始祖なる者、ヴァンパイアマスター21-2
3日目の夕方。
ようやく、70階層のラスボスの扉の前にやってきた。
流石に疲れたので、魔女乱菊から買った、疲労回復や魔力回復のポーションを飲む。
「ポーションでお腹がちゃぷんちゃぷんだ」
「僕も」
「オレはなんもしとらんから、平気やけど」
平子は、モンスター退治には一切手を出していない。
せいぜい、珍しい古代の遺物や魔道具がドロップされたとき、それをもらっていいかと浮竹に尋ねて、了解をもらって自分のアイテムポケットに入れていた。
アイテムポケットの存在を知った平子は、自分も欲しいといいだして、浮竹が古城のものおきに使っている部屋にあったアイテムポケットを、平子にあげたのだ。
「オレが倒そか?」
「いや、俺と京楽で倒す。どうしても危なさそうなら、加勢してくれ」
「了解やで」
70階層のボスはドラゴンで、ドラゴンはドラゴンでも、龍の、東洋の神龍だった。
状態異常の憤怒にかかっていて、話し合いでの解決は無理そうだった。
「メテオストライク!」
浮竹が、平子の魔法を覚えたので、隕石を降らせた。
神龍は、鱗を焼かれ、血が出ても構わず攻撃してきた。
「龍だと、ドラゴンのように弱点の逆鱗がないな。どうやって倒す?」
「僕に聞かないでよ。浮竹の魔法で倒したらいいんじゃないの?」
「じゃあ・・・・ヘルインフェルノ!」
神龍は、炎の魔法を反射してきた。
業火をなんとか浮竹と京楽がシールドを張って防ぐ。
「京楽、これをやる!」
浮竹は、アイテムポケットから、一振りの輝く聖剣を取り出した。
「ドラゴンキラー。竜族と龍やドラゴンに大ダメージを与える、特化の剣だ」
「そんなものがあるなら、初めから出してよ!」
「いや、正直ここまで苦戦するとは思わなかった」
浮竹も京楽も、もう2時間以上は戦闘していた。
神龍は傷つき、ボロボロになりながらも倒れない。傷が再生することはないが、浮竹に巻きついて絞め殺そうとしたり、京楽を氷のブレスで攻撃したりしてきた。
普通のドラゴンとは違い、タフではないが、呪術に近い魔法をかけたきた。
それは、浮竹のもつ、東洋の妖からもらったお守りの効果で、相手に反射した。
呪いの反射のせいで、随分と動きは鈍くなったが、それでも強敵だった。
ある意味、竜族より厄介だ。
京楽は、ドラゴンキラーに闇属性を付与して、神龍を切った。
面白いようによく切れた。
スパスパと鱗ごと肉を切っていく。
「とどめだよ!」
京楽は、ドラゴンキラーで神龍の頭部を刺し貫いた。
そこに、浮竹が魔法を与える。
「ゴッドブレスサンダー!」
神の息吹の雷。
禁呪であった。
全身を焦げさせて、神龍はズドオオオンと音を立てて倒れた。
「やぁやぁ、どうなることかと思ったんやけど、倒せたな。お疲れやで、二人とも」
浮竹と京楽は、荒い息を吐いていた。
神龍だけあって、普通の竜族よりも強いかもしれない。
体力と魔力を限界にまで使い込み、浮竹は魔力回復のポーションを出すと、京楽にも与えた。
「ふう。素材にはなりそうだが、素材としては大分傷んでしまったな」
とりあえず、覚えたばかりの、おいしくドラゴンの肉を加工する魔法を使ってみた。
神龍の肉は綺麗に捌かれて、つやつやと輝いていた。
鱗は、焦げた部分を残して、アイテムポケットに入れる。頭部と爪はそのままアイテムポケットに入れた。
血は、自分の血を操る魔法の応用で、神龍の血を特大のポーションの瓶に入れて蓋をして、それもアイテムポケットに入れた。
「さぁ、踏破だ!最後の財宝の間へいこう!」
「お、お宝か。ええな」
「何があるんだろうね?」
財宝の間をあけると、そこには特大のミミックがいた。
「ミミックだ!ミミックキングだ!」
「ちょっと、浮竹、危ないよ!」
京楽の制止を振り切り、浮竹はミミックキングに近寄って、ペロリと飲みこまれてしまった。
「浮竹!」
「ちょ、食われれてどないするんや!」
「暗いよ怖いよ生暖かいよでも広いよ~~~。あ、普通に呼吸できる。なんだ、ミミックキングの体内はこうなっているのか」
ミミックキングの体の中は、財宝で溢れていた。
「アイシクルランス」
