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白雪姫(おまけ・イチルキ「運命をこえて走り出せ」

昔昔、あるところにとても美しい少女が住んでおりました。

その名を、白雪姫といいます。

白雪姫は・・・・・・ぬいぐるみに入れられた改造魂魄の、コンでした。

「おいっ!思いっきり配役ミスりやがって!この小説、これがはじまりなんだろ!なんとかしやがれっ!」

ぬいぐるみの白雪姫は、叫びます。

「うるさい!」

「おぶ!」

近衛騎士のルキアが、コンを踏みつけました。

ぐりぐりと容赦なく踏みつけられて、コンは幸せそうでした。

「ねぇさん!そのねえさんの絶壁の胸で、俺を抱き締めて!」

「今の私の配役は確かに男性だが、絶壁とは聞き捨てならん!」

さらにグリグリと踏みつけていると、父親である王の恋次が、ルキアを呼びました。

「おーいルキア。菓子もらったんだけど、食うか?」

「たわけ!もっと堂々としろ!仮にも、一国の王だぞ」

「そう言われてもよぉ。普通白雪姫でいくなら、ルキアが白雪姫だろ?斬魄刀も袖白雪だし・・・・なんで、白雪姫がコンなんだ。ただの改造魂魄じゃねぇか!」

「そんなこと、私が知るわけなかろう!やり直し!take2だ!」

近衛騎士のルキアは、本来白雪姫には登場しません。でも、どうしてもルキアがいないと物語が進まないため、無理やり役を与えられました。

「おーいコン、菓子もらったんだけど、食うか?」

「ばかにするなっ!こちとら、男とお菓子を食べる趣味はねぇっ!」

「うっせーな、改造魂魄の分際で」

恋次は、ぐりぐりとコンを踏みつけます。

「わた、綿でるからぁっ!」

なんだかんだで、白雪姫のコンは父親の国王恋次にばかにされ・・・・・いや、寵愛を受けていました。




「鏡を鏡よ、世界で一番美しいのは誰・・・・・・・って、なんで僕が王妃役なんだ!」

雨竜は、白雪姫の母親の役でした。

「だいたい、なんで白雪姫がコンなんだ。普通、朽木さんとか井上さんとか・・・・」

ちなみに、鏡役は日番谷でした。

「うっせーな。鏡である俺が告げる。世界で一番美しいのは雨竜、お前でなく、お前の娘のコンだ!」

「なんだと!」

雨竜はショックを受けました。

「くそいまいましいコンめ!どうしてくれよう・・・・でいいんだっけ?」

台本を読みながらの雨竜ですが、話は進みます。



白雪姫のコンは、溺愛してくる父王から逃れるため、また意地悪をしてくる母の王妃から逃れるために、城を抜け出しました。

森の中に逃げ込んだコンは、迷子になりました。

「んー?ここどこだ?」

わらわらと、7人の小人がやってきました。

「かわいいねぇ、君」

「かわいいな」

「くっそかわいいぜ」

「僕の方がかわいいよ!」

「・・・・・・夜一様のほうが美しい」

「おう、これは珍しいいきものだのう」

「おやコンさん、どうなされました?」

上から順に、京楽、浮竹、一角、弓親、砕蜂、夜一、浦原でした。


7人の小人に囲まれて、コンは幸せな日々を過ごします。

でも、その幸せもつかの間のものでした。



「鏡よ、いまコンがどこにいるのかわかるかい?」

「コンは、南の森にいる」

鏡役の日番谷は、氷輪丸で鏡を割って自由になると、どこぞなりと去って行きました。

「おのれコンめ。世界で一番美しいのは、滅却師である僕だ!」

雨竜は、この日のために毒林檎を育てていました。

魔法で醜い老婆の姿になると、森へいき、小人と楽しそうに過ごしているコンに近づきました。

「お嬢さん・・・美味しい林檎はいかが?」

「おっ。けっこううまそうだな。もらいっ」

コンは、老婆から毒林檎をぱくると、もきゅっと音をたてて食べました。ぬいぐるみの分際で、飲食できるのか?そういうのはまぁ省いて。

「うっ」

コンは、毒林檎を落としました。

「ふっふっふ、僕が渡したのは毒林檎だ。これで、世界一の美女は僕だ!」

雨竜は、滅却師模様の施されたマントを着ていました。マントを風でなびかせて、コンが息絶えたことを確認すると颯爽と去って行きました。

「やぁ、かわいそうだねぇ」

京楽が、コンを抱きかかえました。

「花畑があるから、そこに寝かせればいいんじゃないか?」

浮竹が、コンの体を預かって、花畑へ行くと置いてあった棺の中に、そのぬいぐるみの体を横たわらせました。

「ほれほれ、砕蜂、次はおぬしの番じゃ」

「夜一様・・・・・!」

砕蜂と夜一は、役目を放棄してババ抜きをしていました。

一角は強いやつはいねぇかと飛び出していき、それを追った弓親は、僕は美しいとかいいながら去っていきました。

「こりゃ、荒れますねぇ」

浦原は、コンに美しいドレスを着せて、花畑の棺に王子様のキスで目覚めると看板を立てました。

やがて時はたちます。

7人の小人たちが、コンの存在を忘れた頃。

隣国の王子様がやってきました。

