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世界が終わってもⅡ「ティエリアの香り」

「世界が終わったね」
「ああ。終わった」
ニールとリジェネは、手を繋ぎながら家に帰る。
満点の星空を見上げる。

「こんな形で終わるなんて。神なんて、やっぱりいないんだ」
「いないな。俺も、信じてなかったけど、もともと・・・」
ティエリアにもらった、十字架のペンダントを、ニールは外すと、草むらに向かって投げ捨てた。
「いいの?大切にしてたじゃない」
「いらない。ティエリアがいないのなら、持っていても意味はない」
「そうだね・・・・」
リジェネは、首にぶら下げていた、ティエリアからもらった同じ十字架のベンダントを引きちぎって、草むらに捨てた。

三人で、家族の証だからと一緒に買ったペンダント。
もう、いらない、こんなもの。
持っていても、仕方ない。

「世界が終わっても、僕はティエリアを愛しているから」
「世界が終わっても、俺もティエリアを愛している」

二人は、また手をつなぎ会う。

「帰ろうか」
「ああ・・・・」

「大切な人のいなくなった、僕らの家に」
「ティエリアのいなくなった家に・・・」
二人は、ゆっくり歩む。
この一年間の思い出を噛み締めるように。


(リジェネ、リジェネ、リジェネ)
ふいに、精神にはっていたバリケードがとけて、懐かしい声がした。
誰よりも愛しい半身の声が。
「ああ。ティエリアの声が頭の中でするや。僕、壊れちゃった。あはははは・・・・」
「俺も壊れたい・・・・」
「ニール」

「リジェネ、ニール!」

「幻覚が見える」
「俺もだ」

ティエリアは、裸足で、どろどろになって、泣いて、目の前に息も荒くたっていた。
肩をすぎて背中の真ん中くらいまで伸びた髪を振り乱して。

「ニール!!」
ティエリアの幻覚が、ニールに抱きつくと、そのままニールを押し倒した。
「ティエリア?」
ニールが、泥まみれで涙に濡れた、ティエリアの頬を撫でる。
「心配したんだ。何度携帯に電話をかけても、出ないから!家に帰ってもいつまでたっても帰ってこないし!ニュース見て驚いて・・・・リジェネに脳量子波で話かけても応答がなくて。もしかして、思い余って自殺したんじゃないかと、気が気ではなかった・・・・」

石榴の瞳。
涙に濡れた、白皙の美貌。
細い肢体。
中性的な顔立ち。

甘い、百合の香りがする。
それは、ティエリアからいつもする匂い。甘い甘い、とろけるように甘い。

「ティエ・・・リア!!!」
ニールは、ティエリアを抱きしめていた。
リジェネは、最初笑っていたけど、ティエリアが本物であるとわかって、子供のように泣き出した。

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