母の揺りかご(1期)
それは、まるで母の揺り籠にいるような、もしくは母体の体内の羊水に漂っているかんじに似ていた。
ヴェーダへのリンクルームで、ティエリアは体を丸くして、ヴェーダとアクセスしていた。
イノベイターある彼は、ヴェーダと直接リンクができる。
そうなるように創られているのだ。
体の構造とかは他の人間と変わらないが、脳量子波がヴェーダのリンクルームにいると使える。
他のイノベイターたちも、きっとこうしてリンクができるだろう。けれど、今それを行えるのはティエリアただ一人である。
意識体となって、ヴェーダの中で揺蕩うこともできるが、そうなるには肉体を捨てなければならない。まだガンダムマイスターとしての責務がある以上、肉体を捨てる選択肢はない。
それは、まるで母の揺り籠にいるような、母体の羊水に漂っているような。
不思議にとても安心できる心地を味わうことができた。
どんな不安も払拭できる。それだけの価値がヴェーダにはあった。
「よ。まだ出てこないのか?」
浅い眠りを起こされて、ティエリアは閉じていた目を開けた。
紅玉の瞳は、今はヴェーダとアクセスしているために金色の輝いていた。それがイノベイターの証でもあった。
「何か用ですか」
リンクルームの外にいるだろう、ロックオンに無粋だとばかりに声をかけた。
「いや、お前さんがずっと出てこないもんだから。ちょっと心配して」
ティエリアはヴェーダとのアクセスを切った。ふわりと宙を蹴って、リンクルームの外に出ると、困った顔のロックオンが心配そうにそこに佇んでいた。
「ヴェーダとアクセスしていただけだ。心配するようなことは何もない」
「それならいいんだが」
ティエリアの紫紺の髪が、重力のない宇宙でふわふわと浮いていた。トレミーには人工重力を設定している箇所が多いが、リンクルームは除外されていた。
「お前さん、何かあると、このリンクルームに閉じこもるから。ちょっと心配になるだろ」
「心配するとようなことは何も起きていない。全て円滑だ」
「ならいいんだが」
ティエリアは、ヴェーダとアクセスしてその情報の波にさらわれながら、こうしてリンクルームで過ごすのが好きだった。ヴェーダとアクセスしていれば、何もかも忘れることができた。非現実的な世界。それがヴェーダだ。
「腹減ってないか?一緒に食堂にいこう」
「あなたがそう言うなら」
ただ一人、ヴェーダと同じほどにティエリアの中で存在価値が大きくなってしまった、ロックオンに誘われて、否ということはない。
ふわりと浮いたピンクのカーディガン。漂う紫紺の髪。紅玉によく似た宝石のような瞳。どれをとっても、ロックオンにはいつものティエリアに見えるが、リンクルームから出てきたティエリアはどこか人を寄せ付けない雰囲気がある。
元々、ティエリアは孤独を孤独とも感じず、一人でいることが多かった。ガンダムマイスターが四人そろっても、同じ行動をとろうとはせず、協調性に欠けていた。それは刹那にもいえることだ。年少組の二人は、構うなとばかりにオーラを出して、人を寄せ付けなかった。
そんなティエリアが変わったのは、ロックオンのせいだろう。
ヴェーダに人間になってはいけないと言われていたのに、ロックオンを愛して人間になってしまった。喜怒哀楽を覚え、感情を外に出すことを覚えた。
だが、今はそれでいいと思う。人工的に生み出された命でも、その人生を謳歌することは許されるだろう。ガンダムマイスターである節度をもった範囲内でなら。
「ジャボテンダーどうした?」
いつもティエリアが持っているジャボテンダーの抱き枕がないのを、ロックオンが不思議そうに見ていた。
「ジャボテンダーさんは、今日はお休みです」
ロックオンと会話をしていくうちに、孤独を愛する雰囲気は消えて、いつものティエリアがやってくる。面白おかしく、純粋なまでに無垢で、そして愛らしい。
「ま、食堂いこうぜ。ここで話すのもなんだし」
「はい」
ティエリアの漂う紫紺の髪を、ロックオンは手ですいて、自分の元にくるようにティエリアの腰に手を伸ばす。
ティエリアは、困ったような顔をした後、ロックオンのされるままに部屋を出るのであった。
