黒猫と白猫の亜人7
「白哉さん、浮竹さんひどいんすよ。眠れないって家に訪れたら、木材で頭を殴って気絶させて朝まで放置された」
「そうか。それはよかったな」
「白哉さん酷い!」
泣き真似をする恋次を放置して、白哉は貴族としての責務の仕事をしていた。
「白哉さーん、聞いてます?」
「今忙しいのだ。浮竹と京楽にかまってもらえ」
「今年も、領地を視察するんすか?」
「そのつもりだ」
白哉は、たくさん積み上げられている書類に目を通していく。
「白哉さん、また見合いの話が出てるそうですね」
「断った。私には恋次がいるからと」
「白哉さん!」
抱きついてくる白哉を手でどけて、白哉は落ちた書類を拾い上げた。
「猫族の亜人しか愛せないと言っておいたので、しばらく見合いの話はないであろう」
「白哉、書類仕事を手伝おうか?」
浮竹が入ってきた。京楽は、その付き添いのようであった。
「兄は、計算が得意であったな。この書類を頼む」
「ああ、任せろ」
「お、こっちの書類魔法学校のことについてだね。これなら、ボクも役に立つかも」
「では、その書類は京楽、兄に頼む」
京楽と浮竹は、てきぱきと仕事をしだす。
「俺も、仕事を‥‥‥‥」
「兄は、この国の文字をまだ読めないのであろう。邪魔なので、猫神様の神官として、私の代わりに今年も我が領地は豊作であると報告でもしておけ」
猫神様は、猫と猫族の亜人の祖とされているが、豊穣を司る神でもあった。
神殿が王国にあり、恋次はそこに所属する神官である。猫神様の声を聞くことができると、神殿では一目を置かれる存在であるが、白哉の前ではただの赤猫の亜人だった。
「白哉、根を詰めすぎではないか?少し休憩しよう」
「浮竹、兄が茶をいれてくれ。兄のいれる茶が一番うまい」
「分かった」
「じゃあ、ボクは茶菓子の用意でもするね?」
「俺は‥‥」
何かすることはないかと探している恋次は、はっきり言って邪魔だった。なので、白哉はきっぱり告げる。
「恋次、兄は邪魔だ」
「うわあああん」
泣きながら去っていく恋次を、白哉は放置する。夕飯の頃になると、またひょっこり現れると分かっているからだ。
「白哉、恋次君泣いていたぞ。放置していていいのか?」
「あれは、放置プレイをしても平気なのでな」
「ちょっとかわいそうだけど笑える」
京楽は、クスクスと小さく笑う。
「白哉の愛を独り占めしようとするから、ああなるんだろ?」
浮竹の言葉に、白哉はやや顔を赤くする。
「なんだかんだといって、うまくいってるみたいだね」
京楽は安堵する。
京楽は、白哉の幼い頃を知っている。
もっと、尖っていて、冷たい目をした子だった。妻を迎えて大分変わった。その妻が亡くなって、一時は少し荒れたが、今は優しい。
京楽も浮竹も、そんな白哉だから主と認めて、庇護下にいる。
「そろそろ夕飯の時間だ。食堂に行こう」
白哉は、京楽と浮竹を伴って食堂に行くと、白哉の席の一番近くに恋次が座っていた。
「ほら、この通り、大丈夫であろう?」
そんな恋次を見て、白哉だけでなく京楽も浮竹も笑う。
笑われる意味が分からなくて、恋次は首を傾げるのであった。
「あ、この鴨のソテーうめぇ」
恋次は遠慮なしにコース料理を食べていく。
白哉は、自分の分と京楽と浮竹の分以外に、恋次の分を作らせておいた。
ルキアは、巫女姫として王宮のほうに出ている。しばらく帰ってくる予定はなかった。
京楽と浮竹は、食事後に猫の姿になり、互いに毛づくろいをする。
それを恋次はじっと見て、ブラシを手に白哉の元まで行く。
「白哉さん、毛づくろいもどきのブラッシングしてください」
