あなたの手で、殺してくださいⅣ
アニューは、最後にみた綺麗な笑顔をずっと保っていた。
「私ね、思う。あなたに愛されて良かったって」
「俺だって同じさ」
「嬉しい」
アニューは、とても綺麗な微笑を零して、ライルに抱きつく。
ふわふわと、二人は浮いていた。
アニューの背中には、銀色の小さな翼があった。
「どんな最後になろうとも、それはイノベイターである私の責任だから。他の人を責めないで」
「だけど、アニュー!」
「約束して。どんなに憎みたくなっても・・・堪えてくれるって。どんなに責めたくなっても、責めないでくれるって。他の人を、自分の感情のまま傷つけないで。一番傷つくのはライル、あなたなのだから」
「だけど、俺は刹那が許せない。ティエリアも許せない。アニューを生かす道があったのに、それを断った二人を」
「だめよ。二人は、最善の道を尽くしてくれた。私から、ライルを奪わないでくれた」
「だけど、俺からアニューを奪っていった」
「私は・・・・だって、あなたと恋に落ちるなんて、思ってもいなかったの。お願いだから、二人を責めないで。そんなの、ライルらしくないわ・・・」
「俺は・・・・アニューのために変わったのに・・・・こんなに卑屈になっちまった」
「ずっと、愛しているから。許せないのであれば、それでもいいわ。でも、せめて責めるのだけはやめてあげて・・・・」
「分かったよ、アニュー」
「ティエリアは、自分の精神の一部を私にかしてくれた。私は、手紙なんてものかけないから。映像に、記録を残すのも、なんかね。同じイノベイター同士なら、心を繋げたほうが早いから」
アニューとライルは、ダブルオーライザーの光に導かれ、対面したときのようにふわふわと漂いながら、言葉を交わす。
忘れな草の花畑から、金色の花畑、虹を描く空・・・いろんな景色に変わっていった。
「私は、忘れないで。あなたの中に、ずっと生きてるから」
「俺の、中に・・・・」
「ずっと・・・魂が粉々になっても、あなたを愛している。この想いは真実だから」
「アニュー!」
ライルが手を伸ばす。アニューの体が、灰になるようにさらさら崩れていく。
「これは、思い出なの。記憶なの。私じゃないわ・・・私は、いつでもあなたの傍にいるから」
ライルは、崩れているアニューを、泣きながら抱きしめた。
「もう、戻っておいで、ライル」
ティエリアの声が、空から降ってきた。
ライルは、もう少し余韻に浸りたくて、アニューでなくなった、消えてしまったアニューを抱きしめていた。
「すまない、私の限界だ・・・戻ってきてくれ、ライル」
ティエリアの声が震えていた。
「ティエリア?」
ぱっと、場面が変わる。
そこは、モノトーンの墓場。降り続く雨。喪服をきたティエリア。兄であるニールの墓に、花束を捧げる。その隣にライルは立つ。
墓の下に、闇が見えた。
「だめだ、それに触っては!」
ティエリアの悲鳴が聞こえる。
それは、ティエリアの心のブラックボックス。
中を開けてしまったライルは、見てしまった。
闇に彩られた世界。
その中で、綺麗な血の色の赤だけが鮮明だ。ティエリアは、目隠しをされ、手と足に鎖をつけられて、籠の中に入っていた。背中には六枚の光り輝く翼が手折られ、肉から骨を露出させて、血をとめどなく流している。ティエリアが大事そうに、抱きしめて手に持っているものは何かと見ると、ニールの生首だった。それを抱きしめて、ティエリアは歌っていた。
籠が揺れる。
「そこにいるのは誰・・・・私を壊さないで」
「ティエ、リア?」
「この空間を壊さないで。ここは私の心のブラックボックス。誰も干渉してはいけない。ニールしか、ここにはこれない。ニールが、いつもここから私を出してくれる・・・・ほら、空が見えるでしょう?」
天井を見ると、確かに一部だけ蒼い空があった。
そこから、光がさしこむ。
ライルとシンメトリーを描くニールが降りてきた。
籠の中のティエリアの戒めを全部とき、ニールはティエリアを暗闇の中から連れ出す。抱いていたニールの生首は、ただの人形の首に変わっている。
「兄さん・・・・」
「ライル?ここは、お前がいてはいけない」
「なんなんだ、ここは」
「ここは、ティエリアの心の奥。俺と、ティエリアだけの空間。何度救っても救っても、ティエリアはいつも籠の中にいるんだ」
ニールは哀しそうに、腕の中の傷ついた天使を抱き上げる。
ニールの腕の中で、天使が目隠しをしたまま、ライルを見る。
これ以上・・・ティエリアに踏み込まないで。壊れてしまう。
ざぁぁぁっと、ライルはまるで誰かに体を握られ、そのまますくいあげられるような感覚を味わった。
目を開けると、そこには真紅のギラついた瞳があった。
「刹那・・・・」
