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黒猫と白猫の亜人11

「貧民街で、子供が消えている?」

「そうなのです。浮竹殿と京楽殿が最近貧民街に出入りしていると聞いたので、何か知っているのではないだろうかと」

ルキアの言葉に、浮竹が渋い顔をする。

「多分、奴隷として売られてしまったんだと思う。俺も、実際子供が一人奴隷商人に連れていかれそうなのを目撃している。その時は京楽が止めてくれたが‥‥黒猫と白猫の亜人に、懸賞金がかかっていて、あまり目立つ動きができないんだ」

「奴隷として売られていくのですか。犯人が誰なのか分かるといいのですが」

「俺と京楽が、囮になろう」

「ちょっと、浮竹?」

「俺たちには懸賞金がかかっている。奴隷商人たちが見過ごすはずもない」

「でも、危険だよ?」

京楽が心配そうな声を出すと、浮竹は京楽を鼓舞する。

「俺たちは、魔法を使えるだろう?」

「そういえばそうだね」

浮竹は、白哉から氷、雷、光の魔法を教えてもらい、魔法士並みの腕になっていた。京楽は風と火の魔法しか使えないが、研鑽を積んで、上位魔法を覚えている。

ちなみに、浮竹は基本の4大属性の魔法は全て上位魔法まで使えた。

「じゃあ、ボクたちが囮になるから、ルキアちゃんは白哉君と一緒に、現場を押さえて。ボクらの身は、監視役としては恋次君が水晶玉で見てくれるそうだから」

こうして、京楽と浮竹は、自分たちを囮として貧民街に赴いた。

白哉のものである証の純金の首輪は外していた。

治安の悪いほうに歩いていくと、早速柄の悪そうな男たちに囲まれる。

「黒猫と白猫の亜人だぁ。金になるぞお」

「あ、お前は教会にいた奴!」

教会で炊き出しの金を懐に入れていた元神官が現れたので、浮竹が叫ぶ。

元神官は、浮竹と京楽に純金の首輪がないことを確認して、忌々しそうに二人を見る。

「よくも、俺の居場所をなくしてくれたな」

「それで、なくなった次は貧民街の子供を奴隷として売り飛ばすんだね。人間として最悪だね」

「う、うるさい!純金の首輪がなくなって朽木家から捨てられた今、お前たちを庇護する者はいない。奴隷として、高値で隣国に売り飛ばしてやる!」

浮竹と京楽は、降参してわざと捕まる。

他の売られるはずの子供と一緒に、地下の牢屋に閉じ込められた。

「うわーんうわーん。おかあさーん」

「おとうさーん」

子供たちは泣きじゃくっていたが、奴隷商人が何かガスなようなものを使って、子供たちを静かにさせた。

浮竹と京楽は、ガスを吸い込まないように風の魔法を使う。

「へへへへ、黒猫と白猫の亜人は目玉が飛び出るような金額がつく。この取引が終わったら、屋敷を建てて遊んで暮らしてやる」

元神官は、実に楽しそうに笑っていた。

そこへ、騎士を連れたルキアと白哉がやってくる。

「全員、できるだけ生きたまま捕縛しろ!どうしても反抗してくる輩は切り捨ててもかまわん!」

ルキアが、剣をもって奴隷商人が有していた用心棒と戦うが、ルキアが圧勝していく。

「くそ、おいお前、こっちにこい!人質だ!」

元神官に、浮竹は乱暴に髪を掴まれて引っ張り出されて、喉に短剣をつきつけられる。

「こいつの命が惜しかったら‥‥‥」

「ファイア」

「あちいい」

元神官の男は、短剣を手ごと燃やされて、短剣を地面に落とす。

「スリープ」

眠りの魔法をかけると、男はあっけなく寝てしまい、その間に他の奴隷商人も用心棒たちも捕まった。

浮竹と京楽は、外していた純金の首輪をはめなおす。

それを見て、浮竹と京楽を売ろうとしていた男たちが青ざめた。

「ひいい、朽木様の猫だあああ」

「嫌だ、死にたくないいい」

純金の首輪をした朽木家の猫に害をなした者は、最悪処刑。

それを知っているので、男たちは一斉に命乞いを始める。

「心配せずとも、殺しはせぬ」

白哉の言葉を聞いて、男たちは安堵する。

「火山地帯の鉱山で、死ぬまで強制労働だ」

「ひいいい、嫌だあああ」

「死ぬのと同じじゃないかああ」

火山地帯の鉱山はよく有毒ガスが出て、長い間いると死んでしまう。そんな場所だった。

「どこに、どの子を奴隷として売ったのか、記録があったらよこせ。記憶を渡したら、減刑してやろう」

「そ、それなら俺の机の中にある!鍵をかけているが、鍵は俺がもっている!渡すから、減刑してくれ!!」

元神官の男が、鍵を騎士に渡す。それを、騎士は白哉に渡した。

「確認してくる」

しばらくしてやってきた白哉は、厳しい顔をしていた。

「取引先の相手は皆コルサス伯爵になっている。あの男は、子供を凌辱して殺し、蝋人形にするとして有名な相手だ。兄の減刑はない。主犯として、ギロチンで処刑だ」

「いやだああああ」

「兄様、コルサス伯爵にも逮捕の用意を」

「ああ。コルサス伯爵の逮捕は、ルキア、兄に任せる」



浮竹と京楽は、他の子供たちと一緒に救出されて、毛布を与えられていた。

「浮竹、髪大丈夫?随分と無理やりひっぱられてた」

「実は、まだちょっと痛い。けっこう毛が抜けた」

「でも、犯人の主犯である元神官の、浮竹を人質にした男、ギロチンで処刑だってさ。他のやつらは火山地帯の鉱山で、死ぬまで強制労働だそうだよ」

浮竹は、暗い顔をする。

「売られていった子は買われた先で凌辱を受けて殺され、蝋人形にされてしまうそうだ」

「浮竹、自分を責めちゃだめだよ」

「でも、もっと早くに子供たちを救出できていれば、被害者も少なかったはずだ」

「今回、発覚しただけでもましさ。このまま野放しにしていたら、もっと被害者が出ていたはずだよ」

「うん、そうだな」

「浮竹、京楽、大丈夫か?」

白哉が、心配そうに寄ってくる。

「ボクたちは大丈夫。それより、売られた子たちの救出を。まだ生きているかもしれない」

「コルサス伯爵の捕縛はルキアに任せた。売られた子をすぐには殺さないそうだ。思っていたよりも、多くの命が助かるかもしれぬ」

「よかった‥‥」

そこで、浮竹はがくりと力尽きる。

「どうしたんだ、浮竹?」

「ああ、安堵して気を失ったみたいだよ。早く家に帰って寝かせてあげなきゃ」

「今回の事件は、兄らがいなければ発覚できなかった。感謝する」

「ボクは当たり前のことをしたまでだよ。浮竹も、起きていればそんなことを言うはずだよ。じゃあ、ボクらはテレポートの魔法で先に帰っておくから」

「分かった」

その後の調べで、コルサス伯爵に20人の子供を奴隷として売ったことが発覚したが、死者は7人で、後の13人は凌辱されていたものの、命は助かったらしい。

白哉が自らの手で、子供たちから凌辱された記憶を消して、親元に返したそうだ。

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