黒猫と白猫の亜人9
猫神祭がやってきた。
人々は猫を神として崇める。無論、猫の亜人もだ。
恋次は猫神様の神官なので、大変そうだった。
ルキアと一緒に領地の視察から帰ってきた白哉の元にくる時間もなく、祭事を行う。
猫神は豊穣を司る神でもあるので、人々は猫神に今年の作物を捧げる。捧げた後、自分たちで調理して食べるのが習わしだった。
ルキアも、巫女姫として猫神様のために舞を披露したりした。
京楽と浮竹はというと。
猫神様の使徒だと崇められながら、呑気に屋台で買い食いしていた。
猫神様の子=猫、もしくは猫の亜人なので、買い食いはただでできる。
「ああ、こんな祭りがずっとあればいいのに」
少し酒を飲んで、ほろ酔い気分の浮竹は、川に流される灯篭を見ていた。
「毎日あっちゃ、ありがたみがないじゃない。猫神様の祭りは、2年に1回で、3日間に渡ってとり行われるからね」
今日はまだ一日目だ。
京楽と浮竹は、酒場に入る。
猫神様の使いだと、ただ酒を飲めた。
浮竹はすぐに酔い潰れてしまったが、京楽は酒豪で、自分と同じ黒猫の亜人である四楓院夜一という女性と酒場で知り合って、飲み比べをした。
結果、京楽が勝った。
「うぬう、もうだめじゃ‥‥‥」
夜一もまた、猫神様の神官というか巫女だった。
猫神様の神社での仕事もせず、酒場を巡り歩いて、飲みまくっているのだという。
「夜一ちゃん、またね」
「おう。京楽といったか。浮竹とやらが起きている明日に、またここの酒場で会おうぞ」
酔いつぶれた浮竹を介抱して、その日は終わった。
次の日、猫神様から神託があったと、人々が噂していた。
白猫の亜人が、来年殿と再来年の豊穣を約束してくれるのだという。
浮竹は白哉の家にこもって、外に出たがらなかったが、ルキアがぜひにと言うので、巫女姫であるルキアと一緒に、舞を舞った。
「浮竹、綺麗だよ」
舞を舞っている最中、天から猫の姿をした神様が降りてきた。
それは、浮竹に宿った。
「神子だ!神子様だ!」
猫神を宿した浮竹は、豊穣の印である黄金の稲穂を人々に授ける。
「ありがたい」
「今年の神子様は白猫の亜人か。美しい」
「来年も、再来年も、豊作を約束しようぞ」
そう言って、浮竹の中から猫神様は消えていった。
「神子様、どうか私の子に祝福を!」
「神子様、我が娘と婚姻を!」
「神子様」
「神子様」
そんな風に求めてくる人々が怖くなって、浮竹は白猫になって、白哉の家まで逃げて帰ってきた。
後から京楽が追い付いてくる。
「浮竹?大丈夫?」
「神子だと‥‥‥偶然俺に猫神様が降りてきただけなのに」
「まぁ、神様だからね。それを宿した者は、神子として敬われる」
「ずっとか?」
「いいや、祭りの間だけだよ」
「そうか、よかった‥‥‥」
浮竹は、心からほっとした。
「そうだ。酒場に行かなきゃ。夜一ちゃんと約束してるんだった」
「昨日の、黒猫の亜人か?」
「うん、そう」
「俺は猫の姿でいく」
「猫の姿なら、神子って分からないね」
浮竹と京楽は、夜一と約束をした酒場までやってきた。
酒場では、夜一の美貌をほめたたえて、男たちが夜一に求婚していた。
「残念ながら、わしは自分より酒に弱い男とは付き合わぬ。付き合いたければ、そこにいる黒猫の亜人の京楽に勝ってからにしてみるがよい」
夜一は、すでに随分と飲んでいた。
猫神祭のせいで、猫賊の亜人が飲み食いした代金はただになるが、赤字にならぬようにこういった店に王家が補助金を出すので、夜一がどれだけ飲もうとも止める者はいなかった。
「兄ちゃん、飲み比べの勝負だ!」
「ずるい、俺が先だぞ」
「俺だ」
「京楽‥‥‥帰っていいか?」
浮竹は、人の姿で赤ワインを一つあけたが、酔ってもうここには居たくないと言い出す。
「白哉んちに帰る」
「ああ、もうちょっとだけ待って」
「さぁ、最後は俺と勝負だ」
人間の男5人と飲み比べの勝負は、京楽の勝利で終わった。
「ひっく。もう酒がないとな?」
夜一が、酒場のマスターの首を締めあげる。
「簡便してください。もう酒がないんです。今日は店じまいだ」
「夜一ちゃん、よければボクたちの家で飲みなおさない?」
浮竹は、また酔いつぶれて寝ていた。
そんな浮竹をおんぶして、夜一を連れて京楽は白哉の家に戻る。
「ほお、白哉坊のところの猫だったのか」
