人魚姫
昔々、あるサンゴ礁が広がる広大な海に、人魚姫という美しい人魚がいました。
人魚姫の声は美しく、それを聞いた人間は魅了されるといいます。
「おいおいおいお、またかい!また僕が主人公なのかい!しかも人魚姫なら、王子が浮竹じゃないと僕は海の泡となって消えるしかないじゃないの!」
その人魚姫は・・・・・・胸毛がもじゃもじゃのおっさんでした。
いえ、京楽でした。
「なに、このかっこ!まるっきり変態じゃないの!」
足の部分は、魚でした。でも上半身は裸で、胸のところは貝でブラジャーをつけていました。
人魚姫は変態でした。
いえ、繊細でした。
多分。
ある日、嵐がおきました。
「こわい」
「怖いわ」
他の姉妹の人魚たちは、洞窟に隠れて嵐がおさまるのを待っていました。
でもおてんばの京楽は、嵐の海の中を泳いでいきます。
「なんだ、船が沈没でもしたのかな・・・・・・・あっ、人だ」
海に面する王国の、王子の船でした。
「このままでは、おぼれ死んでしまう」
京楽は、沈んでいく船を無視して、オレンジ色の髪の少年を海の中で抱き上げると、凄い速度で泳ぎ、海辺までもっていきました。
「これでよし・・・・って、一護君じゃないか。この国の王子ってまさか一護君?」
京楽は、一護があまり好きではありませんでした。想い人である浮竹の副官、海燕に似ているからです。浮竹は、一護のことを特に気に入っていました。それに、京楽がいい顔をするはずがありません。
「王子が浮竹じゃないなら、僕はもう人魚姫やめるよ。海の泡となって消えるなんて、ごめんだからね」
そうは問屋がおろしません。物語は続きます。
京楽は、逃げるように海に帰っていきました。
そんな京楽の元に、人魚の魔女である浮竹が姿を現しました。
「浮竹!」
「京楽、お前に人間の足をやろう。かわりに声をいただく。あの人間の王子、一護君と結ばれなかったら、お前は海の泡となって消えるだろう。それを防ぐには、王子の心臓の血を浴びるしかない」
ぱくぱく。
愛しい京楽に愛を囁こうにも、声を奪われてしまった京楽は何も言えませんでした。
(浮竹!)
「期限は1か月。努々(ゆめゆめ)、忘れるな・・・・」
ぶほんと、浮竹は消えてしまいました。
(浮竹ーーーーー!)
叫びが、声になることはありませんでした。
そして、京楽は助けた一護の元に戻ります。でも、そこに一護の姿はありませんでした。
「お前が俺を助けてくれたのか?俺の名は一護。このクロサキ王国の王子だ。一緒にきてくれ、お礼がしたい。パーティーを開こう」
一護は、褐色の肌の美女を、命の恩人だと思い込んでいました。
「わしの名は夜一じゃ。ほーう、パーティーか。おもしろそうじゃのう」
京楽は浜辺で立ち上がります。
「おや?そこにいるのは京楽ではないか」
京楽と夜一は、酒飲み仲間の友人同士であったため、互いを知っていました。
「ぬおおおおおお、フルチンのおっさん!?」
京楽はびっくりしました。
何せ、人魚の部分は失い、人の足をもっていたからです。
裸でした。
フルチン状態でした。
やっぱりへんた・・・げほごほ。
「これでも着て前を隠せ!」
一護が、京楽に自分のマントを投げ捨てました。
そして、一護は夜一と京楽を連れて城に帰還しました。
「すぐに、宴の用意を」
「かしこまりました一護様・・・・・なんていうと思っているのかこのたわけ!」
「おぶっ!」
メイドのルキアからの蹴りを顔面に喰らって、一護はその場に頽れます。
「また、奇妙な人間を連れて帰ってきてからに。名前は?」
「夜一じゃ。こっちは京楽じゃ」
「何すんだよルキア!」
「それはこっちの台詞だ!メイドである私に手を出しておきながら、まだ物足りぬというのか!」
「ああ、物足りないね。俺は、夜一さんと結ばれる運命なんだ」
「たわけ!」
スリッパで、一護の頭をひっぱたくルキア。
そんなやりとりが続いた翌日、豪華な、王子の生還記念のパーティーが開かれました。
京楽は、そのごつい体にひらひらでふわふわのドレスを着せられていました。鏡に映る自分の姿に、幻滅しています。
夜一はというと、扇情的なドレスを着ていましたが、パーティーの御馳走ばかり食べていました。
