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始祖なる者、ヴァンパイアマスター21

星の精霊ドラゴン。

それはサーラという異界に存在する、星の精霊とドラゴンの間に生まれたハーフ。

通称、星の精霊ドラゴンと呼ばれ、その世界で神として崇められていた。

「創造神ルシエード」

星の精霊ドラゴンは、親しき友人の名を呼んだ。

創造神ルシエードは、自分を召還しようとしている、他の神によって生み出された魔族を、冷めた瞳で見下ろしていた。

「召還には、応じひんのか?」

「私が作った世界は、もう私の手を離れている。あの世界に戻ることはない」

「子を・・・寵児がいるんやろ。始祖のヴァンパイアの。お前さんが魂に愛を刻んだせいで、死ねない、かわいそうな子が」

「あれは私と同じ絶対存在。絶対者。世界を導く者。世界の中心」

「では、オレがお前さんの代わりにその召還に応じるわ。お前さんの作った世界を、見てみたいんや」

星の精霊ドラゴンは、そう言って、世界を渡った。

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「醜い国やなぁ」

星の精霊ドラゴンは、魔族の国にあった。

藍染の言葉など無視して、ただそこに在った。

「星の精霊ドラゴンよ!始祖ヴァンパイアを滅ぼせ!」

藍染は、自分を魔族の神だと思っていた。星の精霊ドラゴンを、自分の召還に応じたのだから、言うことをきくのは当たり前だと思っていた。

「醜いわ。オレは、お前さんの召還に応じたんやない。我が友の子を、その世界を見たいから異界よりきただけで、ただの冒険者や」

「星の精霊ドラゴン、神であるならば、神の子を殺せるはず」

藍染は、狂った瞳で星の精霊ドラゴンを見つめていた。

「そういうお前さんも・・・いや、神に作られただけで、神と同じように作られた神の子ではないんか。絶対存在がある限り、お前さんは永遠に神になれんな」

「何を言う。私は神だ!」

「神の子に一度封印されておきながら、神を名乗るんかい。笑止」

「星の精霊ドラゴンよ。始祖の浮竹を殺せ」

「何度も同じことを言わせるなや。オレにその気はないねん」

星の精霊ドラゴンは怒り、天空を狂わせて星を落とした。

メテオストライク。

この世界では、そう呼ばれている禁呪。

星の精霊ドラゴンは、翼を広げた。

優に5メートルあるだろかという、白い純白の羽毛の翼だった。

藍染は、星落としをくらい、体をぐしゃりとつぶされていた。

でも、不死なので死なない。

始祖は不老不死。

厄介であるなどと、藍染は思ったことはない。神なのだから、当たり前だと思っている。

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星の精霊ドラゴンは、友人の子がいる古城にやってきて、扉を開けた。

