓にも花を添えよう。一緒にいくな、ティエリア?」
「ああ・・・・・分かった」
悲しみを断ち切るには、ディランディ家の墓にも花束を添える必要があると、刹那は思っていた。すでに、何度もティエリアがディランディ家の墓参りに行っていると知ってのことだった。
死者へ花束を贈るのは、生きている者の自己満足かもしれない。
それでも、死している者の心が少しでも安らぐのであればと、人は死者に花を手向ける。
死は始まりに過ぎない。人は死して、巡り巡り命の輪をたどって、また違う形となる。
その環(わ)の中に、ロックオン・ストラトスがいるこを祈って。
「さようなら・・・・また、何処かで会いましょう」
ティエリアは、流れていく棺に向かって手を振った。
小さくなっていく棺。
宇宙に散っていく花束たち。
火葬もされず、永遠に宇宙を彷徨い続ける棺。
ロックオン・ストラトスの棺は流れ続ける。宇宙の何処かで、彼らの歩み出す一歩一歩を見守りながら。
PR
- トラックバックURLはこちら