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相合傘

ポツリ、ポツリ。
天空から雫が降り注ぐ。
さっきまでお日様は燦燦とてって、少し暑いくらいの天気だっというのに。今日出かける前に見たニュースでは、一日中晴れで快晴、雨は0%という予報だった。
所詮天気予報。外れるときだってあるんだなぁと、フェルトは大きく溜息をついた。

せっかく、かわいい服を見つけて買ったばかりだというのに。
手に持った荷物を持つ手に、ぎゅっと力をこめる。
いやだなぁ。濡れて帰るのは。
どこかで雨宿りしようかと思ったけれど、雨が酷くなる前に帰ろうとフェルトは思い立った。
そのまま、駆け出していく。
信号待ちのところで、雨が本格的に降り始めてどしゃぶりになって、フェルトは地面を見つめた。

「あーあ。せっかく、買ったばかりなのに」

すると、すいっと、隣にいた人が傘をさしてくれた。

「え?」

よくよく見るまでもない。刹那だった。

「いつから?」
「さっき、交差点ですれ違った時から」

傘はひとつ。その中にフェルトは躊躇いもなしに入ると、刹那を見上げた。ルビーのように赤い目は、信号の色が変わるのをずっと見つめている。
ああ、こうしてみるとやっぱりかっこいいなと、フェルトは頬を赤らめる。
刹那は、そのまま沈黙している。
気恥ずかしくて、フェルトも沈黙したままだ。

「一緒に、連れていけばよかったのに」
「え」

刹那がもらした言葉に、彼を仰ぎ見た。

「買い物くらい、つきあう」

ぽつりと、ぶっきらぼうに放たれた言葉。刹那はいつもの赤いスカーフを首に巻いて、信号が変わったのを確認すると歩きだした。
それに、一歩遅れてフェルトが続く。

「ううん、いいの。一人で買い物したかったから。刹那に、あとで着て見せようと思ってたの」

少女の淡い心は、喜びでいっぱいだった。
優しい刹那。
誰もがうらやむような、青年。凛々しく、そして孤高で強く。
だから、フェルトも惹かれた。彼に。

「そうか」

刹那は、フェルトの手から重そうなその荷物を奪うと、傘をさしていない左手にもってしまった。
ほら、こんなにも優しい。
言葉はぶっきらぼうで、いつも何を考えているのか分からなくて、黙していることが多いけれど。
フェルトは、雨がザーザー降る中、にっこりと笑って、刹那が傘をもつ手に、手を重ねるのであった。


 

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