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出会いと別れ

「腹減ったろ。適当につくったから、食ってけよ」

黒崎家で、深夜妹たちが寝静まった後、一護がありあわせの材料で食事を作ってくれた。

付き合い始めて、2か月目の終わりのことだった。

「貴様がまともなものなど作れるとは思わぬがな」

野菜炒めを口にすると、思っていた以上の味に、はしがとまらなかった。デザートにはカットされたパイナップルがついていた。

「うむ。思ったより美味だった」

「そうか」

「どうして、急に料理などする気になったのだ?」

「この家出て、アパート借りて一人暮らししようと思ってるんだ。今はその資金の貯蓄中」

一護は、バイトをいくつか掛け持ちしていた。最近はラーメン家のバイトをはじめたとかで・・・味にうるさい店主も、一護の作ったラーメンには文句をいえなかったとかで。

「そのラーメン家はどこにある?」

「空座町の------------」

その日、一護とルキアまたいつものように、一つのベッドで眠った。

次の日、起きると腕の中にルキアはいなかった。

尸魂界に帰るとはいってなかったので、多分虚退治に出かけたのだろう。家族がいるが、ルキアのこと話していなかったが、父親は気づいているらしかった。

朝食の席で、こう言われた。

「ルキアちゃんを悲しませるんじゃねーぞ」

「親父には関係ねぇよ。これは俺たち二人の問題だ」

「え、ルキアちゃんがどうしたの」

「なんでもねーよ」

妹たちには話さない。

付き合い始めて2か月目の終わりは、何の問題もなく過ぎて行った。


その日の夕方、いつものようにラーメン店でバイトをしていると、小さな影が入ってきた。

「ルキア!?」

「うむ。貴様のラーメンを食べにきてやった」

私服はいつものワンピース姿だった。ルキアの買い物に付き合わされることもあるが、ルキアは好んでワンピースの服をかっていた。

その服は、一護の部屋の押し入れになおされている。

一度一護の部屋にいき、服を着替えて義骸はいってやってきたのだろう。

義骸でないと、霊圧のない人間に姿は見えない。最近のルキアはよく義骸に入っていて、昨日の夜のように死神姿でいることのほうが稀だった。

「いらっしゃいませ」

やや引きつった笑顔で、ルキアの前にお冷とおしぼしをもっていく。

「ご注文は?」

「貴様がほしい」

「俺一丁・・・・じゃねーだろ」

「おすすめは?」

「豚骨ラーメン定食だな。安いし美味いし、炒飯もついてくる」

「じゃあ、それで」

店の店主にオーダーを通りして、一護がラーメンを作りに厨房に消えて行った。

「ふむ。小汚い店だな」

けっこう綺麗なのだが、朽木家の屋敷を見慣れているルキアには、狭いただの小屋に見えた。
草崎家でさえ、ルキアにいわせれば狭いだけの家だ。

「豚骨ラーメン定食お待ち!」

一護が、豚骨ラーメン定食をもってきた。

「店主!」

ルキアが、店主を呼んでごにょごにょとやり取りをする。万札を数枚に握らせて、店主は一護に今日のバイトはもう終わりで、ルキアの元についているようにと命令してきた。

「てめぇ、金で俺を買ったな?」

「それがどうした」

さも当たり前とばかりに、ルキアは割りばしを手に取った。

「着替えてこい。それから、帰る準備もしてこい」

「へいへい・・・・・・」

一護が着替えて、荷物をもって帰る支度をしている頃には、ルキアが豚骨ラーメン定食を食べ終えてしまっていた。

「食うの早いな、お前・・・・」

「うまかったぞ。昨日の夜食といい、お前のつくるものは美味だな。朽木家の厨房係になる気はないか?」

「ねーよ。尸魂界の住人じゃねーんだから」

冗談を言いあう。

ルキアは、勘定をすませて、一護とラーメン店を出た。

「私が、貴様の一人暮らしの資金を援助してやるといっても、貴様はうけとらぬであろう?」

「当たり前だ!」

一護にも、プライドがある。

「今の一護は、私がラーメン店から2時間ばかりの時間を買ったのだ。ご主人様と呼べ」

「はぁ?・・・・まぁいいか。なんか用かよ、ご主人様」

「キスをしろ」

止まって、アメジストの瞳を閉じる。

一護は、ごくりと唾を飲み込んで、ルキアの唇に唇を重ねた。

「んう・・・・」

舌と舌を絡ませあいながら、お互いが酸素を求めあうまで口づけをした。

潤んだ瞳で、ルキアが見つめてくる。

「これ以上は、お預けだ」

一護は、ルキアの細い体を抱き締めた。

「貴様に話しておかねばならぬことがある・・・」

「なんだよ」

「明日で、私は現世を去る。尸魂界に戻る。次にこれるのがいつかは、分からない」

「戻ってこれねーのか?」

「できれば、2~3か月以内に一度、現世にこれるように申請してみるつもりだが・・・それがかなうかどうかは、分からぬ」

一護は、ルキアを強く抱きしめた。

「待ってる。いつまでも、何年でも待ってるから」

「一護・・・・・・」

「だから、必ず戻って来いよ!」

黒崎家の家の前までやってきた。
そのまま、ルキアは窓から一護の部屋に入り、二人は現世での一時的な最後の時間を過ごし、また一つのベッドで眠りにつく。

「貴様が好きすぎて、尸魂界に戻りたくないのだ・・・・」

「俺も、お前を帰らせたくない」

「だは私は死神だ。守らねばならぬものがある」

「知ってる、だから、いつまでも待ってるぜ」

「貴様がよぼよぼのおじいさんになるまでには、戻ってこれるであろう」

「勘弁しろよ。半年経っても戻ってこないようなら、浦原さんに頼んで俺から迎えにいくからな」

その言葉を、しっかりと受け止めた。

「その時は、私を尸魂界から攫ってくれ、一護」

「そうしたいにのはやまやまだが、俺もお前もお尋ね者になっちまう」

「もどかしいな。何故私は死神なのだろうか」

「でも、ルキアが死神じゃなかったら、俺たちは巡り合わなかった」

「確かに、そうだな・・・・・・・」

いつの間にか、眠りについていた。

朝になり、支度を終えたルキアが、家の前に立っていた。

尸魂界へ続く、穿界門が開かれる。一護の目の前で穿界門に足を踏み入れながら、振り返る。

「またな、一護。また、会おう」

「ああ、待ってるからな!」

出会いと別れを繰り返して。

やがて、二人は結ばれる。

たとえ、死神と人間という、歩くべき道が違っても。

二人は、未来へ向けて、また一歩踏み出すのだ。







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