そこは、煌びやかな世界だった。

黄金のハニワが並んでいたのが気になったが、調度品やシャンデリアが美しい、中世の佇まいを模倣した城だった。

「誰だ、お前は」

古城の主が、真紅の瞳で睨んできた。

「ちょと浮竹、やっぱ黄金のハニワなんて並べるから、変な人が・・・」

クスリと、星の精霊ドラゴンは笑った。

「オレは星の精霊ドラゴンの平子真子いうねん。お前さんの父、創造神ルシエードの友や」

その言葉に、浮竹は驚くのと同時に威嚇した。

「そんな高次元な存在が、俺になんの用だ」

「いや、ただ遊びにきただけやねん。害意はないで?その水晶のペンダントで、分かるんやろ?」

浮竹は、水晶のペンダントか一向に濁らないので、敵対心を解いた。

「平子真子といったな。我が父の友人であるならば、客人だ。心から、もてなそう」

そう言って、浮竹は京楽を連れて、古城の奥にきえてしまった。

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平子は、浮竹と京楽と酒盛りをはじめていた。

「君、飲めるほうだね」

「オレは酒に強いほうなんや」

「俺は、酒はあまり強くない。だからいつも、果実酒かワインだが、二日酔いするまでは飲まいはずなんだが、今日はなんだかたくさん飲めそうだ」

「オレには星の加護があるんや。お前さんたちにも与えとるで?」

「どんな効果だい?」

「うぃ~。まだまだ飲めるぞー」

酔っ払った浮竹を介抱しながら聞くと、平子は真面目な顔で。

「頭上に隕石が落ちひん加護や。オレが怒ると、何故か隕石が落ちてくるんや」

京楽は、ややびびりながら、聞いた。

「僕たちに、怒ったりはしないよね?隕石なんて、流石の僕や浮竹でも防ぎきれるかどうか」

「いや、浮竹には防げるやろ。我が友の子、絶対存在。それは果てしなく神に近い証や」

「浮竹って、やっぱり創造神ルシエードの子とか言われてるし、神様に近いの?」

「近いが、あくまでヴァンパイアや。神にはなれへん」

それを聞いて、京楽は安堵のため息を出した。

「浮竹が神様になったりしたら、僕のものじゃなくなっちゃう」

論点はそこかい。

平子は、つっこみたいのを我慢していた。

「星の精霊ドラゴンって何だい?」

京楽が、自分の膝枕で眠ってしまった浮竹の白い髪を撫でながら、平子に聞いた。

「星の精霊と、ドラゴンの間に生まれたハーフやから、星の精霊ドラゴンと呼ばれとるだけで、ドラゴンの能力を有した精霊やと思えばいい」

「ふーん」

「むにゃ・・・京楽、愛してるぞ」

「おーおー、お熱いこって」

「僕も愛してるよ、浮竹。ちょっと、浮竹を寝室に寝かしつけてくるよ」

「オレも行くで」

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「あ?ええと、なんだ?」

浮竹は、目をあけると裸だった。

隣に裸の京楽がいた。そこまではよかった。

なぜか、平子まで裸だったのだ。

「ま、まさかの3P?」

浮竹は、自分の体をチェックした。どこも痛いところはないし、腰も普通だし、キスマークもない。

「浮竹、愛してるよ」

そんなことを言いながら、平子を抱き寄せるものだから、浮竹は怒って京楽の頭をハリセンで叩いていた。

「わ、何!?何が起こったの!」

「んー、もう朝かいな?」

「わぁ、平子、君なんで裸・・・って、僕も浮竹も裸!まさかの3P?」

「違う!」

浮竹はハリセンで京楽の頭を殴ってから、服を着た。

「いや、ベッドに入るなり服を脱ぎ出すから、この世界では服を脱いで寝るのが常識やと思ってなぁ。ほんと堪忍やわ」

平子も服を着た。

「京楽、いい加減お前も服を着ろ」

浮竹に指摘されて、京楽も服をきた。

「なんだ、何もなかったんだね。よかたった」

本当に心からそう思っているようで、京楽に浮竹も頷いた。

「異界の神と3Pなんて、笑い種にもならん」

「ほんとだよ」

「オレはそれでも別にかまへんねんけどな?」

浮竹と京楽は、それはないと、首を横にぶんぶん振った。

「平子、いつまでこの世界にいるんだ?」

