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無題

「守ろうこの世界を。護廷13隊の名にかけて」

浮竹が、守ろうとしているこの世界を。

浮竹。

命が尽きようとしている君を、放置するボクを許してほしい。

霊王宮への扉を。

その先にいるユーハバッハを倒すために。


「浮竹・・・・・」

開発局にいる、黒ずんだ浮竹の体を思い出す。

「ごめんね」

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全てが終わり、浮竹の冷たい体に温もりを与えるように、抱き込んだ。

「浮竹、がんばったね」

ああ、そうだとも。

そう聞こえた気がした。

衣服が、浮竹が吐いた血に染まっていくのを、京楽は懐かしい気持ちで見ていた。

院生時代、初めて血を吐いて倒れた君を運んだ時も、衣服に君の血が滲んだ。


浮竹。

愛していたよ。

誰よりも、誰よりも。

浮竹。

今、ボクは忙しい。

今すぐ君の元に行きたいけど、それは無理なようだ。

「地獄で、待っててね。きっと、いつか会いにいくから」

浮竹・・・・・。

浮竹十四郎。

13番隊隊長。

長い白髪に、翡翠の瞳をもつ、柔らかな印象の愛しい人。


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あれから、千数百年が経過した。

ボクの中では、浮竹の顔も仕草も昨日のことのように思い出せた。

(迎えに来た)

「ああ・・・・やっと、君に会えるんだね」

(行こう。一緒に)

「うん。行こう」

(もう、離さない。離れない)

「そうだね」

魂は輪廻する。

霊圧となって、循環する輪の中に還っていく。

「行こうか。もう、瀞霊廷は大丈夫。あれからいろんな謀反やなんだかんだあったけど、瀞霊廷も現世も虚圏も健在だよ」

(そうか。それならよかった。俺が神掛をした意味は、あったんだな)

「うん。君の犠牲のお陰で、尸魂界は、いや、世界の全ては救われた」

(もう、未練はないんだろう?)

「そうだね。あるとしたら、君との思い出も無になってしまうということくらいかな」

(そんなもの、生まれ変わってまた作ればいい)

「ふふ、そう簡単にいくかなぁ?」

(一緒に行くんだろ?その先も、きっと一緒だ)

「そうだといいね」


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「君、名前は?」

「十四郎。苗字はない」

長い白髪に、翡翠の瞳をもつ少年は、うねる黒髪に鳶色の瞳をもつ少年に話しかけられた。

「お前の名は?」

「春水。同じく、苗字はない」

「俺たち、どこかで出会ったことが?」

「さぁ、どうだろう」

いつかまた、巡り合うから。

たとえ、記憶が失われようとも。




だから、さよならは言わない。

またいつかと。

そう言って、泣きながら浮竹の冷たい体を抱きしめて、微笑んだ。



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