「夜一さん。俺の命の恩人だ。結婚してくれ」
ダンスをかねた求愛を申し込むと、夜一は首を振りました。
「わしには、すでに心にきめた砕蜂がいるからのう。お主と結婚はできぬ」
「じゃあ、京楽さん、あんたでいい俺と結婚してくれ」
途中で、声色が変わりました。
「ってルキアお前!何俺の真似してるんだ!」
ルキアが、一護の声真似をして京楽を口説きます。
それに、京楽はこくこくと頷きました。
「って、京楽さん!?」
(結ばれたくなんかないが・・・・殺して心臓の血を浴びるよりは・・・・・)
京楽も、一護を殺すことまではできかねているようでした。
時間は流れます。
1か月の月日が流れました。
京楽は、生きていました。一護と結ばれ、結婚したのです。
海の泡になることもなく、一護を殺して心臓の血を浴びる必要もありませんでした。夜一が砕蜂という恋人を通しててにいれた、惚れ薬の効果でした。
「一護!私というものがありながら、何を京楽隊長と結婚しているのか!しっかりしろ、お前は惚れ薬を使われているのだ!」
「なんだよルキア。俺は今幸せなんだよ。京楽さんの、もじゃもじゃした胸毛に顔を埋める至福の時を邪魔しないでくれ」
「一護!」
ルキアは、涙を流して一護に抱き着きます。
パリン。
どこかで、罅が入った音がしました。
ルキアという少女の涙は、人魚姫の涙でした。人魚姫は実はもう一人いたのです。それはルキアでした。
嵐の海の日に一護を助け、一護に一目ぼれしてしまったルキア。魔女の浮竹から、足を与える代わりに、斬魄刀を失い、死神の力を全て失いました。
一護と結ばれなかったら、海の泡になる。
そうなる前に、ルキアは一護と結ばれました。
けれど、一護は魔王藍染の呪いを受けており、ルキア一人を愛するだけでは足りなくなっていたのです。ルキアが人魚姫だったことを忘れ、ただの手を出してしまったメイドと認識していました。
「ルキア・・・・・なのか?」
「正気に戻ったのか、一護!」
二人は、お互いを離そうとせず、抱擁しあい、キスをしました。
「結局、僕はふられるわけね」
ひらひらのドレスをきた京楽は、煙管の煙草に火をつけて、ゆっくりと煙をすいました。
夜一はというと、近衛騎士の位を与えられ、恋人の砕蜂と王宮で幸せに暮らしています。
今幸せでないのは、京楽くらいでしょうか。
紫煙をくすぶらせていると、それはやがて人の形をとり、ぼふんと魔女の浮竹が現れました。
「みんなハッピーエンドになるのに、お前だけに寂しい思いはさせられないからな」
「浮竹!」
一護と結婚したことで、京楽は声をすでに取り戻していました。ただ結婚しただけで、一護と京楽の間にはなんの関係もありませんでした。
そして、一護が愛するのは本当の人魚姫だったルキアでした。
浮竹は、京楽の手をとります。
「還ろう。あの海へ」
浮竹が魔女になっていたのも、藍染の呪いによるものでした。
全てはありのままの形に。
京楽は人魚に戻り、同じただの人魚に戻った浮竹と、サンゴ礁の海漂いながら、幸せに暮らしています。
浮竹は、愛染の呪いに抗い、一度海の泡になりました。そこから霊子をためて、なんとか人魚の魔女の姿になると、訪れてくる人魚に難題を与えることで、生気を得て、生きていました。
人魚姫のルキアが、魔王の呪い解く乙女の涙という古代のアイテムを生成してくれたお陰で、魔
王藍染の呪いにかかってい人たちは皆解放されました。
そして、時は刻まれます。
ルキアと手をとって立ち上がった王子、一護が、魔王愛染を倒したのです。
その日は、世界中でパレードがおこなわれました。花びらが舞い散り、踊り子たちがルキアと一護の結婚を祝います。
そんな姿を、海の底から浮竹と京楽が見ていました。
「外の世界は、楽しそうだねぇ」
「また、いってみるか?外の世界へ」
「いいや、海の中でいいよ。ここが僕たちのいる居場所なんだから」
人魚姫は、海の泡になることも、愛した王子を殺し、心臓の血を浴びることもなく。
いつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。
