刹那だって、男だし(3期)
バスタイムを終わらせて、フェルトは部屋に出た。
着替えを置いておくのを忘れたのだ。
寝る時まで、制服姿なので、脱いだものとそうでないものの見分けをつけるのに、少し苦労する。ピンク色を基本としたフェルトの制服。
色は、ティエリアが決めてくれた。
髪もピンクだからと。
ちょっと大雑把すぎないかとも思ったけれど、ピンク色は好きなので別に不満はない。
「フェルト」
ノックもなしで、勝手に部屋の暗号キーを打ち込んで、やってきたのはロックオンのシャツ一枚で、肌も露なティエリア。
「どうしたの!何かあったの!?」
誰かに酷いことでもされたのか。まかさ、このトレミーにいる人に限ってそんなことはありえない。でもティエリアの美貌は美しすぎて。最近CBになった男性か誰かに、悪戯でもされたのか。そんな最悪な考えが浮かぶ。
「誰かに、何かされたの!?」
ふるふると、ティエリアは首を横に振った。
細いくびれのある腰。でも、胸はない。ロックオンのシャツはちょうど、ティエリアの太ももまで覆い隠していて、何の邪心もないフェルトでさえ、見ていてその色気と艶に頬を赤らめてしまいそうになる。
「僕が」
「うん」
「痛いと、鳩尾に蹴りをいれたつもりが、その、股間に……」
もごもご。ようは、そういう雰囲気になって、身体をつなげようとして、ティエリアは痛くてつい、ロックオンの股間を蹴り上げた。
涙を溜めて、頬にそれを流してフェルトに抱きつくティエリア。
「でも、痛いことなんて、ロックオンはしないんじゃ」
「歯が痛くて」
言葉を失う。虫歯かい!最初からそう言え。
「ロックオンのところに、いってくるね」
「一応服は着たままだったから」
「うん」
シュン。扉をあけて入ってきたのは刹那だった。
そして、まだ下着姿のフェルトと色っぽいティエリアの姿を見て、天を仰いでそれから俯いてしゃがみこんだ刹那。
「刹那!?あなたも何処か具合が悪いの!?」
「ふ、服を着てくれ、フェルト」
「きゃああああ!」
そこで、初めて自分が下着姿であるのに気づいた。ティエリアの格好もやばい。ちらちら、キスマークのついた胸やら太ももが見えている。肌が白すぎるだけに、少し吸い付いただけで簡単に痕を残すティエリアの肌は本当にシルクのように滑らかで。
「ティエリアも、ふ、服を」
刹那は屈んだままだ。
ティエリアが、首を傾げてしゃがみこんで、刹那を下から覗き込む。
「ぐ……」
昔は、ティエリアと比翼の鳥として生き、ティエリアを抱いたこともある刹那。扇情的な格好に、言葉を失う。いつもながらに大胆だ。
自分の格好も忘れて、同じようにフェルトもしゃがみこんだ。
「もうだめだ」
ばたり。刹那は、意地で鼻血を出すことなく、根性を燃やしつくした。
20代の青年の、僅かに褐色の肌をした精悍な刹那が、丹精な顔を手で覆ってから、倒れた。
もしも、床にインクがあったら。
フェルトの胸、と書いて倒れたことだろう。
トレミー陣の女性の胸はとにかく大きい。ミレイナは例外だが。
フェルトの胸に顔を埋めるのが、いつか刹那の密かなる野望。
だが、そんなことを口にしたり態度にする男ではない、刹那は。いつもフェルトをリードして、優しく接する。日に焼けた顔が、フェルトに愛を囁く姿を、よくトレミーで見る。
「これ、僕らが原因か。あいたた、歯が」
「歯医者いきね。決定だわ」
翌日、嫌だと喚くティエリアを横抱きにして、地上に降りるロックオンの姿があった。あの歯医者にある独特のにおい。そしてウィィィンと歯を削る音。ロックオンでさえ顔色が蒼くなる。やっぱり、嫌い、なのだ。歯医者が。
「俺は」
気がついた刹那は、ほとんどまる一日寝ていて。
「気がついた?はい、ポカリ。何も食べてないし飲んでないようだったから。まずはこれで水分補給してね」
頬に当てられる、ドリンクを受け取って、一気に飲み干して。刹那は、ルビーの瞳をさらに赤くさせた。
「フェルト?」
「え?」
その腕をひっぱり、唇を奪った。
「せせせせ、刹那?」
「我慢、していたんだ。あの姿は心臓に悪すぎる」
「ごめん、もう下着姿でしゃがむなんて、ティエリアみたいなことしないから」
「もうしてくれないのか?」
「ええっ。刹那はしてほしいの?」
「さあ、それはどうだろう」
はにかむ笑顔。何を考えているのか分からないけど、優しい微笑みがそこにあった。
一方地上では。
「私はもう死ぬのです、ジャボテンダーさん。墓を100こ建ててください」
歯医者のナースに手を、ひっこぬかれるくらいに引っ張られて、処置室にいく。泣きながらロックオンを見るけど、手をひらひらするだけで助けてくれない。ジャボテンダーさんは、ロックオンの腕の中。
嗚呼。
「いたあああああ!!」
処置室から、麻酔が効いているだろうに、ティエリアの悲鳴が大きく響いた。
ロックオンは、歯磨きは怠らないようにしようと、そう思った。ティエリアの二の舞になりたくない。トレミーに帰ると、アレルヤもライルもリジェネも、みんな歯医者は嫌いなそうで。
やっぱり、あの独特の匂いと歯を削る音が原因なんだろうなぁと、ジャボテンダーを抱いてロックオンにそっぽを向いて、リジェネと手を繋いでいく愛しい恋人を見て、ロックオンは溜息をつくのであった。
