苺と刹那(3期)
じっ。
まるで、昔のティエリアがそうしていたように、刹那のトレイにのせられた、砂糖のかけられた甘そうな苺を食い入るように見るめるフェルト。
凝視している。
あまり多くはないが、それでも二人で会話していたのだが、夕飯に苺がついてきたのを知って、フェルトは苺を見つめ続けた。
「・・・・欲しいのか?」
ぶんぶんと、フェルトは首を横に振る。
ティエリアと違い、感情を素直すぎるほどに露にできないフェルトは、恥ずかしくなって頬を赤らめた。
「遠慮することはない」
「ううん、違うの」
少し離れた席では、昔のように、ニールの分まで苺を頬張る制服姿のティエリアがいた。
至福らしい表情を浮かべている。
あんな風に、素直すぎるのもあれかと、刹那も思う。
あそこまでいくと、フェルトまで生態が謎な人物になってしまうではないか。
かのティエリアは、ぶんとジャボテンダーを昔のように振りかざして、それをロックオン、ニールの顔にめり込ませていた。
嗚呼、愛とは恐ろしいものだと、あの二人を見ていると時に思う。
「ただね。苺の真っ赤な色が、刹那の瞳みたいだって、見とれてた、だけだから」
自分の分の苺をフォークにさして、一口。
「甘いわ」
「そうか。俺の分もやる」
フェルトの言葉に、刹那は微笑んだ。
昔、戦場では血の色だと罵られた、この赤。
ティエリアも同じような色をしているが、あちらはオレンジの色が明るいガーネット。
鳩の血の色とされる、ピジョンブラッドのルビーの瞳をもつ刹那は、自分の瞳の色が時折嫌いになる。まるで、殺してきた人間の血が、瞳に凝縮しているような錯覚を覚えて。
少し、子供っぽく笑う刹那に胸をときめかせて、フェルトが刹那にもらった苺を、結局食べてしまうのであった。
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