「白哉君とは知り合いなの?」
「ちょっとな」
浮竹を寝かせて、二人はエールを飲んだ。
そんなところに、白哉が帰ってくる。
「おう、白哉坊、元気にしていたか?」
「この化け猫め!出ていけ」
白哉は、実に迷惑そうな顔をしていた。
「わしとお主の仲ではないか」
「誤解を生むような言い方はよせ。京楽、見た目に惑わされてはだめだぞ。この化け猫は、実にもう100年以上生きている」
「うへぇ」
猫賊の亜人の平均寿命は人より少し長くて、120年ほどだった。
この若い見た目で100歳をこしているとは。
京楽は、白哉に迷惑をかけたくないので、エールをありったけ夜一に渡して、引き取ってもらった。
「うーん」
ソファーで、浮竹が目覚める。
「あれ、夜一さんは?」
「帰ってもらった」
「そうか」
浮竹は、大きく伸びをしてあくびをする。
それから、白猫姿になって、白哉の足の上に飛び乗って甘えだす。
「浮竹?」
「浮気者など、知らん」
「ええ、夜一ちゃんとはただ飲んでただけだよ」
「どうだか」
外が騒がしくなった。
なんだと窓から見てみれば.市場で出会ったことのある、魔王とやらが人に囲まれていた。
「神子様‥‥‥」
『だから、違う。俺は‥‥』
「魔王とやら、こっちにこい」
浮竹が、白哉の家の離れの自分たちの家に魔王を入れた。
『ああ、助かった』
『そうだねぇ』
魔王の影から、京楽と瓜二つの人物が出てくる。
『俺は魔王の浮竹十四郎。こっちは、幽鬼の京楽春水』
「姿形だけじゃなくって、名前も俺たちと一緒か。2重存在ってやつか?」
「みたいだね」
魔王の浮竹を、浮竹は興味深そうに見る。一方、幽鬼の京楽は関心がなさそうに、魔王の浮竹だけを見ていた。
『おっと、もうこんな時間か。会議があるので、俺たちは一度戻るな?また今度会おう』
そう言って、魔王の浮竹と幽鬼の京楽は消え去ってしまった。
「なんか、魔王ってスケールでかいね。この王国には遊びにきているようだけど」
「魔王の友人というのも、悪くないかもな」
ぽつりと、浮竹は呟く。
「うん、そうだね」
京楽も頷くのであった。
人々は猫を神として崇める。無論、猫の亜人もだ。
恋次は猫神様の神官なので、大変そうだった。
ルキアと一緒に領地の視察から帰ってきた白哉の元にくる時間もなく、祭事を行う。
猫神は豊穣を司る神でもあるので、人々は猫神に今年の作物を捧げる。捧げた後、自分たちで調理して食べるのが習わしだった。
ルキアも、巫女姫として猫神様のために舞を披露したりした。
京楽と浮竹はというと。
猫神様の使徒だと崇められながら、呑気に屋台で買い食いしていた。
猫神様の子=猫、もしくは猫の亜人なので、買い食いはただでできる。
「ああ、こんな祭りがずっとあればいいのに」
少し酒を飲んで、ほろ酔い気分の浮竹は、川に流される灯篭を見ていた。
「毎日あっちゃ、ありがたみがないじゃない。猫神様の祭りは、2年に1回で、3日間に渡ってとり行われるからね」
今日はまだ一日目だ。
京楽と浮竹は、酒場に入る。
猫神様の使いだと、ただ酒を飲めた。
浮竹はすぐに酔い潰れてしまったが、京楽は酒豪で、自分と同じ黒猫の亜人である四楓院夜一という女性と酒場で知り合って、飲み比べをした。
結果、京楽が勝った。
「うぬう、もうだめじゃ‥‥‥」
夜一もまた、猫神様の神官というか巫女だった。
猫神様の神社での仕事もせず、酒場を巡り歩いて、飲みまくっているのだという。
「夜一ちゃん、またね」
「おう。京楽といったか。浮竹とやらが起きている明日に、またここの酒場で会おうぞ」
酔いつぶれた浮竹を介抱して、その日は終わった。
次の日、猫神様から神託があったと、人々が噂していた。
白猫の亜人が、来年殿と再来年の豊穣を約束してくれるのだという。
浮竹は白哉の家にこもって、外に出たがらなかったが、ルキアがぜひにと言うので、巫女姫であるルキアと一緒に、舞を舞った。
「浮竹、綺麗だよ」
舞を舞っている最中、天から猫の姿をした神様が降りてきた。
それは、浮竹に宿った。
「神子だ!神子様だ!」
猫神を宿した浮竹は、豊穣の印である黄金の稲穂を人々に授ける。
「ありがたい」
「今年の神子様は白猫の亜人か。美しい」
「来年も、再来年も、豊作を約束しようぞ」
そう言って、浮竹の中から猫神様は消えていった。