着替えを置いておくのを忘れたのだ。
寝る時まで、制服姿なので、脱いだものとそうでないものの見分けをつけるのに、少し苦労する。ピンク色を基本としたフェルトの制服。
色は、ティエリアが決めてくれた。
髪もピンクだからと。
ちょっと大雑把すぎないかとも思ったけれど、ピンク色は好きなので別に不満はない。
「フェルト」
ノックもなしで、勝手に部屋の暗号キーを打ち込んで、やってきたのはロックオンのシャツ一枚で、肌も露なティエリア。
「どうしたの!何かあったの!?」
誰かに酷いことでもされたのか。まかさ、このトレミーにいる人に限ってそんなことはありえない。でもティエリアの美貌は美しすぎて。最近CBになった男性か誰かに、悪戯でもされたのか。そんな最悪な考えが浮かぶ。
「誰かに、何かされたの!?」
ふるふると、ティエリアは首を横に振った。
細いくびれのある腰。でも、胸はない。ロックオンのシャツはちょうど、ティエリアの太ももまで覆い隠していて、何の邪心もないフェルトでさえ、見ていてその色気と艶に頬を赤らめてしまいそうになる。
「僕が」
「うん」
「痛いと、鳩尾に蹴りをいれたつもりが、その、股間に……」
もごもご。ようは、そういう雰囲気になって、身体をつなげようとして、ティエリアは痛くてつい、ロックオンの股間を蹴り上げた。
涙を溜めて、頬にそれを流してフェルトに抱きつくティエリア。
「でも、痛いことなんて、ロックオンはしないんじゃ」
「歯が痛くて」
言葉を失う。虫歯かい!最初からそう言え。
「ロックオンのところに、いってくるね」
「一応服は着たままだったから」
「うん」
シュン。扉をあけて入ってきたのは刹那だった。
そして、まだ下着姿のフェルトと色っぽいティエリアの姿を見て、天を仰いでそれから俯いてしゃがみこんだ刹那。
「刹那!?あなたも何処か具合が悪いの!?」
「ふ、服を着てくれ、フェルト」
「きゃああああ!」
そこで、初めて自分が下着姿であるのに気づいた。ティエリアの格好もやばい。ちらちら、キスマークのついた胸やら太ももが見えている。肌が白すぎるだけに、少し吸い付いただけで簡単に痕を残すティエリアの肌は本当にシルクのように滑らかで。
「ティエリアも、ふ、服を」
刹那は屈んだままだ。
ティエリアが、首を傾げてしゃがみこんで、刹那を下から覗き込む。
「ぐ……」
昔は、ティエリアと比翼の鳥として生き、ティエリアを抱いたこともある刹那。扇情的な格好に、言葉を失う。いつもながらに大胆だ。
自分の格好も忘れて、同じようにフェルトもしゃがみこんだ。
「もうだめだ」
ばたり。刹那は、意地で鼻血を出すことなく、根性を燃やしつくした。
20代の青年の、僅かに褐色の肌をした精悍な刹那が、丹精な顔を手で覆ってから、倒れた。
もしも、床にインクがあったら。
フェルトの胸、と書いて倒れたことだろう。
トレミー陣の女性の胸はとにかく大きい。ミレイナは例外だが。
フェルトの胸に顔を埋めるのが、いつか刹那の密かなる野望。
だが、そんなことを口にしたり態度にする男ではない、刹那は。いつもフェルトをリードして、優しく接する。日に焼けた顔が、フェルトに愛を囁く姿を、よくトレミーで見る。
「これ、僕らが原因か。あいたた、歯が」
「歯医者いきね。決定だわ」
翌日、嫌だと喚くティエリアを横抱きにして、地上に降りるロックオンの姿があった。あの歯医者にある独特のにおい。そしてウィィィンと歯を削る音。ロックオンでさえ顔色が蒼くなる。やっぱり、嫌い、なのだ。歯医者が。
「俺は」
気がついた刹那は、ほとんどまる一日寝ていて。
「気がついた?はい、ポカリ。何も食べてないし飲んでないようだったから。まずはこれで水分補給してね」
頬に当てられる、ドリンクを受け取って、一気に飲み干して。刹那は、ルビーの瞳をさらに赤くさせた。
「フェルト?」
「え?」
その腕をひっぱり、唇を奪った。
「せせせせ、刹那?」
「我慢、していたんだ。あの姿は心臓に悪すぎる」
「ごめん、もう下着姿でしゃがむなんて、ティエリアみたいなことしないから」
「もうしてくれないのか?」
「ええっ。刹那はしてほしいの?」
「さあ、それはどうだろう」
はにかむ笑顔。何を考えているのか分からないけど、優しい微笑みがそこにあった。
一方地上では。
「私はもう死ぬのです、ジャボテンダーさん。墓を100こ建ててください」
歯医者のナースに手を、ひっこぬかれるくらいに引っ張られて、処置室にいく。泣きながらロックオンを見るけど、手をひらひらするだけで助けてくれない。ジャボテンダーさんは、ロックオンの腕の中。
嗚呼。
「いたあああああ!!」
処置室から、麻酔が効いているだろうに、ティエリアの悲鳴が大きく響いた。
ロックオンは、歯磨きは怠らないようにしようと、そう思った。ティエリアの二の舞になりたくない。トレミーに帰ると、アレルヤもライルもリジェネも、みんな歯医者は嫌いなそうで。
やっぱり、あの独特の匂いと歯を削る音が原因なんだろうなぁと、ジャボテンダーを抱いてロックオンにそっぽを向いて、リジェネと手を繋いでいく愛しい恋人を見て、ロックオンは溜息をつくのであった。
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