浮竹は、ミミックキングを内側から、氷の槍の魔法で刺し貫くと、ミミックキングは悲鳴をあげて、お宝を残して消えていった。
「凄い財宝やなぁ。ちょっと欲しいわ」
平子は、ドラゴンでもあるので、金銀財宝が好きだった。
「金銀財宝は好きなだけもっていっていいぞ」
「ほんまに?じゃあ、遠慮なく」
平子は、アイテムポケットに欲しいと思った宝石や金細工の品を入れていく。
20冊はあろうかという、魔法書を、浮竹は目を輝かせてみていた。
「古城でじっくり読もう。今は、回収しておこう」
数もあるので、浮竹はその場で魔法書を読まなかった。
平子が、この世界で活動できる時間のタイムリミットがこようとしていた。
「古城に戻ろか。空間移動の魔法は得意やねん。ただし、一度行ったところにしか行かれへんけど」
ダンジョンの財宝の間の財宝を、全てアイテムポケットに入れて、3人は古城に帰還した。
「送別会をしよう」
「いや、気を使ってくれなくていいんやで?十分楽しかったし」
「もう、会えないんだろう?せめて、送別会くらい、させてくれ」
浮竹は戦闘人形に命令して、フルコースの料理を作らせた。
京楽は、デザートを作りに、キッチンへと行ってしまった。
「ほんまはな、ルシエードが子を放置して世界を渡ってきたって知って、残された子はどんなにひねくれてるんやろと思うたんや。でも、素直でいい子に成長してたようで、オレも安心やわ」
「父は、俺のことを誰かに話すのか?」
「時折やな。愛しい我が子を、違う世界にわざと置いてきたって、たまに寂しそうな顔すんねん」
「わざと置いてきた・・・捨てられたんじゃなかったのか?」
「ちゃうちゃう。その世界の者は、その世界から出られへんねん。あくまでやけどな。何かで繋がっていないと、世界を渡り歩くことなんてできへん。神々は、自由に世界を渡り歩くけど、浮竹はこの世界に存在しとるやろ?神にでもならな、移動できへんねん」
浮竹と京楽は、夢渡りを利用して、時折東洋の浮竹と京楽と会うが、それはあくまでお互の魂が繋がっているからできることであって、普通世界を行ったり来たりなどできないのだ。
それこそ、神にでもならない限り。
「そうか・・・俺は、捨てられたんじゃなかったのか」
浮竹は、8千年前を思い出す。
父として慕った、創造神の姿はうろ覚えであったが、まだ愛されているのだ。
「浮竹のこと、たまに自慢しとったよ。よくできた子やて」
「そうか」
それ以上、浮竹は聞いてこなかった。
もう、会うこともできないし、8千年前、離別したことで心の区切りはついている。
「そうだ、これを、創造神ルシエードに渡してくれ」
「これは?」
「桔梗の花を、永久に解けない氷で封じこめたものだ。花言葉は永遠の愛」
ホロリと。
平子が、涙を流した。
「ほんま、ええ子に育ったんやな」
「泣くなよ、照れくさいだろうが」
「ちゃんと渡しておくわ」
「ああ」
やがて、夕食ができて、送別会が行われた。
3人は食べて飲んで騒いだ。
フルコースの料理の後で、京楽が作ったという苺のシャーベットと、チョコレートアイスクリームを食べた。
「京楽って料理できるねんな」
「昔は、からっきしだめだったけどね。浮竹が喜んで食べてくれるから、それが嬉しくて僕もいろいろ作るようになったんだよ」
デザートを食べ終えて、バルコニーで紅茶を飲みながら、平子のいるサーラという世界について聞いた。
精霊ドラゴンを信仰する宗教があり、浮竹と京楽が存在するこのアビスの世界と同じように、魔法と剣の世界だった。ただ、精霊科学なるものが進歩していて、文明度はサーラの世界のほうが進んでいるようであった。
「じゃあ、オレはそろそろ元のサーラの世界へ戻るわ。御馳走になったし、いろんなもん見せてもろたし、財宝までもろたし・・・・ほんま、世話になったわ」
「帰るのか・・・・名残惜しいな。もう会えないなら、余計に」
「まぁ。なんらかの方法見つけたら、またこの世界にくるかもしれんから。そん時は、また構ってやってや」
「じゃあ、またね」
京楽が手を振った。
平子の体は少しずつ、透けていった。
「ルシエードに!」
「なんや?」
「父に、元気でいてくれと、伝えてくれ」