ヴェーダへのリンクルームで、ティエリアは体を丸くして、ヴェーダとアクセスしていた。
イノベイターある彼は、ヴェーダと直接リンクができる。
そうなるように創られているのだ。
体の構造とかは他の人間と変わらないが、脳量子波がヴェーダのリンクルームにいると使える。
他のイノベイターたちも、きっとこうしてリンクができるだろう。けれど、今それを行えるのはティエリアただ一人である。
意識体となって、ヴェーダの中で揺蕩うこともできるが、そうなるには肉体を捨てなければならない。まだガンダムマイスターとしての責務がある以上、肉体を捨てる選択肢はない。
それは、まるで母の揺り籠にいるような、母体の羊水に漂っているような。
不思議にとても安心できる心地を味わうことができた。
どんな不安も払拭できる。それだけの価値がヴェーダにはあった。
「よ。まだ出てこないのか?」
浅い眠りを起こされて、ティエリアは閉じていた目を開けた。
紅玉の瞳は、今はヴェーダとアクセスしているために金色の輝いていた。それがイノベイターの証でもあった。
「何か用ですか」
リンクルームの外にいるだろう、ロックオンに無粋だとばかりに声をかけた。
「いや、お前さんがずっと出てこないもんだから。ちょっと心配して」
ティエリアはヴェーダとのアクセスを切った。ふわりと宙を蹴って、リンクルームの外に出ると、困った顔のロックオンが心配そうにそこに佇んでいた。
「ヴェーダとアクセスしていただけだ。心配するようなことは何もない」
「それならいいんだが」
ティエリアの紫紺の髪が、重力のない宇宙でふわふわと浮いていた。トレミーには人工重力を設定している箇所が多いが、リンクルームは除外されていた。
「お前さん、何かあると、このリンクルームに閉じこもるから。ちょっと心配になるだろ」
「心配するとようなことは何も起きていない。全て円滑だ」
「ならいいんだが」
ティエリアは、ヴェーダとアクセスしてその情報の波にさらわれながら、こうしてリンクルームで過ごすのが好きだった。ヴェーダとアクセスしていれば、何もかも忘れることができた。非現実的な世界。それがヴェーダだ。
「腹減ってないか?一緒に食堂にいこう」
「あなたがそう言うなら」
ただ一人、ヴェーダと同じほどにティエリアの中で存在価値が大きくなってしまった、ロックオンに誘われて、否ということはない。
ふわりと浮いたピンクのカーディガン。漂う紫紺の髪。紅玉によく似た宝石のような瞳。どれをとっても、ロックオンにはいつものティエリアに見えるが、リンクルームから出てきたティエリアはどこか人を寄せ付けない雰囲気がある。
元々、ティエリアは孤独を孤独とも感じず、一人でいることが多かった。ガンダムマイスターが四人そろっても、同じ行動をとろうとはせず、協調性に欠けていた。それは刹那にもいえることだ。年少組の二人は、構うなとばかりにオーラを出して、人を寄せ付けなかった。
そんなティエリアが変わったのは、ロックオンのせいだろう。
ヴェーダに人間になってはいけないと言われていたのに、ロックオンを愛して人間になってしまった。喜怒哀楽を覚え、感情を外に出すことを覚えた。
だが、今はそれでいいと思う。人工的に生み出された命でも、その人生を謳歌することは許されるだろう。ガンダムマイスターである節度をもった範囲内でなら。
「ジャボテンダーどうした?」
いつもティエリアが持っているジャボテンダーの抱き枕がないのを、ロックオンが不思議そうに見ていた。
「ジャボテンダーさんは、今日はお休みです」
ロックオンと会話をしていくうちに、孤独を愛する雰囲気は消えて、いつものティエリアがやってくる。面白おかしく、純粋なまでに無垢で、そして愛らしい。
「ま、食堂いこうぜ。ここで話すのもなんだし」
「はい」
ティエリアの漂う紫紺の髪を、ロックオンは手ですいて、自分の元にくるようにティエリアの腰に手を伸ばす。
ティエリアは、困ったような顔をした後、ロックオンのされるままに部屋を出るのであった。
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