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僕はそうして君におちていく外伝

霊王が降りてくる。

下界へ。

10年の一度、霊王は下界に降りてきた。

それは、浮竹が霊王になってからのことだった。

前の霊王は水晶に閉じ込められていて、楔だの人柱だの言われていた。

今の霊王は、清らかな空気をまとった、長い白髪に翡翠の瞳をもつ麗人だった。

「霊王様だわ!いつ見ても麗しい」

「ほんと、雲の上の方ってかんじ」

十二単をまとい、髪を結い上げて、金銀細工で象られた宝冠を頭にかぶっていた。

司祭が祝詞を唱えて、霊王に10年間世界が平穏であったことへの感謝をしめす。

霊王は宝剣を抜き、護廷十三隊の隊長副隊長の肩に、宝剣を触れさせて、清浄なる力を流して、霊力の上昇を促した。

中には、見違えるように霊圧が上がる者もいた。

京楽は、霊王の宝剣を受け取り、声高々に宣言する。

「尸魂界に霊王はおわす!霊王いる限り、世界は続く!平和を、高い天上の霊王宮にて祈られている!それに我らは、答えねばならぬ!霊王万歳!」

「霊王万歳!」

「霊王様万歳!」

「霊王様!」

「霊王様万歳!」

霊王を祭る祭儀場は、死神と人々の声で熱気があふれていた。

霊王は、その姿を見届けて、霊王宮に戻った。

戻った、ように見せかけた。

「よう、京楽。遅かったな」

「祭事を抜け出すなんて、なかなかできないからね。さぁ、僕の霊王様は、今日はどんな我儘を言うんだい?」

「花見がしたい」

「なんの花?」

「桜だ」

「今七月だよ。桜、咲いてない・・・・・・」

「俺が力を注ぎ込めば、桜は咲く」

「じゃあ、僕の別邸にいこうか。大きな桜の木があるんだ」

10年に一度、霊王は下界に降りてきて、祭事をする。

けれど、本当は京楽に会うために降りてくるのだ。


京楽の別邸に、二人は歩きながら向かった。

浮竹は、霊王ではなく普通の死覇装をまとい、まるで死神として復活したかのような出で立ちだった。

認識阻害の術が浮竹にはかけられていて、浮竹を見てもそれを霊王だと思う者はいない。下界に降りてきても、浮竹のことを知っている隊長や副隊長、その他の死神は浮竹とは違う者の姿を目でとらえて、誰も霊王が浮竹であると気づかなかった。

京楽だけが、例外だったのだ。

霊王に愛されているこの男は、あろうことか霊王と契り、霊王の残滓を身に宿すようになった。

清浄なる気を、生み出す力。

そのお陰か、月に一度の逢瀬で、京楽の気に触れて散っていく草木や花は、散ることがなくなった。

月の一度の逢瀬を、隠し事にせずに堂々としていられた。

今の零番隊は、新たに招集された面子でできており、京楽のことや浮竹のことを知らない。

ただ、霊王の意思に従い、守るだけだ。

「ここだよ」

京楽が、歩みを止めた。

何度か浮竹も来たことのある、京楽の持つ館の一つだった。維持に人は置いているため、急な帰りにも対処できるようにしていた。

ただ、食事は食材を手に入れいれなければならないので、少し事前に知らせておいた。

今頃、厨房は慌ただしいことになっているだろう。

「酒は?」

「あるよ。君の好きな果実酒もあるよ」

霊王である浮竹は、隊長であった頃よりさらに膨らんだ霊圧を、葉桜になっていた大樹に流した。

ざぁぁぁ。

葉桜が散り、桜色の蕾ができて、次々に開花していった。

「すごいね」

「今なら、お前のその右目を治すこともできる」

「遠慮しておくよ。これは、僕のけじめだから」

総隊長となった証でもあるのだからと、浮竹の願いであるが、それだけは聞き入れられないと、京楽はいつも頑なに拒んだ。

「料理、もってきてもらうから、飲もう」

「ああ」

京楽と浮竹は、月が出るまで酒を飲んで、語り合った。


「でね、七緒ちゃんが・・・・・・」

浮竹は、むすっとしていた。

「どうしたの、浮竹?」

「さっきから、伊勢の話ばかりだ。面白くない」

「ああ、ごめん。君は、僕に会いにきてくれたんだよね」

寝室に移動して、浮竹を押し倒した。

サラサラと、白い腰よりも長くなった髪が畳に流れる。

「髪、長いね。洗うの大変じゃない?」

「身の回りの世話をしてくれる者が洗ってくれるので、大分楽だ」

その言葉に、京楽が眉を寄せる。

「君の肌を、誰かに触らしているの?」

「いや、髪を洗ってもらうだけだ。体は自分で洗っているし、せいぜい十二単を着る手伝いをしてもらうくらいで、あとは食事の用意や風呂の用意をしてもらったり、暇つぶしに本をもってきてもったり・・・・お前が思っているようなことは、ない」