「分かった、伝えとくわ」
そう言って、平子はすーっと、この世界、アビスの世界から消えてしまった。
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「めっちゃええ子に、育ってたで?」
創造神ルシエードは、平子の言葉に無言で耳を傾けていた。
「これ、渡すように頼まれてん」
氷に封じられた、桔梗の花を手渡した。
「花言葉は、永遠の愛やって」
「私が、魂に刻んだ愛の呪いを、あの子は克服しているだろうか」
「してるんとちゃう?血族作って、楽しそうに暮らしてたで。S級ダンジョンとかいうとこに連れていかれて、冒険もしたんや」
「そうか・・・・・・」
それきり、創造神は黙り込んだ。
「藍染というたか。あいつには要注意や。神になろうとしとる。最悪なことに、神になる資格をもってたんや」
平子が、嫌そうに藍染の姿を水鏡に映し出す。
「あれが神になったら、アビスの、浮竹のいる世界が危ないねん。このサーラの世界もあやうい」
始祖魔族。
神になれる最低条件は、神に作り出された始祖であること。
「まぁ、同じ意味でも浮竹も神になろう思えば、なれるねんけどな。存在を、物質からアストラルに変えなあかんけど。まぁ、血族の京楽がいれば、大丈夫やろ。神なんて存在にならんわ」
星の精霊ドラゴンである平子は、神と呼ばれているが、実際は神とは少し性質を異なっている。
神々は、体がアストラル体、星幽体でできている。物質世界の存在ではない。
平子は物質世界の存在で、アストラル体ではなかった。
「あと、元気でいてくれって、言うとったで」
話は聞いてはいるが、何も答えようとしないルシエードは、相変わらずであった。
何を考えているのか分からない神であった。
サーラの世界は、神で溢れえている。
でも、直にまた違う世界を作るために、一度神界に戻るかもしれない。
平子は、世界を渡ることは召還があれば可能だが、神界にはいけなかった。
あそこは、アストラル体でないと存在できない。
「魔人ユーハバッハ・・・。アビスの世界で、唯一アストラル体となり、神界へ侵攻してきたような奴にならんかったら、いいねんけどな・・・・」
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平子が元の世界へ帰り、1カ月が経過した。
何事もなく、また平和な毎日がやってくる。
藍染が動く様子もなく、血の帝国もブラッディ・ネイと白哉の統治で安定している。
「あああ!」
真昼から、京楽は浮竹を貪っていた。
「んあああ!」
浮竹の体を抉って揺さぶった。
浮竹は、水晶のペンダントを窓から入ってきた光にきらめかせると、一度ガクリと意識を失った。
「十四郎、十四郎?まだまだ睦み合ったばかりだよ。意識を失うには、早すぎるよ?」
ぺちぺちと浮竹の頬を叩いて意識を取り戻させる、京楽はまた突き上げた。
「ああ!」
浮竹は、与えられる快感に恍惚とした表情をしながらも、涙を流していた。
「そうだ、せっかくだし、作り置きしておいたチョコレートアイスクリーム使おうか?」
「え、春水?」
浮竹は、不安そうな顔で京楽を見上げた。
戦闘人形に命令して、冷凍庫からチョコレートアイスクリームをもってこさせる。
それを、浮竹の体に塗っていく。
「冷たい!」
「美味しくなって?」
体温で溶けていくアイスクリームを舐めとっていく。
胸の先端と股間に特にアイスクリームを塗られて、体温で溶けたアイスはシーツに染みを作った。
「ああん」
アイスを味わうように、胸の先端にしゃぶりついて、舐め転がした。
「ああ、甘いね。君の体はいつも甘いけど、更に甘い」
「やあああ!」
今度は、京楽はアイスでまみれた浮竹のものを舐めとっていく。
「んあああ!」
刺激に敏感に反応して、浮竹は喘いだ。
硬く勃ちあがった浮竹のものに舌をはわす。
「ああ、全部溶けちゃったね。でも、甘いからいいや」
浮竹の体液は甘い。
血族には、そう感じれるのだ。
実際、神の愛の呪いを受けているその体液、他の生物には甘くかんじれた。
「君の血の一滴ですら、他の者にあげたくないよ」
