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カナリア「籠の中のカナリア」

結局、ティエリアがトレミーに戻ってくることはなかった。
囚われたであろう武装勢力に武力介入したが、そこのあじとにもティエリアの姿はなかった。
行方不明になって、もう二ヶ月が経とうとしていた。
ミス・スメラギはティエリアを死亡と断定し、CB研究所に新しいガンダムマイスターの要求を送った。
冷血であったが、戦力をこのままかけるわけにはいかない。
新しいガンダムマイスターは、今のところ未定であった。

ロックオン、アレルヤ、刹那は必死になってティエリアの行方を探した。
そしてついに、武力介入した武装組織の敵対グループの一派の中に、わりと大規模な娼館を抱えるグループがあり、そこがもつ娼館に天使の歌姫がいるという情報を入手した。
社交界でも有名な人間が出入りする娼館であった。
アジアで人気の歌手が、その娼館を利用した時に、天使の歌姫に出会ったのだと、公言したのだ。
罪には問われなかっった。
なぜなら、娼館がある場所は、法律でソフトドラッグも売春も認められているオランダだったのだ。
そこで女を買えば、法律で守られているために犯罪にはならない。
オランダに、ティエリアはいる。

その娼館を抱えるグループにCBは武力介入した。
最近、マフィア同士で争い、市民も巻き込んでいるからだった。

「きゃあああ!!」
「いやああああああああ!」
娼館に、ロックオン、アレルヤ、刹那は銃を持って乱入した。
客たちは逃げ出し、女たちも逃げ出す。
武装組織の男が銃を持って発砲してきたが、何人か射殺した。
「きゃあああ!なんなのおおおお!!!」
女たちの金切り声が聞こえる。
娼婦たちが逃げ惑う。
そのうちの一人を捕まえる。
「離して!嫌よ、何も悪いことしてないじゃない!この商売はこの国の法律が認めているんですもの!離してよ!」
「お前なんかに用はねぇ!天使の歌姫はどこにいる!?」
ロックオンの言葉に、化粧をした金髪の少し大柄な白人女性は少し落ち着いたようだった。
「あなた、その天使の歌姫をどうするつもり?」
「決まってる、助け出すんだ!俺たちの仲間だ!」
「あの子・・・・・そう。やっぱり、自分の意思で体を売ってたんじゃなかったのね」
「なんだと!」
「痛いわ!」
女の腕を掴む力に、思わず力が入った。
体を、売っていた。
恐れてはいたのだ。娼館などに囚われているというのだから。
そう、最悪の事態だ、これは。

現実は、なんて残酷なのだろう。

「あの子なら、この店の最上階の特別室にいるわ。とってもかわいくて、このお店のNO1なの。とても綺麗な声で歌うのよ。まるでカナリアみたいに」
「カナリア・・・・・」
女の言葉に、ロックオンが固まる。
最上階に向かって駆け上がる。
「ロックオン、来ちゃだめだ!」
「ロックオン、来るな!!」
アレルヤと刹那が、最上階の特別室を開けて、そこでみた光景に息を呑み、やってきたロックオンを静止する。
「うるせぇ、どけ!」
乱暴にアレルヤと刹那を突き飛ばす。

「ららら~~ららら~らら、らら~~」

綺麗な歌声が響く。
はぁはぁ。
男の荒い息遣い。

「らら~ららら~~」

ロックオンは、アレルヤと刹那きても行為をやめず、ティエリアを犯していた男を銃で撃ち殺した。

「ロックオン!」
「ロックオン!」
罪のない市民を殺したことになるが、そんなことはどうでも良かった。
あとからいくらでもお咎めは受ける。

「ティエ、リア?」

「ららら~~ら~~」

ティエリアは、石榴の瞳で天井を見上げていた。
一糸纏わぬ裸体は、男が出した白い体液に汚れている。
「ティエリア」
一向に声をかけても、こちらを見ない。
石榴の瞳は虚ろなままだった。

「体、洗おうな?」
ロックオンが、ティエリアが抱き上げようとする。
チャリ・・・・。
ティエリアの首には、ベルトが巻かれていた。
手にも、足にも。
それは、長い鎖で繋がれていた。
ロックオンは、銃で鎖を無理やり切断すると、ティエリアを抱きあげて、部屋の奥にある大きなバスルームに連れていき、暖かい湯を浴びせ、ボディーシャンプーで綺麗にティエリアの体を洗う。髪もシャンプーで洗ってあげる。
アレルヤが、支配人から鍵を受け取って、ティエリアに巻かれたベルトを外してくれた。


「ららら~ら・・・・・・」

ロックオンは、その両目から涙を溢れさせていた。

「ティエリア。ティエリアあああああああああ!!!!!」

「ららら~~」

ロックオンは、ティエリアを抱きしめた。
ティエリアは虚ろな瞳で、ロックオンを抱きしめ返そうとする。
カクン。カクン。
手が、動かない。
足も。
自力で歩くことも立ち上がることもできない。
両手両足の腱が切られていた。

カクン、カクン。
動かない手をせいいっぱい伸ばすティエリア。

「もういいから、ティエリア」
ロックオンは、涙を流してティエリアを抱きしめる。

それまで、らららとしか言わなかったティエリアが、ロックオンの言葉に反応した。
「ティエリア、俺が分かるのか?」
虚ろな石榴の瞳を金色に変えるティエリア。

「・・・・・・・・・カナリア」
「ティエリア」
「僕は、籠の中のカナリア。ららら~らら~~ららら~~」

そのまま、ティエリアはCBによって保護された。

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打ってて涙が流れました。

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