「何々・・・・美しいお姫様が眠っている。口づけで目を覚まし、あなたの伴侶となるでしょう?なんだこりゃ」

隣国の王子である一護は、花畑にやってきました。

「美しい!・・・・・・・・わけねーだろ」

棺を足蹴りしました。

「こんなぬいぐるみに、誰がキスするんだ?」

「貴様がだっ!」

近衛騎士のルキアが現れて、一護とコンを無理やりキスさせました。

「おえええええええ」

「うげええええええ。一護とキスしちまった!姉さん、慰めて!」

コンをぐりぐりと足で踏みつけて、ルキアは言います。

「今日から、これが貴様の伴侶だ」

綿の飛び出たコンを突き付けますが、一護は舌打ちします。

「こんなぬいぐるみを、伴侶にしろだって?バカいうなよ」

「こいつは、この国の姫だ。隣国の王子である貴様とは、身分が釣り合うであろう?」

「そんな問題じゃねーよ。伴侶にするなら、ルキア、お前しかいねぇ」

「え、え、え!?」

一護は、近衛騎士であるルキアにキスをしました。すると、すべての魔法が解けていきます。

白雪姫はコンではなく、ルキアでした。災厄の魔王、藍染によって、国中に呪いがかけられていたのです。

「私が白雪姫だと・・・・・」

父王の恋次はいなくなり、初老の国王がそこにはいました。意地悪な王妃の雨竜もいなくなり、ただ美しいだけの王妃がいました。

「これで、めでたくイチルキだ・・・・・兄は、一人の男として最後までルキアを守れ。それが誇りとなる」

「兄様!?」

王家の鏡に封印されていた死神の、朽木白哉が蘇りました。

「兄様・・・・やはり、ご無事だったのですね」

ルキアが嬉しそうに白哉に抱き着きます。

「ルキア・・・・・・義兄といえど、あんまり他の男といちゃいちゃするんじゃねぇ」

一護が、そんなルキアを抱き寄せます。

「どうしたのだ、一護」

「これ、一応イチルキってことになってるからな」

その細い体を抱き締めて。一護はルキアの耳元で囁きます。

「結婚しよう。大切にする。愛している」

「一護・・・・・・・・」

二人は見つめ合いキスを交わして、そして二人は結ばれ、隣国の王子と白雪姫は、長い時を幸せに過ごしましたとさ。


「ん?なんか忘れてねぇか?」

「そうか?」

一護とルキアは、二人で首を傾げます。

「あ、コンだ。存在そのものを忘れてた」

「ああそういえば。まぁいいか」



「ねえさーん、一護ーーー!!どこにいっちまったんだよー!俺を置いていかないでくれーー!」


パラレルワールドから弾かれたコンは、ふわふわと現実に還っていきます。








「姉さん!一護!」

はっと起きると、そこは一護の部屋だった。

「なんだ、夢かぁ」

押入れから顔をのぞかせると、一護がベッドで眠っていた。一護が、霊圧をなくしてもう1年以上になる。

「姉さん!」

慣れ親しんだ霊圧を感じて、コンは顔をあげた。

「しーっ」

ルキアが、尸魂界からぬけだしてこっそりと一護の部屋にやってきたのだ。

「騒ぐな」

「ねぇさん、一護が起きていない間でいいのか?」

「たわけ。一護は、私の姿は見えず、声も聞こえないのだぞ。技術開発局が開発した、霊圧をもたぬ者でも死神が見える、スーパーチャッピー丸がないと、一護には何も届かん。スーパーチャッピー丸はとても希少で、金があっても買えないのだ」

朽木家の財力をもってしても買えない代物なのだと、苦笑する。

「でも、文字をかいたり、触れることはできるって・・・・・」

「今はそれすら危うい。私の霊圧があがったせいで、一護に触れることができなくなっている・・・でも、今日は特別だ・・・・」

「ああ、一護の誕生日か」

「そうだ。プレゼントも、ちゃんと用意してある」

プレゼントは、チャッピーの着ぐるみだった。

うわぁ、一護、これ着ないだろうなぁとコンは思ったが口には出さなかった。

「誕生日、おめでとう一護。今、隊長副隊長が集まって、剣に霊力を注ぎ込んでいる。絶対に、もうすぐ貴様は霊圧を取り戻す」

そうしたら。

何を話そう?何をしよう?

ルキアは、眠っている一護の頬に手をあてて、そっと触れるだけのキスをした。

「貴様と、私は、歩む道が違う。きっと、結ばれない。それでも・・・・・・・」

それでも。

私は貴様のことが好きだ、一護。


そう言葉を飲みこんで、ルキアは懐から霊圧がない者でも見える手紙を机の上に置いた。

そして、机の上に置かれてあった、この前一護にところにきた時に渡した手紙の返事の手紙を懐に大切そうにしまう。

「またな、一護」


いつか、道が違うとしても。

重なり合った心は消えない。

築きあげた絆は断ち切れない。


それは、朱い糸に似ている。

運命を、こえて。

たくさんの障害物を粉々に打ち砕いて。


いつか、きっと。

お前と、共に、永遠を。


たとえ、道が違おうとも。

運命をこえて、走り出せ





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