白哉がブラッシングすると、生え変わり時期なので沢山毛が抜けた。
「‥‥‥洗うか」
「え」
恋次は、猫の姿で洗われるのが大嫌いだった。
白哉は京楽と浮竹を呼び、何かを話した。すると二人は人の姿になって、がしっと恋次を捕まえて風呂場に連行する。
「にぎゃああああああああ」
恋次が泣き叫びながら洗われる。
京楽と浮竹も、ついでだと猫の姿になって洗われた。
薬用の猫シャンプーで、いい匂いがした。
恋次は、バスタオルでふかれる前に全身をぶるぶるふるわせて、白哉に水をかける。
彼なりの嫌がらせであった。
「私も、風呂に入ってくる」
「あ、俺も」
「兄はさっき洗ってやったばかりだろう」
白哉との混浴を拒否されて、恋次はしょんぼりする。
そんな恋次をルキアが抱き上げた。
「ル、ルキア!?王宮にいたんじゃねぇのか?」
「2週間ばかり、休暇をいただいた。兄様の領地の視察に同行するつもりだ」
ルキアは、すっかり綺麗になって毛皮がふかふかになっている恋次に頬ずりする。
「この毛皮と肉球がたまらぬ」
「ぎゃああああああああああ」
遠慮など全くなしで触られている恋次を見て、京楽と浮竹は逃げ出して、半野良の猫たちが集う猫の広場にきて、毛づくろいをしだす。
「毛皮、ふかふかになったけど、ちょっと違和感あるな」
「ルキアちゃんだけには、猫の姿の時、気をつけよう」
「ああ、そうだな」
恋次には生贄ならぬ猫贄になってもらった二人は、そのまま猫小屋に入って眠るのであった。
次の日、市場にきていた。
他の白哉の猫たちが、二人の青年を囲んでいた。
「あ、ボクらに瓜二つだね」
「魔王、らしいぞ」
「近寄らないのが吉だね」
「ああ」
猫の姿で、京楽と浮竹は、魔王らしい人物をちらりと見て、通り過ぎていくのだった。
「そうか。それはよかったな」
「白哉さん酷い!」
泣き真似をする恋次を放置して、白哉は貴族としての責務の仕事をしていた。
「白哉さーん、聞いてます?」
「今忙しいのだ。浮竹と京楽にかまってもらえ」
「今年も、領地を視察するんすか?」
「そのつもりだ」
白哉は、たくさん積み上げられている書類に目を通していく。
「白哉さん、また見合いの話が出てるそうですね」
「断った。私には恋次がいるからと」
「白哉さん!」
抱きついてくる白哉を手でどけて、白哉は落ちた書類を拾い上げた。
「猫族の亜人しか愛せないと言っておいたので、しばらく見合いの話はないであろう」
「白哉、書類仕事を手伝おうか?」
浮竹が入ってきた。京楽は、その付き添いのようであった。
「兄は、計算が得意であったな。この書類を頼む」
「ああ、任せろ」
「お、こっちの書類魔法学校のことについてだね。これなら、ボクも役に立つかも」
「では、その書類は京楽、兄に頼む」
京楽と浮竹は、てきぱきと仕事をしだす。
「俺も、仕事を‥‥‥‥」
「兄は、この国の文字をまだ読めないのであろう。邪魔なので、猫神様の神官として、私の代わりに今年も我が領地は豊作であると報告でもしておけ」
猫神様は、猫と猫族の亜人の祖とされているが、豊穣を司る神でもあった。
神殿が王国にあり、恋次はそこに所属する神官である。猫神様の声を聞くことができると、神殿では一目を置かれる存在であるが、白哉の前ではただの赤猫の亜人だった。
「白哉、根を詰めすぎではないか?少し休憩しよう」
「浮竹、兄が茶をいれてくれ。兄のいれる茶が一番うまい」
「分かった」
「じゃあ、ボクは茶菓子の用意でもするね?」
「俺は‥‥」
何かすることはないかと探している恋次は、はっきり言って邪魔だった。なので、白哉はきっぱり告げる。
