出会いは突然に⑤
「よ、まった?」
約束の時計台の前で二人は落ち合う。ちょうど12時を知らせる鐘が鳴った。
「べ、別に」
ふんとあらぬ方向を向くティエリア。だがいつになくかわいいワンピース系の服装に、髪を結い上げてリボンで綺麗にアクセントをつけている。
すれ違う人が、ティエリアの姿を見ては振り返る。どこぞのアイドルか?などという言葉まで聞こえたきた。
「は、早くいきましょう。さっきからじろじろ人が見てきて、不快だ」
それは、ティエリアがもつ容姿ゆえのものなのだろうが。
適当な格好をしていても一目を引くのに、少女らしいティーンズファッションでまとめあげて、少しお洒落をすればアイドルのように見えなくもなく。
服装一つで、こうまで人の雰囲気は変わるものなのかと、ニールは楽しそうに心の中で感嘆した。
「似合ってるよ。その服」
「あ、ありがとう・・・」
もじもじした様子で、小さな声が返ってくる。
ニールはティエリアの手をとって歩きだした。
「ちょ!」
「映画見に行こうぜ。チケットとってあるんだ。もうすぐ始まる」
「な、いきなりか!」
ティエリアの言葉も聞かないで、ニールが誘導していく。
ニールの手をはたいてから、ティエリアはとことことニールの横に並び映画館に向かって歩いていった。そして2時間ばかりのラブストーリーを見終わってカフェに入った。
「うう、グス・・・・」
「なんであなたが泣くんですか」
「だって、パトラッシュが!!」
一体どんな映画を見たんだお前ら。そうつっこみたくなる。
「ううう。パトラッシュ、いい子だったのに!!」
涙をハンカチでふくアイリッシュ系の男性に、店内の視線が集まる。あまりの恥ずかしさに、ティエリアは耳まで真っ赤になっていた。
初めて異性とデートしたのはいいが、なぜ連れの男がデートで、映画を鑑賞してそのストーリーで泣くのだ。普通立場が逆じゃないのか?
「も、もう泣き止んでください。チョコレートパフェおごってあげるから」
「おう・・・チョコレートパフェ2つくださーい」
泣き止んだニールは、アルバイトであろうメイドの人にチョコレートパフェを2つ頼んだ。
「何故2つ・・・」
「無論、ティエリアの分。お金は全部俺が出すって。無理すんなよ」
「う。まぁそういうことなら」
バイトはしていないので、小遣いはあるが無駄遣いできるほどはもっていないティエリア。
それからカフェでチョコレートパフェを食べて、適当に会話しながら公園を散歩して、ティエリアが新作のゲームが見たいとゲーム店に入って出る頃には、もう日が傾きかけていた。
「今日は楽しかった。思ったより」
「それは何よりだ。またデートしようぜ」
「ふん」
あらぬ方角をむいたティエリアの顎に、ニールの長い指が絡まった。
「ん?」
触れるだけの優しいキス。
「な、ななななな!!!」
「ごちそーさん。また明日学校でな。それから俺と付き合うの、真剣に考えといて。俺本気だから」
「な、なななな!ば、万死ーーー!!!」
はははと走り去っていくニールの後を睨みつけて、ティエリアは顔を真っ赤にして震えていた。
ニールに振り回されている自分が、嫌でないのに違和感を覚えつつも、彼と付き合うのもありかと頭のどこかで冷静に考える。
教師と生徒というタブーはあるが、2ヶ月もすればニールは教師ではなくなる。そのあたりはあまり問題はないと思う。
「万死・・・なんだから」
キスされた唇を指でなぞって、夕焼けの紫に染まりゆく空を見上げた。
出会いは本当に突然に。そしてデートまでしてしまった。学校でも毎日のように会話して、一緒にお昼までとっているし、休日には家にまで遊びにくるニール。
「人を好きになれるのかな?」
夕焼け雲を見ながら、ティエリアは寂しそうに呟く。かつて、ティエリアには好きな人がいた。従兄弟で、自分とよく似た容姿をしていた少年だった。幼い頃は将来結婚するんだとまで約束しあった。
「ねぇ、リジェネ。どう思う?」
リジェネという名の、まるで双子の片割れのような少年だった。彼を殺してしまったのはティエリア。交通事故だった。
今から5年前のことだ。それほど昔のことではない。
もう、誰も愛する資格などないのだとずっと決め込んでいた。
刹那やアレルヤのことは好きだけど、友人として家族としてだ。
異性としての恋愛など、もうすることもないだろうと思っていた。
「リジェネ、君は笑うかい。あんな人に、心惹かれていく僕を」
リジェネが優しく微笑み返している気が、した。
