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その日から始まった。

それは、日番谷が隊長になってまだ間もない頃のお話。

いつものように、10番隊の執務室で仕事をしていると、よくお菓子をあげて頭を撫でてくる人物-------------浮竹がやってきた。

浮竹は、何もないのに10番隊の執務室にやってきては、茶菓子を食って茶を飲んで、一服して出ていく。
もうそれにも慣れてしまったので、日番谷は何も言わなかった。

その日の浮竹は様子がおかしかった。

「浮竹、どうした」

「日番谷隊長。操の危機なんだ」

ブーーーーーー!

日番谷は、お茶を吹き出した。

「誰か女死神に追われているのか?」

「いいや、京楽だ」

「京楽?」

確か8番隊隊長の、もじゃもじゃのおっさん。

女好きで無節操。そんな噂を聞いた。

「無理強いされているのか。それなら、俺がなんとかする」

浮竹は病弱だ。守ってあげたくなるような容姿をしているせいで、余計になんとかしてやろうという気になった。

だが、浮竹は頬を薔薇色に染めていた。

「いや・・・・俺と京楽は恋人どうして・・・・・」

ブーーーーー!

またお茶を吹き出した。

書類にかかってしまった。手ぬぐいで、いそいそと水分をふき取る。

「はぁ?恋人同士?男同士で?」

まだその頃、日番谷は浮竹と京楽が付き合っていることを知らなかった。

「まぁ、他人ことをとやかくいう権利はないが・・・・操を奪われるのがいやなら、別れればいいじゃねぇか」

「いや、別に嫌なわけじゃないんだ。でも、昨日3回もしたし」

ブーーーーー!

日番谷は、お茶を吹き出すことは運命なのかと感じていた。

「日番谷隊長はどう思う?男同士で恋人で・・・・その気持ち悪いとか、思わないのか?」

のぞきこんでくる瞳は、自分と同じ緑で。でも輝きが違う。翡翠色をしていて、光彩にオパールのような虹色をもっていた。

「いや別に気持ち悪いとかはかんじねぇけど」

浮竹が、京楽とできているシーンを想像する。

「お前が受けだよな?」

さすがに、あのがたいのいい京楽が抱かれているシーンは想像したくなかった。

ちょっといかがわしい想像になって、日番谷が、頭を振ってその想像を追いやった。

「まぁ、追われてるなら好きなだけここにいろ」

「ありがとう、日番谷隊長!」

抱き着いてくる浮竹からは、甘い花の香がして、それだけでクラリと意識がまわりそうだった。

ああ・・・・・・なんか、京楽の気持ちが、分からないでもない。

恋人がこんな無防備に、誰かに抱きついたり・・・甘い花の香をかぐだけで、浮竹に手をだしたくなるような気になる。

「浮竹、お前」

「なんだ、日番谷隊長」

「俺や京楽以外に、抱き着いたりするなよ」

「どうしてだ?」

小首を傾げてくる浮竹が可愛く見えて、日番谷は頭を抱えた。

「やーん、浮竹隊長きてたんですかー!隊長ずるいー。あたしも起こしてよー浮竹隊長とお話ししたいー」

松本が、隊首室の奥からやってきた。

「浮竹隊長、今日は京楽隊長と一緒じゃないんですかー?」

「雨乾堂で一緒だったが、操の危機を感じて逃げ出した」

「きゃーーーーーーー!」

松本は、腐っていた。

「松本、うるさい!」

「だって隊長、浮竹隊長と京楽隊長のカップルは有名なんですよ?」

「そうなのか?」

「隊長くらいじゃないかしら。知らないの」

「俺にも、ちゃんと教えろ」

「やだー、隊長嫉妬ですか!やーん萌えるーーーー!」

「松本おおおおおおお!その腐った思考をどうにかしろーーーー!」

松本をいれてギャーギャー騒ぎあっていると、例の京楽がやってきた。

「日番谷隊長、失礼するよ」

「京楽!」

浮竹が、日番谷の後ろに隠れた。

「おい京楽!恋人同士だか知らんが、無理強いはよせ」

「それ、浮竹が言ったの?」

「そうだ」

「浮竹が悪いんだよ。3席のいる前でキスしたり抱き着いてきたりするから」

「浮竹、お前は人の目というものを意識しろ!」

3席がいるところでいちゃつかれては、3席がかわいそうだ。

「3席がいなくなって、その気になった僕を置いて逃げ出して・・・・・浮竹?」

「いやだ、しない。昨日3回もした」

「きゃあああああ!」

「松本、うるせええええええ!」

松本を殴ると、それでも松本は一人で萌えていた。

「よっこらせと」

瞬歩で日番谷の後ろにいき、浮竹を肩の上に抱き上げる。

「京楽!」

浮竹が、もがく。

「とろとろになるまで、愛してあげる」

その京楽の顔をまともに見た日番谷は、朱くなった。

なんて顔しやがるんだ。

浮竹も、その顔を見て、頬を上気させて潤んだ瞳で京楽を見ていた。

その顔を見て、日番谷は更に朱くなった。

なんて顔で、京楽を見てやがる---------------。


「ああもう!蒼天に座せ、氷輪丸!」

恋人同士の二人の色香にあてられた日番谷は、斬魄刀を解放させていた。

その頃から始まったのだ。

浮竹と京楽が、10番隊の執務室でいちゃつきだして、斬魄刀を始解するようになったのは。



「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーー!」

今日も今日とて、人騒がせな浮竹と京楽を巻き込んで、執務室を半壊させる。京楽は浮竹を軽々と抱えて攻撃を避ける。いつも、松本がその余波でふっとばされていた。

「あーーーん、萌えるーーー」

今日も、松本はいい具合に腐っている。

今日も、浮竹と京楽は見せつけてくれる。

もう、執務室を半壊させるのは当たり前。

京楽は金を出してくれるから、執務室はすぐに新しく建て直される。

「はぉ・・・・・疲れた」

氷輪丸を鞘にしまい、なんとか形が残っていた机に置かれていたお茶を飲み干す。

緑茶の渋い味が、口いっぱい広がった。






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