「んー、特に決めてへんけど、あと1週間くらいやな」

「じゃあ、その1週間でこの世界を観光する?」

「それでもええなぁ」

平子は、召還されてから来た国といえば、魔国アルカンシェルくらいで、血の帝国にも行っていなかった。

「よし、じゃあミミックを探しにS級ダンジョンにもぐろう」

「浮竹、またミミックかい?平子クンに呆れられるよ」

「ダンジョンもこの世界の特徴だ。立派な観光だろ?」

「いいなぁ、面白そうやん。そのS級ダンジョンとや、いこか?」

こうして、異界の星の精霊ドラゴン、平子真子を巻き込んで、S級ダンジョンにもぐることになったのであった。

今回選んだS級ダンジョンは、全部で70階層だった。

念のためにと、1週間分の食料と水を3人分用意して、テントなどはアイテムポケットに入っているので、食料と水だけを確保して、S級ダンジョンに向かった。

少し遠かったので、竜化した平子の背にのり、空を飛びながらそのS級ダンジョンに向かった。

途中休息を挟んで宿に泊まり、3日かけてようやくS級ダンジョンに到達した。

辺境にあるせいで、あまり人気のないS級ダンジョンだった。だが、人気がないつまりはあまり人の手が入っていないので、宝箱も多そうだと、浮竹は上機嫌であった。

「さぁ、行こうか」

「へぇ、これがS級ダンジョンなんや。なんか、もっと暗いのイメージしとったわ」

「ダンジョンは、そのダンジョンによるけど、ほとんどが1階層ごとに地形が変わるからね」

1階層は荒れ地だった。

出てきたシルバーウルフの群れを、浮竹が炎の魔法で屠っていく。

「やっぱ強いんやなぁ。ルシエードの子だけあるわ」

「父は、元気だろうか?」

「ああ、すごい元気やで。今、新しい世界を違う神々と作っとる」

「元気なら、それでいい」

異界にいるという創造神と、会いたいとは思わなかった。

ただ、懐かしい気持ちだけが溢れた。


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「ほんま強いなぁ。オレの出番があれへんわ」

「というより、君は戦う意思がないじゃない」

「だって、観光にきてるんやで。見てるだけでええやん」

「まあ、いいんだけどね」

京楽はそう言って、襲い掛かってくるモンスターを、火の魔法をエンチャントしたミスリル銀の魔剣で切り裂いた。

「なんや、酸をだすカエルか。でも、うまそうやな?」

「え、まさかこのモンスターを食べるつもりか?」

浮竹は、信じられないような表情で平子を見る。

敵は、酸を巻きちらすアシッドビッグフロッグだった。

「この世界では、モンスターの肉を食べる習慣はあらへんのか?」

「ドラゴンの肉なら分かるが・・・普通のモンスターの肉は食わないな」

「なんやて!ドラゴンの肉食うんかい!オレは星の精霊ドラゴンやで。ドラゴンでもあるけど、頼むから食わんといて!」

自分の体を抱きしめる平子に、浮竹も京楽も苦笑する。

「友人がドラゴンであるからって、そんなこと浮竹はしないよ」

「京楽の言う通りだ。俺は始祖ドラゴンと友人だが、その始祖ドラゴンを食べたいなどと考えたことはない」

「はぁ、ならええねん」

カイザードラゴンである恋次もドラゴンだが、それを食べたいなどと思ったことはない。

「ちょっと休憩や。このカエル、食べてええか?」

「え、調理するのか?調理器具はもっているが、アシッドビッグフロッグは体に酸をもつ。あまり食用には向いてるとは・・・・・」

平子は、竜化するとアシッドビッグフロッグの死体を、そのまま丸のみしてしまった。

「ぴりぴりするわ。酸の刺激がええかんじや。酸って聞いて、食いたなったんや。オレには酸は効かへんからな」

「だからって、丸のみ・・・腹壊しても、知らないぞ?」

「平気やて。元いた世界でもようポイズンスネークとかアシッドビートルとか丸のみにしとったわ」

想像して、浮竹も京楽顔を青くした。

「げてもの食いだな」

「そうだね」

「おい、聞こえとるで。半分ドラゴンやねんもん。モンスターはただの餌や」

「ヴァンパイアも、そちらの世界ではモンスターになるのか?」