「恋次、兄は邪魔だ」
「うわあああん」
泣きながら去っていく恋次を、白哉は放置する。夕飯の頃になると、またひょっこり現れると分かっているからだ。
「白哉、恋次君泣いていたぞ。放置していていいのか?」
「あれは、放置プレイをしても平気なのでな」
「ちょっとかわいそうだけど笑える」
京楽は、クスクスと小さく笑う。
「白哉の愛を独り占めしようとするから、ああなるんだろ?」
浮竹の言葉に、白哉はやや顔を赤くする。
「なんだかんだといって、うまくいってるみたいだね」
京楽は安堵する。
京楽は、白哉の幼い頃を知っている。
もっと、尖っていて、冷たい目をした子だった。妻を迎えて大分変わった。その妻が亡くなって、一時は少し荒れたが、今は優しい。
京楽も浮竹も、そんな白哉だから主と認めて、庇護下にいる。
「そろそろ夕飯の時間だ。食堂に行こう」
白哉は、京楽と浮竹を伴って食堂に行くと、白哉の席の一番近くに恋次が座っていた。
「ほら、この通り、大丈夫であろう?」
そんな恋次を見て、白哉だけでなく京楽も浮竹も笑う。
笑われる意味が分からなくて、恋次は首を傾げるのであった。
「あ、この鴨のソテーうめぇ」
恋次は遠慮なしにコース料理を食べていく。
白哉は、自分の分と京楽と浮竹の分以外に、恋次の分を作らせておいた。
ルキアは、巫女姫として王宮のほうに出ている。しばらく帰ってくる予定はなかった。
京楽と浮竹は、食事後に猫の姿になり、互いに毛づくろいをする。
それを恋次はじっと見て、ブラシを手に白哉の元まで行く。
「白哉さん、毛づくろいもどきのブラッシングしてください」
白哉がブラッシングすると、生え変わり時期なので沢山毛が抜けた。
「‥‥‥洗うか」
「え」
恋次は、猫の姿で洗われるのが大嫌いだった。
白哉は京楽と浮竹を呼び、何かを話した。すると二人は人の姿になって、がしっと恋次を捕まえて風呂場に連行する。
「にぎゃああああああああ」
恋次が泣き叫びながら洗われる。
京楽と浮竹も、ついでだと猫の姿になって洗われた。
薬用の猫シャンプーで、いい匂いがした。
恋次は、バスタオルでふかれる前に全身をぶるぶるふるわせて、白哉に水をかける。
彼なりの嫌がらせであった。
「私も、風呂に入ってくる」
「あ、俺も」
「兄はさっき洗ってやったばかりだろう」
白哉との混浴を拒否されて、恋次はしょんぼりする。
そんな恋次をルキアが抱き上げた。
「ル、ルキア!?王宮にいたんじゃねぇのか?」
「2週間ばかり、休暇をいただいた。兄様の領地の視察に同行するつもりだ」
ルキアは、すっかり綺麗になって毛皮がふかふかになっている恋次に頬ずりする。
「この毛皮と肉球がたまらぬ」
「ぎゃああああああああああ」
遠慮など全くなしで触られている恋次を見て、京楽と浮竹は逃げ出して、半野良の猫たちが集う猫の広場にきて、毛づくろいをしだす。
「毛皮、ふかふかになったけど、ちょっと違和感あるな」
「ルキアちゃんだけには、猫の姿の時、気をつけよう」
「ああ、そうだな」
恋次には生贄ならぬ猫贄になってもらった二人は、そのまま猫小屋に入って眠るのであった。
次の日、市場にきていた。
他の白哉の猫たちが、二人の青年を囲んでいた。
「あ、ボクらに瓜二つだね」
「魔王、らしいぞ」
「近寄らないのが吉だね」
「ああ」
猫の姿で、京楽と浮竹は、魔王らしい人物をちらりと見て、通り過ぎていくのだった。
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