「僕の浮竹に触れていいのは、僕だけだから」

「霊王になってもか」

「うん」

「髪くらいは、許してやれ。一人で洗うのは大変なんだ」

「切っちゃえば?」

「霊王の肉体は霊力に満ちているから。髪の一本、爪の欠片さえ、負なる物の恰好の餌になる」

「虚とか?」

「そうだな。だから、霊子に返すために、常に身は清浄であらねばならない。下界に降りれない最もな理由はそこだ」

「今から僕とすること、清浄じゃないよ。それでもいいの?」

「京楽、お前は俺を抱き続けたことで、霊王の残滓を魂に混じらせている。今のお前は、清らかな存在だ。霊王である俺と交じりあっても、なんの害もない」

「それを聞いて安心したよ。ねぇ、抱いていいかな?」

「もとよりそのつもりで降りてきた。好きなようにしろ」

「愛しているよ、十四郎。僕の、霊王」

「春水・・・俺だけが、愛した者。霊王である俺は、春水を愛している」

今でも時折、先代の霊王の意思がまじって、意識が混濁することがあるが、大分慣れた。

浮竹は、はじめ自分が霊王だと言えなかった。

霊王の代わりにされたと思っていた。けれど、浮竹はもう代わりでもなんでもなく、霊王そのものだった。

「んっ」

ぴちゃりと、首筋を舐められた。

耳を甘噛みされて、京楽の黒髪に手を伸ばす。

「んあっ」

浮竹の桜色の唇を啄んでいた京楽が、口を開いた浮竹の口内に舌を入れる。ぬるりと入ってきた舌は、浮竹の舌を絡め合って、歯茎などをなぞっていった。

「んんっ」

呼吸が苦しそうなので、いったん舌を引き抜くと、情欲で濡れた翡翠の瞳と視線が合った。

「もっと・・・」

「かわいい」

浮竹を抱きしめて、正装である十二単ではない、普通の死覇装を脱がしていく。十二単を脱がすのは苦労したが、死覇装はすぐに脱がせれた。

鍛錬をやめたわけではないようで、浮竹には薄いが筋肉がきちんとついていた。

「あっ」

胸の先端を口にふくまれて、転がされる。

京楽の唇は、鎖骨と胸に花びらを散らした。

そのまま、腹、へそへとさがっていき、最後に花茎を口に含んだ。

「んあ!」

霊王の体は、なんと甘いことか。

甘露だ。

「やぁっ」

何度も舐めて先端を舌でぐりぐりと舐めながら、全体を手でしごいていると、浮竹は精液を京楽の口の中にはきだしていた。

その味もまた、甘かった。

霊王になった浮竹は、純度の高い霊子で構築されていて、甘かった。

「綿あめみたい」

「そんなに、俺は甘いか」

「うん、甘いよ。飴みたい」

くすりと、浮竹は笑って、自分から足を開いて京楽を迎え入れる。

京楽は、すぐに挿入はせずに、まずは潤滑油を手の温度になじませて指ですくいとると、蕾に指を押し入れた。

「あっ」

前立腺をかすめた指先に、声が漏れる。

「もっと声、聞かせて?」

「ああ、やっ」

くちゅくちゅと、指を増やして蕾を解していく。トロトロに溶けた頃合いを見計らって、京楽は自分の熱に潤滑油をぬりたくり、浮竹を貫いた。

「ああああ!!!」

そのまま、ゆっくりと浮竹を起き上がらせる。

「あ!」

騎乗位になっていた。

自分の体重で、ずぶずぶと京楽のものを飲みこんでいく。

「好きなように動いていいよ」

「春水・・・・」

浮竹は、ゆっくりと動いた。前立腺を自分ですりあげるように動いて、浮竹は精液を京楽の腹に散らせた。

「もういいかな?僕も動くよ」

「あ、まだだめ、いってる、途中、だ、から・・・・・ああああ!」

下から思い切り突き上げられて、ごちゅんと結腸にまで京楽のものは入ってきた。

「や、深い・・・・」

「ここ、好きでしょ?」

奥でぐりぐりと動くと、浮竹はこくこくと頷いて、京楽に全てを任せた。

「やっ、大きい・・・・・」

「僕の子、孕んでね」

最奥にびゅるびゅると精液を注ぎ込んで、京楽は果てた。

それでも足りずに、3回ほど浮竹を好きなように犯してから、ぐったりとなった浮竹を抱きしめた。

「寝ちゃってる・・・お風呂は、起きてからでいいか」

浮竹の体をふいて清めて、中に出したものをかき出した。

唇を重ねると、やはり甘かった。

「愛してるよ、十四郎。僕だけが、君にこうやって触れられる。僕は満足だよ。君を、霊王宮に戻したくないけど、月に一度会えるならそれでいい」

本当は、毎日のように会いたいけれど。

生きる世界が違うのだ。

はるか天上にある霊王宮は、神の領域だ。

霊王は、ある意味神だ。

神を抱いているなんて知ったら、他の死神や流魂街の住人は仰天するだろう。

だが、その神自体が、霊王そのものが京楽に抱かれるために、京楽を月に一度、霊王宮に招き入れるのだ。

全ては霊王の御心のままに。

眠り続ける愛しい人の、長い白髪を撫でながら、京楽もまた眠りにつくのであった。






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