「そうやで。モンスターの一種や」

「頼むから、俺たちを食べないでくれよ」

「食べてもおいしくないからね!」

くつくつと、平子は笑った。

「食べたいなら、最初におうた瞬間から食っとるわ」

人の姿に、平子は戻る。

ドラゴンの時の姿が、鱗の代わりに羽毛をもつ、白い翼が特徴的なドラゴンだった。

そんなドラゴンを見たことはなくて、浮竹と京楽は、平子が異界の存在なんだなと、改めて納得するのであった。


「あ、宝箱!」

「浮竹、それはミミック!」

「ミミックでも大歓迎だ!」

浮竹は、宝箱をあけた。宝箱はミミックだった。

「暗いよ~狭いよ~怖いよ~息苦しいよ~~」

「何やっとんの、あれ」

平子が、笑いながら浮竹を指さす。

「浮竹は、宝物があるとああやってあけるんだ。ほとんどがミミックで、かじられてあんな姿になるんだけど・・・・・」

「京楽、助けてくれ。平子でもいい」

「よし、オレが助けやろやないか」

平子は、浮竹をひっぱった。

その力は強くて、浮竹はミミックにかじられながらも脱出したかに見えて、頭をまだかじられていた。

「このミミック、殺してええんか?」

「いいけど、頼むから浮竹は傷つけないでよ」

「ほれ」

隕石が降ってきた。

京楽は驚いて、シールドを張る。

「ちょっと、僕たちを殺す気かい!?」

「あれ、難しいな」

「僕が助けるから、平子クン、君はモンスターも倒さなくていいから!見てるだけでいいから!余計なことはしないでね!?」

神の名を冠するだけあって、その力は絶大であった。

加減ができないようで、星の名ををつけられただけあって、隕石を降らしてくる。

京楽は、しつこく浮竹の頭をかじっているミミックにとどめを刺した。

「助かった、京楽。平子、お前は強すぎて力加減ができないんだな」

「いや、そうでもないで?小さい隕石落としたりもできるで?」

「どっちみち星の精霊ドラゴンというだけあって、隕石を降らすんだろう。隕石なんて小さくてもクレーターができる。大きいと、国ごと亡ぶ」

「オレ、そない強ないで?」

「それより、浮竹いいのかい?ミミックが、魔法書ドロップしたけど」

浮竹は、京楽の手から魔法書を受け取った。

「何々・・・ドラゴン退治の書3巻。おいしくドラゴンの肉を加工する魔法・・・・」

浮竹も京楽も、平子を見た。

平子は、顔を青くして数歩下がる。

「俺はドラゴンやないで!精霊ドラゴンやで!精霊でもあるんやで!」

「でも、竜化できるんだよな?」

「加工されるうううう」

平子の救いを求める姿に、浮竹と京楽は腹を抱えて笑った。

「いや、冗談だから。さすがに仲間のドラゴンを加工しようとなんて思わん」

「そうそう。浮竹はドラゴン倒すの好きだし、魔法も覚えるだろうけど、平子クンには使わないさ」

平子は、ほっと胸を撫で下ろした。

「ならええんやけど」

ダンジョンの40階層は、ミミックオンリーのフロアだった。

100体はいるであろうミミックに、浮竹が順番に齧られていく。

45体目までは我慢したが、流石に数が多すぎて、平子がメテオストライクを放って、ミミックを全滅させてしまった。

「ああ、まだミミック全部にかじられてないのに!」

浮竹の非難の声に、京楽も平子も、疲れ切った表情をしていた。

「君、ミミックに今日で45回もかじられて、どうってことないのかい?」

「俺はまだまだいけるぞ。今夜ここで寝て、またミミックが復活するのを待とう」

「えー。オレは嫌やで。ミミックから浮竹助けんのにどんだけ苦労することか」

「僕も、平子クンの意見に賛成だよ」

「いや、今日はここで寝る!」

浮竹の意思は固く、結局2日目は40階層のフロアで夜を明かすことになった。

朝になり、20体ミミックが復活していた。

待てばもっと復活するだろうが、時間が惜しい。平子がこの世界にいられるまで、あと4日だ。

仕方なく、浮竹はきっちり20体のミミックに齧られて、魔法書やら財宝をゲットして、41階層を攻略していくのであった。

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