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院生時代の部屋 雪だるま

12月の終わり。

「浮竹、雪が積もったよ!」

「え、本当か!?」

浮竹は南方の生まれなので、瀞霊廷に来て雪を見るのも始めてだった。1回生の時、空から冷たいものが降ってきて、ずっと凍った雨だと思っていた。

京楽が教えてくれた。

「これは雪っていうんだよ」

積もるのも初めてだった。

ガラリとベランダに続く窓を開ければ、身を切るような寒さと共に、一面が白銀の世界だった。

「雪ダルマを作ろう」

「いいよ」

京楽と二人で、院生の服の上から防寒具を着こんで、耐水性の手袋をして、雪をかき集めて雪だるまの原型を作った。

スコップで、雪をかけかたりして、丸めていく。

「完成だーーー!」

バケツを頭にかぶらせて、木の葉で目と口をつくり、枝をぶっさして手を作った。

浮竹は、京楽が雪だるまの隣に作っていたものを見る。

「かわいいなぁ」

雪兎だった。

「君のほうがかわいいよ。こんなことで夢中になる君がかわいい」

「な、何もでないぞ」

「うん」

変態京楽は、たまに変態でなくなる。今みたいに。

京楽は、雪兎を2つ作った。

「これ、僕と浮竹ね」

「じゃあこの雪玉ルマは?」

「山じいかな」

「先生にしては、太ってるな」

くすくす笑いあっていたが、肺が痛んできた。

「すまない、発作が起きそうだ・・・部屋に帰らないと」

京楽は、浮竹を抱き上げて瞬歩で部屋まで戻った。

肺の発作用の薬を飲んで、なんとか咳込むことも血を吐くこともなかった。

だが、長時間寒い外で雪遊びをしていたせいか、熱が出てきた。

「はぁ・・・・自分の体の弱さがいやになる」

「解熱剤飲んで横になっていれば、熱も下がるよ」

「今日のお前は優しいし、変態じゃないな・・・・珍しい」

「僕はいつでも紳士だよ!」

すたっと立って、懐から浮竹のパンツを取り出すと、それを頭に被った。

「ああ・・・・・お前は、そのほうが安心する」

変態京楽であることに安心するあたり、浮竹もかなり毒されていた。

「ん・・・・眠くなってきた。少し寝る」

睡魔に襲われながらも、雪遊びは楽しくて、熱にを出したことも気にならないほどだった。

次に起きると、夕方だった。

粥を、京楽はもってきてくれた。

まだ、熱は完全に下がっていない。食欲はなかったが、薬を飲むために半分は残してしまったがなんとか食べた。

もう一度、肺の薬と共に解熱剤を飲んだ。

「次に起きる時は、熱が下がっていたらいいな・・・・・」

次に起きると、朝だった。早朝だ。

日差しは冬のわりにはぽかぽかしていて、ベランダに出るといつもと同じ景色が広がっていた。

「ああ・・・・雪だるまもみんな、溶けてしまったのか」

少し残念に思った。

でも、京楽は雪兎を冷凍庫に入れて、保存していた。

「雪うさぎならあるから」

「ああ、本当だ。かわいいな」

「かわいいのは浮竹だよ。今日もかわいい・・・・・・(*´Д`)ハァハァ」

一人くんくんと臭いをかいでくる変態京楽を放置して、学院に登校する準備をする。雪だるまを作った日は土曜の休みだった。日曜は熱を出して寝ていた。

「今日は、斬り合いの授業があるのか」

切り合いといっても、刃をつぶした剣だ。

打撲くらいの怪我は負ってしまうことはあるだろうが、血を流すようなことはない。

念のためにと、4番隊の隊長がくるらしかった。

浮竹もたまにお世話になる、卯ノ花隊長だった。

卯ノ花隊長には謎が多い。護廷13隊ができた頃からのメンバーだという。だが、山じいのように老けてはおらず、若い姿を保っていた。

「今日の切り合い斬り合いは、本気でいくからな」

「僕だって負けないよ」

切り合いの授業になった。浮竹と京楽はペアだった。二人は、己たち二人以外では力の差がありすぎて、試合にさえならないのだ。

15分ほど切り合いを続けていて、ふと汗で道場の板が滑った。

キンキンカキン。刃をつぶした刀で戦っていたが、滑った調子で受け損ねて、肩から切られる形になった。

「そこまで!勝者京楽!」

「くそ・・・・」

全身に汗をかいていた。12月だというのに。

本気の切り合いは、死神になったときの命をかける戦いの代わりになる。

京楽のつぶれた刃が肩にくいこんで、酷い痣になっていた。

「なかなかの腕でした。いずれ、護廷13隊の隊長になるかもしれませんね」

そう言って、卯ノ花はが痣を回道で癒してくれた。

完全ではないので、湿布をはられた。

切り合いの時はあんなに嬉しそうな顔をしていたのに、試合が終わったとたん、京楽の表情が変わる。

「大丈夫?痛くない?」

「ああ、大分回道で癒してもらったから。痣も薄くなってる。数日のうちには消えるさ」

「ああ、もう僕のバカバカバカ。浮竹の柔らかですべすべのお肌に傷を負わせるなんて」

「本気で斬り合ったんだ。それくらい、平気だろう?」

「でも・・・・・」

「ええい、男がめそめそするな」

授業が終わり、寮の自室まできた。

京楽を抱き締めて、キスをしてやると、京楽は浮竹をベッドに押し倒して、院生の服を少しだけはだけさせて、湿布のはっている場所に口づけてきた。

「早く治るといいね」

「ああ」

女ではないのだから、例え傷跡が残ってもどうってことはないのだが、京楽は心配性だ。念のため、京楽の名で4番隊の席官を呼んで、再び回道をかけてもらうと、薄くなりつつあった痣は綺麗に消えてしまった。

「よかった・・・・・」

京楽は、心底ほっとしていた。

「その、京楽の我儘ですみません」

浮竹は、4番隊の席官に謝った。

すると、4番隊の席官は、こういう。

「4番隊は、他の隊と違って危険手当が出ないから、給料が少ないんだ。今回のこの回道で、1年分の金をもらった。ありがたいことだよ」

「京楽のやつ・・・・・」

金をかけすぎだ。

まぁ、みんなハッピーエンドのようなのでいいかと思う、浮竹であった。





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