人魚姫の声は美しく、それを聞いた人間は魅了されるといいます。
「おいおいおいお、またかい!また僕が主人公なのかい!しかも人魚姫なら、王子が浮竹じゃないと僕は海の泡となって消えるしかないじゃないの!」
その人魚姫は・・・・・・胸毛がもじゃもじゃのおっさんでした。
いえ、京楽でした。
「なに、このかっこ!まるっきり変態じゃないの!」
足の部分は、魚でした。でも上半身は裸で、胸のところは貝でブラジャーをつけていました。
人魚姫は変態でした。
いえ、繊細でした。
多分。
ある日、嵐がおきました。
「こわい」
「怖いわ」
他の姉妹の人魚たちは、洞窟に隠れて嵐がおさまるのを待っていました。
でもおてんばの京楽は、嵐の海の中を泳いでいきます。
「なんだ、船が沈没でもしたのかな・・・・・・・あっ、人だ」
海に面する王国の、王子の船でした。
「このままでは、おぼれ死んでしまう」
京楽は、沈んでいく船を無視して、オレンジ色の髪の少年を海の中で抱き上げると、凄い速度で泳ぎ、海辺までもっていきました。
「これでよし・・・・って、一護君じゃないか。この国の王子ってまさか一護君?」
京楽は、一護があまり好きではありませんでした。想い人である浮竹の副官、海燕に似ているからです。浮竹は、一護のことを特に気に入っていました。それに、京楽がいい顔をするはずがありません。
「王子が浮竹じゃないなら、僕はもう人魚姫やめるよ。海の泡となって消えるなんて、ごめんだからね」
そうは問屋がおろしません。物語は続きます。
京楽は、逃げるように海に帰っていきました。
そんな京楽の元に、人魚の魔女である浮竹が姿を現しました。
「浮竹!」
「京楽、お前に人間の足をやろう。かわりに声をいただく。あの人間の王子、一護君と結ばれなかったら、お前は海の泡となって消えるだろう。それを防ぐには、王子の心臓の血を浴びるしかない」
ぱくぱく。
愛しい京楽に愛を囁こうにも、声を奪われてしまった京楽は何も言えませんでした。
(浮竹!)
「期限は1か月。努々(ゆめゆめ)、忘れるな・・・・」
ぶほんと、浮竹は消えてしまいました。
(浮竹ーーーーー!)
叫びが、声になることはありませんでした。
そして、京楽は助けた一護の元に戻ります。でも、そこに一護の姿はありませんでした。
「お前が俺を助けてくれたのか?俺の名は一護。このクロサキ王国の王子だ。一緒にきてくれ、お礼がしたい。パーティーを開こう」
一護は、褐色の肌の美女を、命の恩人だと思い込んでいました。
「わしの名は夜一じゃ。ほーう、パーティーか。おもしろそうじゃのう」
京楽は浜辺で立ち上がります。
「おや?そこにいるのは京楽ではないか」
京楽と夜一は、酒飲み仲間の友人同士であったため、互いを知っていました。
「ぬおおおおおお、フルチンのおっさん!?」
京楽はびっくりしました。
何せ、人魚の部分は失い、人の足をもっていたからです。
裸でした。
フルチン状態でした。
やっぱりへんた・・・げほごほ。
「これでも着て前を隠せ!」
一護が、京楽に自分のマントを投げ捨てました。
そして、一護は夜一と京楽を連れて城に帰還しました。
「すぐに、宴の用意を」
「かしこまりました一護様・・・・・なんていうと思っているのかこのたわけ!」
「おぶっ!」
メイドのルキアからの蹴りを顔面に喰らって、一護はその場に頽れます。
「また、奇妙な人間を連れて帰ってきてからに。名前は?」
「夜一じゃ。こっちは京楽じゃ」
「何すんだよルキア!」
「それはこっちの台詞だ!メイドである私に手を出しておきながら、まだ物足りぬというのか!」
「ああ、物足りないね。俺は、夜一さんと結ばれる運命なんだ」
「たわけ!」
スリッパで、一護の頭をひっぱたくルキア。
そんなやりとりが続いた翌日、豪華な、王子の生還記念のパーティーが開かれました。
京楽は、そのごつい体にひらひらでふわふわのドレスを着せられていました。鏡に映る自分の姿に、幻滅しています。
夜一はというと、扇情的なドレスを着ていましたが、パーティーの御馳走ばかり食べていました。
