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卯ノ花の決意

「あなたは変わりましたね。まぁ、私もなんですが」

卯の花は、早急に建てられた山本元柳斎重国の墓の前まできていた。

本当なら時間をかけて立派な墓建ててやりたいと思っていた京楽と浮竹であったが、暫定的に仮初の墓を建てた。

山本元柳斎重国は、あまり酒を飲まなかった。

茶を好み、茶道教室を開いていた。

なので、酒でも水でもなく茶を墓石に注いだ。

「変わったせいで、あなたはユーハバッハにやられた----------でも、かつての私でも太刀打ちできなかったでしょうね。年を取りすぎたせきいでしょうか・・・平穏になってしまい、私も腑抜けたものです・・・・でも、剣八の名を継ぐ者には、目覚めてほしい----------」

命をかけることになるだろう。

「死剣」卯ノ花八千流。

「私ももうすぐそちらへ参ります。だから、寂しくはないでしょう?----------------」

山本元柳斎重国の墓に、菊をささげた。一番隊の隊花でもある。

真実と潔白。

まさに山本元柳斎重国にふさわしい。

「卯の花隊長じゃないか!」

「これは京楽隊長に浮竹隊長・・・・・・」

「山じいの墓参りかい」

「ええ、まぁそんなものです」

死を告げにやってきた・・・・・そんなことを言ったら、二人は絶対に更木と切りあいになることを止めるだろう。

止められるわけにはいかないのだ。

たとえ、この命が散ることになっても。

「山じい・・・・安らかに。尸魂界は、僕らで守ってみせるから」

「先生・・・俺たちの手で、尸魂界は守ります」

若い。

卯の花はそう思った。

古参の二人であるが、卯の花からみればまだ子供だ。

「先に失礼します」

卯の花は歩き出す。自分の死へむかって。

「卯の花隊長、ちょっと雰囲気かわったかな?」

「なんだか-----------いつもより修羅に近いというか、鋭い切っ先のようだった」

二人とも、隊花である菊を捧げた。

すでにそこには卯ノ花が捧げた見事な菊があった。大ぶりの花で、白かった。

京楽と浮竹は手を繋ぎあった。

山本元柳斎重国の死を無駄にしないように、二人は歩んでいく。

卯ノ花八千流の次は、浮竹十四郎。

連鎖していく死の螺旋。

浮竹はまだその時がくること気づいていない。

「いこう、浮竹」

「ああ」

愛しい京楽と過ごせるのもあと僅か。

それでも、時がきたら浮竹も歩いていく。

死へと。

山本元柳斎重国の死は始まりにすぎない。

二人の隊長が、その後を追うことに、その時はまだ誰も知らなかった。

卯ノ花八千流-----------「死剣」にして初代剣八。


「ああ・・・・空は、いつもぬけるように蒼いですね」

ふと空を見上げる。

太陽がぽかぽかと照ってくる。

まるで、私の死を祝福しているよう----------。

「もうすぐですよ、山本元柳斎重国。罪人であった私を護廷13隊に引き入れたあなたの元へ、私ももうすぐ落ちていくでしょう・・・・」

卯ノ花は、4番隊に帰って重傷者に回道を施しながら、後の全てを勇音に任せるために、自分の死を告げた。

勇音は最初は受け入れなかったが、何度も話あっているうちに分かってくれた。

護廷13隊隊長。

死神。

尸魂界のために死なば本望。

更木を目覚めさせ、尸魂界を守らせるために死ぬならば、それも本望。

そして、その後を浮竹十四郎が追う。

彼もまた、死神としての矜持のために。

尸魂界のために死なば本望。


愛する者を残してでも、尸魂界を守るために、命をかけるのだ。



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