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カナリアⅡ「カナリアの翼」

そのまま、レストランで夕食をとって、帰宅する。
先に、ロックオンはお風呂をわかしてくれた。
カナリアが先に入る。
続いて、ロックオンが。

ティエリアとロックオンという二人の存在が、この家で生活しているのが色濃い証のように、お揃いのパジャマが用意されてあった。

カナリアはそれを着る。

「カナリア?もう寝たのか?」
薄暗い寝室の明かりを、そっとロックオンがつける。

「ロックオン。カナリアが天使の証・・・・キスして?」

カナリアは、パジャマの上の部分だけ脱いでいた。上のパジャマは、完全に脱いだわけではなく、腕のあたりで留まっている。

金色の目を輝かせる。

ぽっと、薄暗い闇の中で、ティエリアの肩甲骨に天使の翼をイメージした紋章が現れる。
それに、ロックオンはカナリアを抱きしめて、まるで聖痕(スティグマ)に口付ける聖職者のように、ゆっくりと口付ける。

何度も、繰り返し口付ける。
何度も、何度も。

カナリアは、辛い体験の記憶を失ったわけではないのだ。ティエリアのかわりに、持っているのだ。全ての辛い出来事の記憶を。

カナリアは震えていた。
ついには、泣き出した。

「カナリア・・・・」
「ロックオン。愛してるから。カナリアのこと、忘れないで。愛してるから、忘れないで・・・・カナリア、汚れまくってるけど・・・でも、ロックオンのこと愛してる」
「俺も、愛してるよ、カナリア。こんなにも綺麗だ。汚れてなんかいない」

カナリアの流す涙を手でぬぐって、瞳にキスをする。

石榴色の瞳は、カナリアの色のような金色。
とても綺麗な金色。

カナリアは、首に今日もらったカナリアの羽のペンダントをつけていた。

カナリアはパジャマをロックオンに着せてもらう。
一緒に、抱きしめあって、ゆっくりと横になる。

カナリアの笑顔。
とても透明で眩しい、本当の天使のような笑顔。
綺麗すぎて、涙が零れそうになる。
人は、こんなにも美しい表情ができるのかと、驚く。

たどたどしく、カナリアがロックオンにキスをする。
本当に、とてもゆっくりと。

まるで、幼子がするようなキス。

「カナリアの翼・・・きっと、ロックオンの愛で溶けたんだね」
「ああ、そうだな」
ベッドに寝転びあって、互いを見つめる。

体をつなげることはしない。それが、二人の中の約束ごと。
だって、ロックオンが一番愛しているのはティエリアだから。
カナリアもティエリアであるが、別人格である。ティエリアからロックオンを奪うようなことはしたくない。
一緒にいるくらいなら、きっとティエリアも許してくれるはず。

「カナリア・・・・どこかで、いつか違う時に・・・・」
「今は、言うな」
唇を塞がれた。
「ん・・・あ・・・」
涙が零れる。

愛されるって、なんて素晴らしいんだろう。

カナリアとロックオンは、互いを抱きしめあいながら、深い眠りについた。

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