「私ね、思う。あなたに愛されて良かったって」
「俺だって同じさ」
「嬉しい」
アニューは、とても綺麗な微笑を零して、ライルに抱きつく。
ふわふわと、二人は浮いていた。
アニューの背中には、銀色の小さな翼があった。
「どんな最後になろうとも、それはイノベイターである私の責任だから。他の人を責めないで」
「だけど、アニュー!」
「約束して。どんなに憎みたくなっても・・・堪えてくれるって。どんなに責めたくなっても、責めないでくれるって。他の人を、自分の感情のまま傷つけないで。一番傷つくのはライル、あなたなのだから」
「だけど、俺は刹那が許せない。ティエリアも許せない。アニューを生かす道があったのに、それを断った二人を」
「だめよ。二人は、最善の道を尽くしてくれた。私から、ライルを奪わないでくれた」
「だけど、俺からアニューを奪っていった」
「私は・・・・だって、あなたと恋に落ちるなんて、思ってもいなかったの。お願いだから、二人を責めないで。そんなの、ライルらしくないわ・・・」
「俺は・・・・アニューのために変わったのに・・・・こんなに卑屈になっちまった」
「ずっと、愛しているから。許せないのであれば、それでもいいわ。でも、せめて責めるのだけはやめてあげて・・・・」
「分かったよ、アニュー」
「ティエリアは、自分の精神の一部を私にかしてくれた。私は、手紙なんてものかけないから。映像に、記録を残すのも、なんかね。同じイノベイター同士なら、心を繋げたほうが早いから」
アニューとライルは、ダブルオーライザーの光に導かれ、対面したときのようにふわふわと漂いながら、言葉を交わす。
忘れな草の花畑から、金色の花畑、虹を描く空・・・いろんな景色に変わっていった。
「私は、忘れないで。あなたの中に、ずっと生きてるから」
「俺の、中に・・・・」
「ずっと・・・魂が粉々になっても、あなたを愛している。この想いは真実だから」
「アニュー!」
ライルが手を伸ばす。アニューの体が、灰になるようにさらさら崩れていく。
「これは、思い出なの。記憶なの。私じゃないわ・・・私は、いつでもあなたの傍にいるから」
ライルは、崩れているアニューを、泣きながら抱きしめた。
「もう、戻っておいで、ライル」
ティエリアの声が、空から降ってきた。
ライルは、もう少し余韻に浸りたくて、アニューでなくなった、消えてしまったアニューを抱きしめていた。
「すまない、私の限界だ・・・戻ってきてくれ、ライル」
ティエリアの声が震えていた。
「ティエリア?」
ぱっと、場面が変わる。
そこは、モノトーンの墓場。降り続く雨。喪服をきたティエリア。兄であるニールの墓に、花束を捧げる。その隣にライルは立つ。
墓の下に、闇が見えた。
「だめだ、それに触っては!」
ティエリアの悲鳴が聞こえる。
それは、ティエリアの心のブラックボックス。
中を開けてしまったライルは、見てしまった。
闇に彩られた世界。
その中で、綺麗な血の色の赤だけが鮮明だ。ティエリアは、目隠しをされ、手と足に鎖をつけられて、籠の中に入っていた。背中には六枚の光り輝く翼が手折られ、肉から骨を露出させて、血をとめどなく流している。ティエリアが大事そうに、抱きしめて手に持っているものは何かと見ると、ニールの生首だった。それを抱きしめて、ティエリアは歌っていた。
籠が揺れる。
「そこにいるのは誰・・・・私を壊さないで」
「ティエ、リア?」
「この空間を壊さないで。ここは私の心のブラックボックス。誰も干渉してはいけない。ニールしか、ここにはこれない。ニールが、いつもここから私を出してくれる・・・・ほら、空が見えるでしょう?」
天井を見ると、確かに一部だけ蒼い空があった。
そこから、光がさしこむ。
ライルとシンメトリーを描くニールが降りてきた。
籠の中のティエリアの戒めを全部とき、ニールはティエリアを暗闇の中から連れ出す。抱いていたニールの生首は、ただの人形の首に変わっている。
「兄さん・・・・」
「ライル?ここは、お前がいてはいけない」
「なんなんだ、ここは」
「ここは、ティエリアの心の奥。俺と、ティエリアだけの空間。何度救っても救っても、ティエリアはいつも籠の中にいるんだ」
ニールは哀しそうに、腕の中の傷ついた天使を抱き上げる。
ニールの腕の中で、天使が目隠しをしたまま、ライルを見る。
これ以上・・・ティエリアに踏み込まないで。壊れてしまう。
ざぁぁぁっと、ライルはまるで誰かに体を握られ、そのまますくいあげられるような感覚を味わった。
目を開けると、そこには真紅のギラついた瞳があった。
「刹那・・・・」
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