約束の時計台の前で二人は落ち合う。ちょうど12時を知らせる鐘が鳴った。
「べ、別に」
ふんとあらぬ方向を向くティエリア。だがいつになくかわいいワンピース系の服装に、髪を結い上げてリボンで綺麗にアクセントをつけている。
すれ違う人が、ティエリアの姿を見ては振り返る。どこぞのアイドルか?などという言葉まで聞こえたきた。
「は、早くいきましょう。さっきからじろじろ人が見てきて、不快だ」
それは、ティエリアがもつ容姿ゆえのものなのだろうが。
適当な格好をしていても一目を引くのに、少女らしいティーンズファッションでまとめあげて、少しお洒落をすればアイドルのように見えなくもなく。
服装一つで、こうまで人の雰囲気は変わるものなのかと、ニールは楽しそうに心の中で感嘆した。
「似合ってるよ。その服」
「あ、ありがとう・・・」
もじもじした様子で、小さな声が返ってくる。
ニールはティエリアの手をとって歩きだした。
「ちょ!」
「映画見に行こうぜ。チケットとってあるんだ。もうすぐ始まる」
「な、いきなりか!」
ティエリアの言葉も聞かないで、ニールが誘導していく。
ニールの手をはたいてから、ティエリアはとことことニールの横に並び映画館に向かって歩いていった。そして2時間ばかりのラブストーリーを見終わってカフェに入った。
「うう、グス・・・・」
「なんであなたが泣くんですか」
「だって、パトラッシュが!!」
一体どんな映画を見たんだお前ら。そうつっこみたくなる。
「ううう。パトラッシュ、いい子だったのに!!」
涙をハンカチでふくアイリッシュ系の男性に、店内の視線が集まる。あまりの恥ずかしさに、ティエリアは耳まで真っ赤になっていた。
初めて異性とデートしたのはいいが、なぜ連れの男がデートで、映画を鑑賞してそのストーリーで泣くのだ。普通立場が逆じゃないのか?
「も、もう泣き止んでください。チョコレートパフェおごってあげるから」
「おう・・・チョコレートパフェ2つくださーい」
泣き止んだニールは、アルバイトであろうメイドの人にチョコレートパフェを2つ頼んだ。
「何故2つ・・・」
「無論、ティエリアの分。お金は全部俺が出すって。無理すんなよ」
「う。まぁそういうことなら」
バイトはしていないので、小遣いはあるが無駄遣いできるほどはもっていないティエリア。
それからカフェでチョコレートパフェを食べて、適当に会話しながら公園を散歩して、ティエリアが新作のゲームが見たいとゲーム店に入って出る頃には、もう日が傾きかけていた。
「今日は楽しかった。思ったより」
「それは何よりだ。またデートしようぜ」
「ふん」
あらぬ方角をむいたティエリアの顎に、ニールの長い指が絡まった。
「ん?」
触れるだけの優しいキス。
「な、ななななな!!!」
「ごちそーさん。また明日学校でな。それから俺と付き合うの、真剣に考えといて。俺本気だから」
「な、なななな!ば、万死ーーー!!!」
はははと走り去っていくニールの後を睨みつけて、ティエリアは顔を真っ赤にして震えていた。
ニールに振り回されている自分が、嫌でないのに違和感を覚えつつも、彼と付き合うのもありかと頭のどこかで冷静に考える。
教師と生徒というタブーはあるが、2ヶ月もすればニールは教師ではなくなる。そのあたりはあまり問題はないと思う。
「万死・・・なんだから」
キスされた唇を指でなぞって、夕焼けの紫に染まりゆく空を見上げた。
出会いは本当に突然に。そしてデートまでしてしまった。学校でも毎日のように会話して、一緒にお昼までとっているし、休日には家にまで遊びにくるニール。
「人を好きになれるのかな?」
夕焼け雲を見ながら、ティエリアは寂しそうに呟く。かつて、ティエリアには好きな人がいた。従兄弟で、自分とよく似た容姿をしていた少年だった。幼い頃は将来結婚するんだとまで約束しあった。
「ねぇ、リジェネ。どう思う?」
リジェネという名の、まるで双子の片割れのような少年だった。彼を殺してしまったのはティエリア。交通事故だった。
今から5年前のことだ。それほど昔のことではない。
もう、誰も愛する資格などないのだとずっと決め込んでいた。
刹那やアレルヤのことは好きだけど、友人として家族としてだ。
異性としての恋愛など、もうすることもないだろうと思っていた。
「リジェネ、君は笑うかい。あんな人に、心惹かれていく僕を」
リジェネが優しく微笑み返している気が、した。
PR
- トラックバックURLはこちら