「神子様、どうか私の子に祝福を!」
「神子様、我が娘と婚姻を!」
「神子様」
「神子様」
そんな風に求めてくる人々が怖くなって、浮竹は白猫になって、白哉の家まで逃げて帰ってきた。
後から京楽が追い付いてくる。
「浮竹?大丈夫?」
「神子だと‥‥‥偶然俺に猫神様が降りてきただけなのに」
「まぁ、神様だからね。それを宿した者は、神子として敬われる」
「ずっとか?」
「いいや、祭りの間だけだよ」
「そうか、よかった‥‥‥」
浮竹は、心からほっとした。
「そうだ。酒場に行かなきゃ。夜一ちゃんと約束してるんだった」
「昨日の、黒猫の亜人か?」
「うん、そう」
「俺は猫の姿でいく」
「猫の姿なら、神子って分からないね」
浮竹と京楽は、夜一と約束をした酒場までやってきた。
酒場では、夜一の美貌をほめたたえて、男たちが夜一に求婚していた。
「残念ながら、わしは自分より酒に弱い男とは付き合わぬ。付き合いたければ、そこにいる黒猫の亜人の京楽に勝ってからにしてみるがよい」
夜一は、すでに随分と飲んでいた。
猫神祭のせいで、猫賊の亜人が飲み食いした代金はただになるが、赤字にならぬようにこういった店に王家が補助金を出すので、夜一がどれだけ飲もうとも止める者はいなかった。
「兄ちゃん、飲み比べの勝負だ!」
「ずるい、俺が先だぞ」
「俺だ」
「京楽‥‥‥帰っていいか?」
浮竹は、人の姿で赤ワインを一つあけたが、酔ってもうここには居たくないと言い出す。
「白哉んちに帰る」
「ああ、もうちょっとだけ待って」
「さぁ、最後は俺と勝負だ」
人間の男5人と飲み比べの勝負は、京楽の勝利で終わった。
「ひっく。もう酒がないとな?」
夜一が、酒場のマスターの首を締めあげる。
「簡便してください。もう酒がないんです。今日は店じまいだ」
「夜一ちゃん、よければボクたちの家で飲みなおさない?」
浮竹は、また酔いつぶれて寝ていた。
そんな浮竹をおんぶして、夜一を連れて京楽は白哉の家に戻る。
「ほお、白哉坊のところの猫だったのか」
「白哉君とは知り合いなの?」
「ちょっとな」
浮竹を寝かせて、二人はエールを飲んだ。
そんなところに、白哉が帰ってくる。
「おう、白哉坊、元気にしていたか?」
「この化け猫め!出ていけ」
白哉は、実に迷惑そうな顔をしていた。
「わしとお主の仲ではないか」
「誤解を生むような言い方はよせ。京楽、見た目に惑わされてはだめだぞ。この化け猫は、実にもう100年以上生きている」
「うへぇ」
猫賊の亜人の平均寿命は人より少し長くて、120年ほどだった。
この若い見た目で100歳をこしているとは。
京楽は、白哉に迷惑をかけたくないので、エールをありったけ夜一に渡して、引き取ってもらった。
「うーん」
ソファーで、浮竹が目覚める。
「あれ、夜一さんは?」
「帰ってもらった」
「そうか」
浮竹は、大きく伸びをしてあくびをする。
それから、白猫姿になって、白哉の足の上に飛び乗って甘えだす。
「浮竹?」
「浮気者など、知らん」
「ええ、夜一ちゃんとはただ飲んでただけだよ」
「どうだか」
外が騒がしくなった。
なんだと窓から見てみれば.市場で出会ったことのある、魔王とやらが人に囲まれていた。
「神子様‥‥‥」
『だから、違う。俺は‥‥』
「魔王とやら、こっちにこい」
浮竹が、白哉の家の離れの自分たちの家に魔王を入れた。
『ああ、助かった』
『そうだねぇ』
魔王の影から、京楽と瓜二つの人物が出てくる。
『俺は魔王の浮竹十四郎。こっちは、幽鬼の京楽春水』
「姿形だけじゃなくって、名前も俺たちと一緒か。2重存在ってやつか?」
「みたいだね」
魔王の浮竹を、浮竹は興味深そうに見る。一方、幽鬼の京楽は関心がなさそうに、魔王の浮竹だけを見ていた。
『おっと、もうこんな時間か。会議があるので、俺たちは一度戻るな?また今度会おう』
そう言って、魔王の浮竹と幽鬼の京楽は消え去ってしまった。
「なんか、魔王ってスケールでかいね。この王国には遊びにきているようだけど」
「魔王の友人というのも、悪くないかもな」
ぽつりと、浮竹は呟く。
「うん、そうだね」
京楽も頷くのであった。
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