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椿2

「好きです、愛してます隊長!」

しっぽをぶんぶん振る犬のようだと、白哉は思った。

恋次に愛していると告げた日から、何かが急に変わるわけでもなく、平穏な毎日だった。

ただ、恋次が愛しているだの、好きだなどと言ってくる回数が極端に増えた。

いちいち言葉を返すわけにもいかないので、聞き流していると、執務室で恋次が文机に向かっていた白哉をそっと抱き締めた。

「隊長、隊長はどうなんですか。俺の事どう思っていますか」

「しつこい駄犬だと思っている」

「ひでぇ!」

クスリと、小さな笑みを白哉は零した。

「冗談だ」

「ほんとに?半分本気だったでしょう」

「ああ」

そう言えば、恋次は白哉の肩を揉んできた。

「なんだ」

「いえ、また凝ってるなぁと思って」

気持ちよかったので、そのまま肩揉みを続けさせた。

「ああ、もう少し左を・・・・・」

恋次のことを、まるでマッサージ機扱いだったが、恋次にはそれでもよかった。

愛しい白哉に触れれるなら。

15分ほど肩を揉んでもらって、白哉も満足した。

「愛してます隊長」

「-----------私も愛している、恋次」

また聞くことができたその言葉に、恋次は眩しいばかりの笑みを零す。

「お前は、表情がすぐ顔にでるのだな」

「そういう隊長が、顔に出さなすぎなだけです。まぁ、昔の鉄面皮に比べれば、大分感情らしきものが浮かぶようになりましたが」

昔は、薄い微笑みを浮かべることさえなかった。

その頃はまだ白哉のことをただの上官として慕っていた。

もう、10年以上前のことだ。

もう、この関係になって10年ばかりが経つのかと、ふと思った。

いつか、あんたから全てを奪って、俺のものにしてみせる。そう豪語していたが、白哉は緋真のことだけを愛して、恋次のことを愛しているとは言ってくれなかった。

それが、この間誕生日プレゼントを用意できず、椿をあげた頃から変わっていった。あの椿を氷室で保存しているという白哉の言葉に、正気かと思った。

ただの椿だ。

でも、白哉にとっては大切な椿だったのだ。

愛した者からもらった、何気にないものではあるが、椿は6番隊の隊花でもある。

花言葉は、高潔な理性。

いつもの白哉にぴったりの花言葉だった。

「隊長・・・椿の花は好きですか」

「ああ、好きだ。冬の寒さをものともせず、凛と咲き誇る様は美しい」

まだ、椿は咲いている。

次の日、恋次は椿の花を散らした湯を用意していた。

「これは?」

「足のマッサージに使うんです」

「このようなことに椿を散らすなど・・・・」

「そこらへんにいくらでも咲いてますよ」

ちゃぷんと湯の中に、裸足になった白哉の足がひたされる。

綺麗に整った爪を見ながら、足の裏をほぐしていく」

「あ・・・・・」

「隊長?」

「なんでもない。続けよ」

ぐっぐっと、足のツボを刺激していくと、痛いのか気持ちいいのかどちか分からなくなってきた。

「もうよい」

「はい」

足をふいて、足袋をはいた。

「うつ伏せになって寝てください。腰をマッサージします」

うつ伏せになり、いつかの時のようにマッサージしてもらった。ここ最近睡眠は十分にとっているので、あの時のように眠くなりはしなかった。

「最後にこれを」

椿を、髪に飾られた。

「私は、おなごではない」

「それでも、似合っています」

「恋次・・・愛している」

恋次に、口づけた。

白哉からキスをしてくるのは本当に珍しいので、恋次は真っ赤になった。

「隊長、今夜いいですか」

「ああ」

「うっしゃ!」

逢瀬を重ねることを許可した。

爛れた関係だと思った。愛しているといえば、それで終わりになるのだと思った。

でも、違うのだ。

愛しているからこそ、大切にし大切にされるのだ。

気づくのが、少し遅かったが、別れることにならなくてよかったと白哉は思うのだった。

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