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黒猫と白猫の亜人11

市場で、魔王の浮竹と幽鬼の京楽と出会う。

「元気にしてた?」

『前に会って、2週間も経ってないだろう?』

「ああ。でも、2週間はけっこう長いぞ?」

『そうかな?すぐだと思うけど』

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、猫の亜人である京楽と浮竹とは時間の流れが違うようにかんじれるらしい。

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、時間が経つのなどあっという間に感じれた。

逆に浮竹と京楽は2週間は長く感じれた。

ふと、浮竹が串焼きを4人分買ってきた。

「ここの市場の串焼き、うまいんだ。魔王の俺と幽鬼の京楽もどうぞ」

『ありがとう』

『ああ、本当においしいね。人間の世界の食べ物はおいしいのが多いから』

「もう一本食うか?」

『いや、気持ちだけでいい。さて、散歩も終わりだ。京楽、行くぞ』

『はぁい。君たち、また会おうね?』

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、テレポートの魔法で魔王城まで帰還してしまった。

京楽は、追加の串焼きを食べていた。

「京楽、もう一本食うか?」

「うん」

もぐもぐと串焼きを食べながら、浮竹と京楽は魔王の住んでいる城ってどんなところだろうと思うのであった。

------------------------------------------------

 「貧民街で、子供が消えている?」

「そうなのです。浮竹殿と京楽殿が最近貧民街に出入りしていると聞いたので、何か知っているのではないだろうかと」

ルキアの言葉に、浮竹が渋い顔をする。

「多分、奴隷として売られてしまったんだと思う。俺も、実際子供が一人奴隷商人に連れていかれそうなのを目撃している。その時は京楽が止めてくれたが‥‥黒猫と白猫の亜人に、懸賞金がかかっていて、あまり目立つ動きができないんだ」

