エリュシオンの歌声3-3
「ようこそエリュシオンの地へ」
扉が開き、浮竹と京楽は中に足を踏み入れるのではなく、吸い込まれていた。
「ここは・・・・」
浮竹は、自分の目が目えることに、そして自分の足で立っていることに、耳も聞こえることに驚き、そしてエリュシオンの歌声を出そうにももう出ないことに気づいて、愕然とした。
浮竹は、自分の目が目えることに、そして自分の足で立っていることに、耳も聞こえることに驚き、そしてエリュシオンの歌声を出そうにももう出ないことに気づいて、愕然とした。
体の欠陥は、エリュシオンの歌声をもっている証に、神が奪っていったものだとされていた。
白哉も、同じように実は目が見えない。
魔法で全てを補っている。白哉の魔法は完璧すぎて、目が見えなくても、関係ないほどに補っている。
「ようこそエリュシオンの地へ」
再びそんな声がした。
眩しい世界。
始めて自分の目で見る世界は、真っ白に見えたが、光になれてくると空中庭園のように美しかった。
広い花畑が広がり、奥には森と神殿が見える。
何処か、浮竹が閉じ込められていた場所に似ている。
「あなたは・・・・・・」
美しく微笑む少女に、浮竹は心臓がどくんどくんと高鳴った。
伝承でしか伝えられないエリュシオンの地へ、踏み入ることができた。ここは楽園なのだ。
では、その場所にいる住人は、人ではないだろう。
「私は女神アルテナ」
「女神・・・・」
今でこそ神を信じなくなった浮竹でさえも、彼女が神であることは分かった。あまりに神々しい。
「ようこそ、エリュシオンの地へ。あなたは天使となり、この地に留まることができます。そのために、生贄を捧げたのでしょう?」
ポウっと、女神アルテナは美しすぎる顔のまま、顔色を変えることもなく手を動かすと、ふわりと動かない、意識を失った京楽の体が女神アルテナの前に浮いていた。
「京楽!!」
「忘れなさい、神の子よ。生贄を捧げて始めてエリュシオンへの扉は開く。愛する者を捧げること。それが扉を開く条件。この生贄にもう用はないでしょう?」
「京楽!京楽を返せ!彼は生贄なんかじゃない!そんな、そんなこと、愛する者を捧げるなんて俺は嫌だ!!」
女神アルテナにすがって、浮竹は翡翠の瞳からたくさんの涙をこぼして、はじめて見る京楽の姿を目に焼き付けた。
思っていたとおり、優しそうな青年だった。
「返せ!!」
エリュシオンの地で、浮竹の悲鳴だけが大きく響いた。
「おかしなことを言うのですね。あなたは天使になれるのですよ。人の性(さが)など忘れてしまうのが普通なのに」
浮竹の背中に、12枚の翼が生えていた。
「こんな翼いらない!いやだ、こんな翼なんているか!天使になんてなりたくない!京楽を返せ!」
浮竹は自分の翼で羽ばたき、女神アルテナの頭上にいた京楽の体を攫うと、地面に降り立った。
浮竹は自分の翼で羽ばたき、女神アルテナの頭上にいた京楽の体を攫うと、地面に降り立った。
「京楽、京楽!!」
何度揺さぶっても、目を開けてくれない。
心臓に耳をあてると、鼓動はとまっているし、呼吸も止まっていた。
すでに、死後硬直がはじまっている。
浮竹は泣き叫んだ。
「京楽、俺を守ってくれるんじゃなかったのか!お前は生贄なんかじゃない!天使になんてなりたくない!エリュシオンの地にいたくなんてない!!!」
「ここは楽園、選ばれたのに、なぜそんな我侭を・・・・」
「うるさい!女神だろうがなんだろうが、俺は人間でありたいんだ!俺は、元の世界に戻る!天使になんて、なるものか!!」
浮竹は、全ての生命力と魔力を京楽に吹き込む。
その姿を見て、女神アルテナはため息をついた。
女神アルテナの妹である、ネイのいる世界からやってきたのに。あの世界を作ったネイに似た人間たち。
ネイは女神アルテナの妹にして、創造神。ネイは世界を築きあげて、自分によく似せた人間をつくった。ネイは世界の人間の中に溶け込み、その血族の人間は、エリュシオンへの扉を開くことができる。
「天使に、なりたくないというのね?浮竹十四郎。ネイの血族よ」
ネイは女神アルテナの妹にして、創造神。ネイは世界を築きあげて、自分によく似せた人間をつくった。ネイは世界の人間の中に溶け込み、その血族の人間は、エリュシオンへの扉を開くことができる。
「天使に、なりたくないというのね?浮竹十四郎。ネイの血族よ」
これでも、女神アルテナは楽園エリュシオンを創造した女神なのに。
その女神に歯向かうというのか。
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