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エリュシオンの歌声2-1

「名前は?」

(浮竹十四郎。そういうお前は?)

「京楽春水。盗賊団、風の魂のリーダーだよ」

(そうか。俺を殺してくれ)

「・・・・・・君に一目ぼれした」

(は?)

「天使だね。どう見ても天使」

(何を言っているんだ)

京楽は、浮竹を抱き上げた。

「軽いね」

(いや、重いだろう)

「軽いよ。鳥みたいだ。翼が生えてるから、天使かな」

(エリュシオンの歌声をもつ者は、皆白い翼をもつ)

「やっぱ君、天使だね」

浮竹の脳に響く声だけで、心が洗われていくような錯覚を覚える。

(神子や神の巫女は、エリュシオンの歌声をもつから白い翼があるんだ)

「君が気に入った。一目ぼれだ」

(何故だ?)

「見た目も可愛いし綺麗だけど、世界を知らない君がすごく愛しく感じる」

(俺は、お前に会ったばかりだぞ)

「うん。でも僕を好きになって。ねぇ、いいでしょ?」

(誰かを好きに・・・・なれるのか?)

「なれるよ。僕は君が好きだよ、十四郎」

(京楽・・・・)

「春水って呼んで」

(春水・・・なんだろう。胸のこの辺りがぽかぽかする)

浮竹は、ぎゅっと心臓のあたり服を手で握りしめた。




盗賊団の仲間には、首級をあげたので先にアジトに帰るように命令した。

誰もがそれに従った。

まさか、リーダーが神子に魅入られているなど、誰も信じないだろう。

京楽は強い男だ。魅了の呪文さえ通用しないほどに、精神も強い。どんな美女が相手でも、彼を篭絡することはできないだろう。


それが、目も耳も足も不自由な、同じ同性の神子に魅入ってしまうとは。

浮竹を抱き上げて、外に出ると、浮竹は空を見上げた。
見えない翡翠の瞳で、空と太陽を映しこむかのように。

(ああ・・・・空って本当に蒼いんだろうな・・・太陽の光は眩しいか?白にしか感じれない)

「ああ、太陽の光は眩しいよ。じかに見ることなんて、真昼だとできない」

(そうなのか?そういえば、朝、昼、夜があるのだな。あの空間には何もないから俺は始めて、外の昼を体験できた。嬉しい。もう、何もいらない。さぁ、俺を神の元へ・・・・)

そっと、手を胸の前で組み、祈る浮竹をを地面に下ろして、京楽は剣を振りかざした。

(さようなら、会えて嬉しかった、京楽)

ザシュ。

それは、浮竹を縛るようないくつもの衣を切り裂いていた。

(?)

「あー。なんてざまだろうね、この僕が・・・・」

京楽は、激しく浮竹を胸にかき抱いた。

(何を・・・・)

「僕のものになりなよ」

(お前の、ものに?でも俺には神が・・・・)

「そんなもの、忘れさせてあげる」

京楽は、用意していた馬に浮竹を乗せ、後ろから手綱をひいて馬を走らせ、兵士が配置されていない国境の森を抜けると、そのまま馬を走らせて隣国に入った。

「ららら~エリュシオンへの扉は今開く~神よ我に光あれ~」

馬の上で、浮竹はエリュシオンの歌声を放つ。

それは透明で、誰をも魅了する歌声だった。

町につくと、浮竹を下ろして宿をとった。

背中の白い翼は魔法で隠せるらしく、京楽の手に抱き上げられて、浮竹は宿の部屋の中に入ると、また首を傾げた。

(どうして・・・早く、殺してくれ。お前の役目は、俺を殺すことじゃないのか)

「あー。あーまぁ、そうだったんだけどね。なんだかねぇ。神の子、朽木白哉みたいなのをずっと想像してたんだよ。なのに・・・君はどうだい。目も見えない、耳も聞こえない、歌うことしか許されない、歩くこともできない。あげくに神殿の外に出たのも始めて。黄金なんて見た目はいいが、ベッドの柵に足枷で繋げられて・・・・まるで囚人みたいな扱いじゃない。幽閉でしょ、あれは」

(でも、皆はそうしないと俺が逃げ出すと・・・)

「無理でしょ。歩けない、おまけに背中の翼も空を飛べないのに、どうやって逃げ出すんだい」

ベッドにとさりとおろされて、浮竹は困ったように微笑んでから、ポロリと涙を零した。

(だって、だって、だって!神様が俺にはいるから!!)

「いないでしょ、神なんて。見えるのかい?君の側にいてくれるのかい?君をを守ってくれるのかい?」

(だって・・・・・エリュシオンの歌声が俺の全てだから・・・・)

「僕のものになりなよ。エリュシオンの歌なんて歌えなくなってもいい。僕が君を守る。僕のものになっちゃいなよ・・・」

窓からは、すっかり日も暮れて綺麗な星空が見えていた。

浮竹の唇を自分の唇で塞ぐと、抵抗はなかった。

(神様が・・・・)

「今は僕のことだけ考えてよ」

ぐいっと、また深く口付けた。

(あ・・・あああ)

歌うことしか許されない浮竹の喉から、言葉にならない声が漏れる。

(ダメ、俺は、男・・・・こんな見た目でも、男だから・・・・・)

浮竹は京楽の髪に手をいれる。

抵抗というより、身をゆだねているに近い。

(だめだ、だめ・・・・俺は)

「なんだい。死ぬ覚悟があるくらいなら、これくらいどうってことないでしょ?嫌なら抵抗しなよ」

(俺は・・・神子の男で・・・女ではない・・・・)

服を次々と脱がしていく、京楽の腕が止まる。

「別に、男同士でもこの世界じゃ珍しいことないじゃない。娼館に色子もたくさんいるし」

ふるふると、浮竹が首を振る。

平らな胸を撫でると、浮竹がかすかに震えた。

「こわい?」

(こわい)

自分のものにすると一度決めたら、なんでも自分のものにしてきた京楽だ。

「男相手でも僕は大丈夫。男娼買ったこともあるし、平気だよ、安心して」

平らな胸に口付けて、そのまま下の服も脱がしていく。

浮竹は京楽にしがみついて、息を殺していた。

(ああ、あ、あ)

舌が絡み合う口づけを交わしあう。

浮竹はこういうことは初めてのようで、軽いパニックになっていた。

(やっ)

「優しくするから」

(でも、こんなの神様が・・・・)

「神様なんていない。それがこの世界だ」

(ああ、あ)

途中で立ち寄った雑貨店で、潤滑油を買ってきていた。浮竹を自分のものにすると決めたので、少しでも負担減らすためだ。

(やあっ)

胸の先端をつまみ、衣服を全部脱がすと、同じ男のものとは思えない白い肌があった。

そこに、所有の証を刻んでいく。

(京楽・・・・・・!)

「春水だ。春水って呼んで。僕も十四郎って呼ぶから。君を一目みて好きになったんだ」

(そんなの、何かの間違いだ。こんな見た目だから・・・)

「君の中身も気に入ってるよ」

(しゅ、春水・・・)

「なぁに?」

(はじめてだから・・・優しく、してくれ)

「どうだろうね。僕は君が欲しくてうずうずしてる。好きだよ、十四郎」


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