「夜一さん。俺の命の恩人だ。結婚してくれ」
ダンスをかねた求愛を申し込むと、夜一は首を振りました。
「わしには、すでに心にきめた砕蜂がいるからのう。お主と結婚はできぬ」
「じゃあ、京楽さん、あんたでいい俺と結婚してくれ」
途中で、声色が変わりました。
「ってルキアお前!何俺の真似してるんだ!」
ルキアが、一護の声真似をして京楽を口説きます。
それに、京楽はこくこくと頷きました。
「って、京楽さん!?」
(結ばれたくなんかないが・・・・殺して心臓の血を浴びるよりは・・・・・)
京楽も、一護を殺すことまではできかねているようでした。
時間は流れます。
1か月の月日が流れました。
京楽は、生きていました。一護と結ばれ、結婚したのです。
海の泡になることもなく、一護を殺して心臓の血を浴びる必要もありませんでした。夜一が砕蜂という恋人を通しててにいれた、惚れ薬の効果でした。
「一護!私というものがありながら、何を京楽隊長と結婚しているのか!しっかりしろ、お前は惚れ薬を使われているのだ!」
「なんだよルキア。俺は今幸せなんだよ。京楽さんの、もじゃもじゃした胸毛に顔を埋める至福の時を邪魔しないでくれ」
「一護!」
ルキアは、涙を流して一護に抱き着きます。
パリン。
どこかで、罅が入った音がしました。
ルキアという少女の涙は、人魚姫の涙でした。人魚姫は実はもう一人いたのです。それはルキアでした。
嵐の海の日に一護を助け、一護に一目ぼれしてしまったルキア。魔女の浮竹から、足を与える代わりに、斬魄刀を失い、死神の力を全て失いました。
一護と結ばれなかったら、海の泡になる。
そうなる前に、ルキアは一護と結ばれました。
けれど、一護は魔王藍染の呪いを受けており、ルキア一人を愛するだけでは足りなくなっていたのです。ルキアが人魚姫だったことを忘れ、ただの手を出してしまったメイドと認識していました。
「ルキア・・・・・なのか?」
「正気に戻ったのか、一護!」
二人は、お互いを離そうとせず、抱擁しあい、キスをしました。
「結局、僕はふられるわけね」
ひらひらのドレスをきた京楽は、煙管の煙草に火をつけて、ゆっくりと煙をすいました。
夜一はというと、近衛騎士の位を与えられ、恋人の砕蜂と王宮で幸せに暮らしています。
今幸せでないのは、京楽くらいでしょうか。
紫煙をくすぶらせていると、それはやがて人の形をとり、ぼふんと魔女の浮竹が現れました。
「みんなハッピーエンドになるのに、お前だけに寂しい思いはさせられないからな」
「浮竹!」
一護と結婚したことで、京楽は声をすでに取り戻していました。ただ結婚しただけで、一護と京楽の間にはなんの関係もありませんでした。
そして、一護が愛するのは本当の人魚姫だったルキアでした。
浮竹は、京楽の手をとります。
「還ろう。あの海へ」
浮竹が魔女になっていたのも、藍染の呪いによるものでした。
全てはありのままの形に。
京楽は人魚に戻り、同じただの人魚に戻った浮竹と、サンゴ礁の海漂いながら、幸せに暮らしています。
浮竹は、愛染の呪いに抗い、一度海の泡になりました。そこから霊子をためて、なんとか人魚の魔女の姿になると、訪れてくる人魚に難題を与えることで、生気を得て、生きていました。
人魚姫のルキアが、魔王の呪い解く乙女の涙という古代のアイテムを生成してくれたお陰で、魔
王藍染の呪いにかかってい人たちは皆解放されました。
そして、時は刻まれます。
ルキアと手をとって立ち上がった王子、一護が、魔王愛染を倒したのです。
その日は、世界中でパレードがおこなわれました。花びらが舞い散り、踊り子たちがルキアと一護の結婚を祝います。
そんな姿を、海の底から浮竹と京楽が見ていました。
「外の世界は、楽しそうだねぇ」
「また、いってみるか?外の世界へ」
「いいや、海の中でいいよ。ここが僕たちのいる居場所なんだから」
人魚姫は、海の泡になることも、愛した王子を殺し、心臓の血を浴びることもなく。
いつまでもいつまでも、幸せに暮らしましたとさ。
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