「奴隷として売られていくのですか。犯人が誰なのか分かるといいのですが」

「俺と京楽が、囮になろう」

「ちょっと、浮竹?」

「俺たちには懸賞金がかかっている。奴隷商人たちが見過ごすはずもない」

「でも、危険だよ?」

京楽が心配そうな声を出すと、浮竹は京楽を鼓舞する。

「俺たちは、魔法を使えるだろう?」

「そういえばそうだね」

浮竹は、白哉から氷、雷、光の魔法を教えてもらい、魔法士並みの腕になっていた。京楽は風と火の魔法しか使えないが、研鑽を積んで、上位魔法を覚えている。

ちなみに、浮竹は基本の4大属性の魔法は全て上位魔法まで使えた。

「じゃあ、ボクたちが囮になるから、ルキアちゃんは白哉君と一緒に、現場を押さえて。ボクらの身は、監視役としては恋次君が水晶玉で見てくれるそうだから」

こうして、京楽と浮竹は、自分たちを囮として貧民街に赴いた。

白哉のものである証の純金の首輪は外していた。

治安の悪いほうに歩いていくと、早速柄の悪そうな男たちに囲まれる。

「黒猫と白猫の亜人だぁ。金になるぞお」

「あ、お前は教会にいた奴!」

教会で炊き出しの金を懐に入れていた元神官が現れたので、浮竹が叫ぶ。

元神官は、浮竹と京楽に純金の首輪がないことを確認して、忌々しそうに二人を見る。

「よくも、俺の居場所をなくしてくれたな」

「それで、なくなった次は貧民街の子供を奴隷として売り飛ばすんだね。人間として最悪だね」

「う、うるさい!純金の首輪がなくなって朽木家から捨てられた今、お前たちを庇護する者はいない。奴隷として、高値で隣国に売り飛ばしてやる!」

浮竹と京楽は、降参してわざと捕まる。

他の売られるはずの子供と一緒に、地下の牢屋に閉じ込められた。

「うわーんうわーん。おかあさーん」

「おとうさーん」

子供たちは泣きじゃくっていたが、奴隷商人が何かガスなようなものを使って、子供たちを静かにさせた。

浮竹と京楽は、ガスを吸い込まないように風の魔法を使う。

「へへへへ、黒猫と白猫の亜人は目玉が飛び出るような金額がつく。この取引が終わったら、屋敷を建てて遊んで暮らしてやる」

元神官は、実に楽しそうに笑っていた。

そこへ、騎士を連れたルキアと白哉がやってくる。

「全員、できるだけ生きたまま捕縛しろ!どうしても反抗してくる輩は切り捨ててもかまわん!」

ルキアが、剣をもって奴隷商人が有していた用心棒と戦うが、ルキアが圧勝していく。

「くそ、おいお前、こっちにこい!人質だ!」

元神官に、浮竹は乱暴に髪を掴まれて引っ張り出されて、喉に短剣をつきつけられる。

「こいつの命が惜しかったら‥‥‥」

「ファイア」

「あちいい」

元神官の男は、短剣を手ごと燃やされて、短剣を地面に落とす。

「スリープ」

眠りの魔法をかけると、男はあっけなく寝てしまい、その間に他の奴隷商人も用心棒たちも捕まった。

浮竹と京楽は、外していた純金の首輪をはめなおす。

それを見て、浮竹と京楽を売ろうとしていた男たちが青ざめた。

「ひいい、朽木様の猫だあああ」

「嫌だ、死にたくないいい」

純金の首輪をした朽木家の猫に害をなした者は、最悪処刑。

それを知っているので、男たちは一斉に命乞いを始める。

「心配せずとも、殺しはせぬ」

白哉の言葉を聞いて、男たちは安堵する。

「火山地帯の鉱山で、死ぬまで強制労働だ」

「ひいいい、嫌だあああ」

「死ぬのと同じじゃないかああ」

火山地帯の鉱山はよく有毒ガスが出て、長い間いると死んでしまう。そんな場所だった。

「どこに、どの子を奴隷として売ったのか、記録があったらよこせ。記憶を渡したら、減刑してやろう」

「そ、それなら俺の机の中にある!鍵をかけているが、鍵は俺がもっている!渡すから、減刑してくれ!!」

元神官の男が、鍵を騎士に渡す。それを、騎士は白哉に渡した。

「確認してくる」

しばらくしてやってきた白哉は、厳しい顔をしていた。

「取引先の相手は皆コルサス伯爵になっている。あの男は、子供を凌辱して殺し、蝋人形にするとして有名な相手だ。兄の減刑はない。主犯として、ギロチンで処刑だ」

「いやだああああ」

「兄様、コルサス伯爵にも逮捕の用意を」

「ああ。コルサス伯爵の逮捕は、ルキア、兄に任せる」



浮竹と京楽は、他の子供たちと一緒に救出されて、毛布を与えられていた。

「浮竹、髪大丈夫?随分と無理やりひっぱられてた」

「実は、まだちょっと痛い。けっこう毛が抜けた」

「でも、犯人の主犯である元神官の、浮竹を人質にした男、ギロチンで処刑だってさ。他のやつらは火山地帯の鉱山で、死ぬまで強制労働だそうだよ」

浮竹は、暗い顔をする。

「売られていった子は買われた先で凌辱を受けて殺され、蝋人形にされてしまうそうだ」

「浮竹、自分を責めちゃだめだよ」

「でも、もっと早くに子供たちを救出できていれば、被害者も少なかったはずだ」

「今回、発覚しただけでもましさ。このまま野放しにしていたら、もっと被害者が出ていたはずだよ」

「うん、そうだな」

「浮竹、京楽、大丈夫か?」

白哉が、心配そうに寄ってくる。

「ボクたちは大丈夫。それより、売られた子たちの救出を。まだ生きているかもしれない」

「コルサス伯爵の捕縛はルキアに任せた。売られた子をすぐには殺さないそうだ。思っていたよりも、多くの命が助かるかもしれぬ」

「よかった‥‥」

そこで、浮竹はがくりと力尽きる。

「どうしたんだ、浮竹?」

「ああ、安堵して気を失ったみたいだよ。早く家に帰って寝かせてあげなきゃ」

「今回の事件は、兄らがいなければ発覚できなかった。感謝する」

「ボクは当たり前のことをしたまでだよ。浮竹も、起きていればそんなことを言うはずだよ。じゃあ、ボクらはテレポートの魔法で先に帰っておくから」

「分かった」

その後の調べで、コルサス伯爵に20人の子供を奴隷として売ったことが発覚したが、死者は7人で、後の13人は凌辱されていたものの、命は助かったらしい。

白哉が自らの手で、子供たちから凌辱された記憶を消して、親元に返したそうだ。

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