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世界が終わってもⅡ「あなたがいないと壊れる」

ニールは、今にも自殺しそうだった。
僅かの可能性も絶たれた。
ニュースは飛行機が墜落した現状を映し出し、散らばった機体の破片を映す。もげた人間の足らしきものが見えた。

「嘘だ、ティエリア」

もう一度ニュースをつけると、飛行機には有名な小説家が乗っていたらしく、その話題で持ちきりだった。プルルルルル。リジェネの携帯が鳴る。
「もしもし、ティエリア!?」
リジェネは、刹那の可能性をかけて話しかける。
「ティエリア・アーデという名前が・・・・墜落した飛行機に・・・そんな・・・・リジェネさん・・・・・そんな・・・・こんなことって・・・・」
ティエリアとリジェネが参加しているユニットのマネージャーからだった。
「ごめん。今、ちょっととりこんでるから。後でかけ直すよ」
リジェネは、携帯を切った。
その後も、リジェネとニールの携帯には、刹那やマリナ、ライルにアニュー、アレルヤにマリー、その他CB関係者の者がひっきりなしに、安否を気遣う電話をかけてくる。

うざくなって、リジェネはニールと自分の携帯を、踏み潰した。

リジェネは、殺気だっていた。ニールは放心したまま動かない。
本当に愛した人を失った時、人はどうなるのか分からない。悲しみにくれるのが普通だろうが、二人とも違った。

「・・・・・・・・ティエリア。僕は、君を作るよ」
リジェネの目は、発狂した科学者のそれだった。
石榴の瞳。
その言葉を境に、いくつもの涙がリジェネの頬を伝う。
それに共感するかのように、ニールのエメラルドの瞳からも、大粒の涙が白い頬を伝った。

「帰ろう、ニール」
「何処へ?」
差し出した手を、ニールは掴まない。
「ティエリアのいない世界なんて、生きていても意味はない」
「それでも、帰ろう。後追い自殺はしないで。僕が、君を生き返らせたように、ティエリアを作るから」
「でも、それはティエリアじゃない。俺が愛したティエリアじゃない」
「それでも!!ライルは、それでもアニューを愛しているじゃないか!あのアニューは、ライルが愛した本物のアニューじゃない。それでも、ライルはアニューを最後まで愛しぬく覚悟があると言った!」

「俺は・・・・・」
ニールは、静かに顔を伏せた。
「ふ・・・・」
リジェネを強く抱き寄せる。
「ニール・・・・」
ニールは、泣いていた。リジェネは、泣きながら、ティエリアを作ると言い張っていたのだ。
リジェネも、泣いた。
二人で、お互いを抱きしめあいながら、泣いた。
言葉もなく。

ただ、悲しみと絶望にくれながら。

やがて、二人は手を繋いで歩きだす。
いつものニールとリジェネなら、ありえないことだった。
「ティエリアを作るまで、僕のことティエリアって呼んでいいから」
「ティエリア、愛している」
「僕も、愛しているよ、ニール」
偽りの恋愛。

ティエリアを作るなんて、そんなこともうできないのを知っていて、リジェネは作ると言い張った。
リジェネに、イノベイターを作る能力はない。
同じ細胞を持っていても。ティエリアの量産型のイノベイターは、CBの地下で管理されて眠っている。どのイノベイターも、カプセルの外で1時間と生きれない。

それでも。
それでも。
刹那の可能性に。

リジェネは笑った。泣きながら。
そんなリジェネを、ニールが抱きしめる。
ティエリア、と呟きながら。
噛み付くようなキスを交わす。二人とも、壊れかけていた。

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