鈴口を刺激して、爪をたててやると、浮竹は我慢できずに精液を出していた。
それを、当たり前のように口にで受け止めて嚥下する。
「ああ、甘いね。アイスのせいもあるけど、それがなくても、君の体液は甘い」
「あ”あ”」
京楽は、あろうことか浮竹のものに噛みついて、血を啜った。
血を吸われる快感に、精液が噴き出る。
それも飲み干しながら、うっとりとなった。
「甘い・・・・ほら」
口移しで浮竹に、体液と血が混じったものを口に含ませた。
「甘い・・・・」
「ね?」
「やあ、甘いからって、そんなとこに、牙をつきたてないでぇ」
浮竹は、京楽の髪を掴んだ。
でも、その掌には力はこもっていなくて、ただ京楽の黒い髪を掴むだけだった。
京楽は、再生していく傷口を舐めながら、浮竹に再度口づけた。
「んん・・・・ふあっ」
口の中はまだ甘かった。
舌と舌を絡み合わせて、銀の糸を引いて舌が去って行く。
「ああ!」
ごりごりっと、最奥まで挿入されて、浮竹はオーガズムでいっていた。
「やあああ!」
いってる最中に、今度は鎖骨に牙を立てられた。
「あああ、やああ、吸血と一緒はやあっ!」
いっている最中の吸血行為は、大きな快感となって浮竹を襲う。
「やあああ!」
精液を出しつくして、だらだらと先走りの蜜を零していた浮竹は、ぷしゅわっと、音をたてて潮をふいていた。
「やだ、やだ、やだ、見ないでぇ」
「どうして?十四郎が気持ちよくなっている証拠じゃない」
「やあああ、女じゃないのに、こんなのやぁっ」
「君が女の子なら、何度も孕ませてるだろうね。でも、男の子でよかったね?僕の子を孕まないですむ」
「ああ、や、お前の子種が欲しい・・・・」
「欲張りだね?孕めないのに、僕の精液欲しいんだ」
「あ、あ、孕むから、だから、ちょうだい、春水のザーメン」
「たくさんあげるよ。君を犯しつくしてあげる」
京楽はそう言うと、浮竹の中を抉り、最奥に精液を注ぎ込んでいた。
「あ、くる、お前の、熱いのが・・・ひあ!」
浮竹は、胎の奥で京楽のものを受け止めながら、唇を舐めた。
ああ、本当にこの子は。
この生き物はなんて、美しく、エロいんだろうと、京楽は思った。
サキュバスやインキュバスも目じゃない。
「エロいね、君は」
「あああ!!」
再度奥に熱を放ってやると、浮竹は満足そうに胎をなでた。
「春水ので、胎がみたされて、こんなに膨らんでる」
外からでも、浮竹の腹部が膨らんでいるのが分かった。
「全部、お前のだ。ああ、このまま孕めたらいいのにな」
少しぽっこりとしてしまった腹部を大事そうに撫でて、浮竹はうっとりしていた。
「出し過ぎだな、春水」
「そうだね。もう出ないよ」
漏れ出さないように栓をしていたが、硬さがなくなった京楽のものと蕾の間から、京楽が出した精液が大量に逆流してきた。
「あああ、もったいない、流れてしまう」
浮竹は、まるで子を流産してしまったような気もちになっていた。
「また、今度いっぱいあげるから。ね?」
京楽が、浮竹の頬を手で撫でる。
その手に手を重ねて、浮竹は微笑んだ。
「愛してる、春水」
「僕も愛しているよ、十四郎」
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魔国アルカンシェルで、藍染は反魂を完成させた。
「お前の名は?」
「ニィ・ペルル・シュトレウス。浮竹十四郎の、2番目の血族です」
「浮竹十四郎を、愛しているかい?」
「愛しています。私の、最愛のひと」
「今、浮竹十四郎は、6人目の血族を作り、その者を寵愛している。嫌だとは思わないか?」
「思います」
完全なる反魂で蘇ったニィは、瞳を真紅にした。
「私は、十四郎を取り戻します。力をください。その血族を殺す力を」
藍染は、ニィに自分の血を与えた。
「さぁ、行っておいで。愛しい浮竹の血族を殺しに」
浮竹を屠れないなら、その血族である京楽を屠り、嘆き悲しんで休眠させればいいのだ。
浮竹が泣き叫ぶ様を想像して、満足げに藍染は瞳を閉じた。
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