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黒猫と白猫の亜人3

「魔王が、たまに人間の世界にやってくるそうだ。遭遇することはないと思うが、一応気をつけるがよい」

白哉は、浮竹と京楽にそう言った。

「あの、その赤猫、白哉と恋仲というのは本当か?」

白哉が抱いている、純金の首輪をもたない、真っ黒な首輪をしている恋次は、えっへんと胸をはる。

「俺は、白哉さんのものじゃなくて、白哉さんが俺のものなんだ」

「れ、恋次、黙っていろ」

ゴンと頭を殴られて、恋次は涙目になる。

「白哉さん、動物虐待反対」

「兄は余計なことを言うな。追い出されたいか」

「はい、すんません」

しゅんとなって項垂れる赤猫は、どう見ても白哉の猫で、恋次が白哉を自分のものにしているようには見えなかった。

「浮竹、今日は何する?」

「魚釣りがしたい」

「じゃあ、人型で遊びに行こうか」

「ああ」

「白哉君、釣竿ってある?」

京楽が、赤猫の恋次を抱いたままの白哉に聞く。

「離れの押し入れにある」

「うーん、白哉君ち広いから、どこが離れなのかわかんないよ」

白哉は、目を閉じた。

「釣り竿に、魔力を流しこんでおいた。京楽、兄なら魔力探知でわかるあろう?」

京楽も、目を閉じる。

そう遠くない場所に白哉の魔力を感じて、目をあける。

「じゃあ、釣竿借りていくね。いこう、浮竹」

「ああ。えさは?」

「それは、市場で買っていこう」

「どこまで釣りに出かけるんだ?」

「もちろん、海まで!」

浮竹は、人の姿で翡翠色の瞳を見開く。

「海!見たことがない。近いのか?」

「ううん、馬車で3日かかるよ」

浮竹ががっかりするが、京楽が釣竿を手に、京楽に耳打ちする。

「ボクはね、魔法大学に昔通っていたんだ。一通りの魔法なら使える。テレポートの魔法で、海までいくよ?」

浮竹は驚く。

「猫の亜人でも、魔法大学に通えるのか?」

「当り前だよ。猫の亜人は、一応獣人族ってことになってるから」

「そうか‥‥」

京楽は、市場で魚のえさになる虫を購入して、市場の路地にいく。

「ボクの手、しっかり握っててね。移動するから」

浮竹は、言われた通り京楽の手を握った。思いっきり握ったので、ちょっと痛かった。

「わぁ、海か、これが!」

「そうだよ」

「水がしょっぱい!」

「海だからね?」


一方、朽木家では、

人の姿をとった、赤猫の恋次が、浮竹と京楽の心配をしていた。

「あの、浮竹さんと京楽さんっての、黒猫と白猫の亜人でしょう。黒猫の亜人は黒ミサに臓器を使われるし、白猫の亜人は綺麗だから奴隷にされる、大丈夫かな?」

「私のものだという刻印の入った純金の首輪をしている。私の猫に害をなした者は、最亜処刑されるから、大丈夫であろう」

「そうだと、いいんすけど」


海で、岩場で二人はのんびりと釣竿を垂らす。

数分して、京楽の竿に魚がかかった。

「わ、大きい」

「俺も手伝おう」

二人して釣り上げると、立派な真鯛だった。

「今日、白哉君に頼んで、シェフに調理してもらおう」

「おや珍しい。黒猫と白猫の亜人じゃねぇか」

ガラの悪そうな、3人組が浮竹と京楽を囲む。

海辺の近くに売春宿があり、そこで働いている男たちだった。

「こっちの白猫、すごくべっぴんだ。男娼にしたらもうかりそうだな」

「う、頭が痛い‥‥」

浮竹は、消してもらった記憶が戻りそうで頭痛を訴える。

「消えてよ。ランダムテレポート」

二人を囲んでいた男たちは、怒った京楽の放ったランダムの場所に強制転移される魔法で、王国の王宮にテレポートさせられた。

今頃、無断侵入の罪で捕まっているだろう。

「浮竹、大丈夫?」

「ああ。あ、俺の釣竿に魚かかってる!」

浮竹は、喜んだ表情で釣竿を引っ張る。

これまた、立派な真鯛が釣れた。

その次は、タコが釣れた。

「浮竹、しんどくない?」

「何がだ?」

「その、頭痛とかどう?」

「さっきの男たちに囲まれていた時はあったが、今は大丈夫だ」

「そう」

「にゃあ」

「ん?」

一匹の野良らしき子猫がやってくる。

「にゃああ(魔王様にそっくりなのだ)」

「ん?魔王様?」

「にゃん?(知らないの?魔王様。白い髪に翡翠の瞳で、そっちの白猫の亜人のお兄ちゃんにそっくりで超絶美人だよ)」

「京楽、魔王って?」

「ああ、また今度教えるよ」

野良の子猫は、浮竹が釣った小魚を食べた。

「にゃあああ(ごちそうさま。魔王様に会ったら、仲良くしてもらうといいよ?)」

「魔王なぁ‥‥‥」

浮竹は少しだけ興味をもったようだが、今は釣りの方が楽しくてそっちに意識がいく。

浮竹が次を吊り上げると、海藻が釣れて、浮竹はがっくりする。

「ちょっと、釣り場かえようか」

真鯛の入ったバケツを手に、京楽と浮竹は釣竿をもって移動する、

「ここ、何気な穴場なんだよね」

「いっぱい釣るぞーー」

二人はたくさんの魚を釣って、白哉におみやげだと言って白哉の家に帰ってきた。

「真鯛は、ボクと浮竹が人の姿で食べるから、シェフに好きなように調理させて?」

「分かった。浮竹、兄は楽しかったか?」

「白哉、海をはじめてみたんだ!それから、魚がばんばん釣れて‥‥‥」

楽し気に浮竹が話しだす。

京楽も白哉も、楽し気に聞いた。

「白哉さん。今夜、いいですか?」

キャットタワーから降りてきて、人の姿になって白哉に抱きついてくる恋次を、白哉はひっぺがして蹴り転がす。

「浮竹と京楽の前で盛るな」

「いいじゃないっすか」

「猫神様に報告するぞ」

「うわ、それだけは勘弁してください」

涙を滲ませる赤猫の恋次を不思議そうに、浮竹と京楽は見る。

自分たちの主である白哉と恋仲。

本当なのか嘘なのか分からないが、白哉は恋次のことが嫌いではないようだった。


「兄様、食事の準備ができました。京楽殿と浮竹殿の分もあります」

「ルキア、俺の分は?」

「兄様に手を出す不届き者に食わせるものなどない」

「ひでえええ」

うなだれる恋次に、浮竹は自分の分の真鯛のポワレをあげた。

「うう、浮竹さんでしたっけ。あんた、いい人ですね」

「ちょっと、恋次君、ボクの浮竹にあんまり話しかけないでね。赤猫の菌がうつる」

京楽がそう言うと、もっともだとばかりに白哉も頷く。

「ぐすん。猫になって、キャットフード食べてくるからいいもん」

赤猫の恋次は、猫の姿になってキャットフードの置いてある広間に消えてしまった。

「京楽、俺も後でキャットフード食べたい」

「ああ、白哉君ちのキャットフードはおいしいからね」

二人は、人の食事をきちんと終えてから、猫の姿になってキャットフードを食べるのであった。


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