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インフルエンザ(イチルキ

季節の変わり目は、病気になりやすい。そのせいかどうか分からないけれど、ルキアがインフルエンザになった。

同じ部屋で生活している身としては、うつされたら困るだろうが、その年一護はきちんと予防注射を受けていた。

「一護・・・・・・目が回る」

「熱出してるんだから大人しくしてろ」

「しかし・・・・虚が・・・」

「そんなの、俺が倒してくる」

ルキアは一護のベッドの上で、力なくまた横になる。義骸が人間の病気にかかるなどとは思わなった。精巧につくりすぎているな、と思った。

「ただいま。おい、大丈夫かよ?」

額を額をくっつけられて、熱のせいで赤いのに余計に赤くなった。

「あー少しまだたけぇな。なんか食いたいものあるか?」

「アイス。アイスにアイスにアイスに苺」

「どんだけアイスくいてぇんだよ」

「フラフラする。関節と喉が痛くて頭も痛い。眩暈もする」

「大人しく寝てろ」

「尸魂界にいけば薬が・・・・」

「そこまでたどり着く体力もねーだろ。現世の医療だって発達してるんだ。アイス買ってくるから、少し待ってろ」

一護は、インフルエンザでダウンしているルキアを残して、スーパーまで足を運んだ。アイスは簡単に見つかったが、苺が季節外れで売っていなかった。

ふと、練乳味のアイスの上に、凍った苺をのせているアイスがあったので、手にとる。他のアイスの2倍の値段がした。少し高いなとは思いつつ、かごにいれてレジに並ぶ。

帰宅すると、家の玄関でルキアが倒れていた。

「おい、しっかりしろ」

ふと、ルキアが気づく。

「どうしたんだよ、こんなとこで倒れてて」

「貴様がおらぬから・・・探したのだ、一護。寂しい。傍にいてくれ・・・・・・」

いつもの、傲慢なルキアがいない。

細い体を抱き上げて、一護は室内に戻るとルキアをベッドの上に横たえた。

冷えピタの熱さまシートを額にはる。

「冷たくて心地よいな・・・・」

一護の手に、すり寄ってくる。

「貴様の手も、冷たくきもちいい」

一護は、思い切り我慢していたが、我慢ができずにルキアの唇に自分のものを重ねた。

「ふわっ・・・・・・世界が廻る」

「アイス、一人で食えるか?」

「無理だ。貴様が食べさせろ」

「仕方のねーやつだな。苺は売ってなかった。シャーベットになってるのしかなかった」:

「それでもよい・・・・・」

一護の手から、ルキアは少しずつアイスを食べた。苺のシャーベットを最後に食べて、とても幸せそうな顔をするルキアに、一護の心も温かくなった。

「お粥食えるか?」

「貴様の手作りなら食べてやらぬこともない」

いちいち条件指定してくるところが、ルキアらしい。傲慢で不遜で・・・・でもかわいくてかっこいい。
ルキアはかわいいが、言動ださっぱりしているので、そんなところがかっこよかかった。

「これでも、一応大学は一人暮らし希望だからな。料理もそこそこにはできるぞ」

「では、美味なものをもってこい」

「はいはい」

キッチンに向かって、卵粥を作ると、それをもってあがった。

ルキアは伝令神機をいじっていた。

「虚か?」

「違う。インフルエンザで帰れぬと、連絡をいれておいたところだ」

もともと、現世に虚退治のために派遣されたが、定期的に尸魂界にいって、報告をしなければいけなかった。それが無理になり、伝令神機で連絡を入れていたのだ。

「いい匂いがする」

「ただの卵粥だけど・・・・」

「うむ。食わせろ」

「お前さ。もう少しかわいげのある言葉いえねぇのかよ」

「私の何が不満なのだ」

「ああ、もういいよ」

せめて、食べさせてくれというのなら、まだ少し可愛げがあるのに。ルキアは、本当に傲慢で不遜だ。でも、それがルキアのもち味だった。

スプーンですくって、冷ましたものをルキアの口に入れる。

「美味いな・・・・・」

「鮭いれてるからな。その味もするだろ」

「本当だ。余計に美味いではないか!貴様、朽木家の厨房係になれ!」

「無理言うなよ。まだただの高校生だ」

「高校生兼代行死神だ。それを忘れるな」

「へいへい」

卵粥を食べさせて、薬を飲ませることにした。

「苦いのはいやだぞ!」

「今時の薬はだいたい錠剤タイプが多いんだよ」

解熱剤を含めて、5錠くらいの薬を渡されて、ルキアの顔が辟易となる。

「こんなに飲まねばならぬのか」

「お前、保険証がないから病院につれてけないからな。アホでも一応親父は医者だから、親父が処方した薬だ」

「ふむ、貴様の父上か」

ルキアは素直に薬をのんだ。コップの水を飲み干して、こういう。

「汗で気持ち悪いのだ。浮竹隊長はよく臥せっておられるとき、風呂に入れぬ日は濡れたタオルでふいてもらっていたときく。一護、お前も私の体をふけ」

どんな拷問ですかこれ。

「俺は男だぞ!」

「それがなんだ」

「ああもう!体ふくのは遊子と夏梨に任せるから、少し辛抱してろ!」

遊子と夏梨を呼んで、ルキアは濡れタオルで体をふいて身を清めてもらい、一護の新しいパジャマを着て寝ていた。

「そうか・・・貴様も、一応男だったな。付き合ってもいない男女がする行為ではないか」

「当たり前だろう!」

「ふふ。でも、触れたりキスはするのにな」

「うっせぇ。お前だって、拒んでねぇじゃねぇか」

「私は拒まぬよ。一護といつまでもこんな時間を過ごせたらと思う」

「俺も、こうして平和にお前の隣にいたい。薬がきいてくるだろうから、もう寝ろ」

「寝るまでの間、手を握っていてはくれまいか。寂しいのだ」

「手を握るくらいでいいなら、いつでもそうしてやるよ」

ルキアの小さな手を握る。白くて柔らかかった。

一護の体温に安心したのか、ほどなくしてルキアは寝てしまった。

「明日には、熱さがってるといいな」

ちゅっと音をたてて、ルキアの頬にキスをした。

尸魂界に戻らねばならぬ日が近づいていた。

たとえ、進み道がどんなに違っていようと、二人は寄り添いあう。

それは、比翼の鳥にどこか似ていた。


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