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卯ノ花と更木

「卍解・・・・・皆尽」

「そうこなくっちゃな!切り甲斐があるってもんだぜ」

ああ・・・・・あなたは死線くぐる度に強くなる。それこそがあなたが科した過ち。そして私の罪--------------。

切り合いを続けた。

私の跡を継ぐものは、この者しかいない----------------。

あなたは弱い。私は強い。

でも、それを捻じ曲げて、あなたは遥かなる高みへいく・・・・。

何度更木を切っても、更木には恐怖がないのか、死を賭けた切り合いを楽しんでいた。

「まだまだだぜ!」

キンキンカキン。

剣がこすれ合う音が、無闇に広がった。

やがて、お互いに疲弊してきた。更木は、特別な一撃を放った。

胸に、ザシュリと更木の剣がくいこんだ。

「おい・・・・あんた、死ぬのかよ」

応えはなかった。

「死ぬな!!」

更木は吠えた。

卯ノ花は満足そうな顔をしていた。

役目を果たして死ねることのなんと幸福であることか。

もう、卯ノ花は立ち上がることもできないでいた。

「おい、その程度の傷回道で癒せ!死ぬな!あんたとはもっと戦っていたいんだ!」

「ふふ・・・何を、泣きそうな顔をしているのですか。私は、これで本望です。やっと、剣八の名をあなたにわたせる・・・・・」

「卯ノ花!」

「ふふ・・・・私は、なんと幸福なこと・・・・・か・・・・」

瞳孔が開ききる。

だらんと力をなくした体。

少しずつ冷たくなっていく。

「うおおおおおおおおお!」

更木は吠えた。

そして、卯ノ花の体を抱き上げて、無闇からでてきた。

「更木隊長、卯ノ花隊長は!」

待っていた浮竹に、卯ノ花を渡す。

「死んだ。死んだら、戦うことも楽しめなくなるのに-------------死にやがたった。俺のために」

「そうか・・・京楽、葬儀の用意を」

「うん」

浮竹と京楽は、卯ノ花を遺体大事そうに抱きあげて、戻っていく。

「なぁ。あんたは、これで本当に本望だったのか?」

青空に話しかけていた。

「俺は・・・本気で、あんたのことが好きだったんだぜ?」

答えはもうどこにもない。

愛する者を手にかける。なんと残酷で淫靡な味のすることか。

その日の夜には、殉職した卯ノ花の葬儀が行われた。

「隊長!卯ノ花隊長!」

手紙で思いを伝えられたとはいえ、卯ノ花の死を勇音はすんなり受け入れないでいた。

葬儀に立ち会った者たちは少なかった。

更木の姿もなかった。

ただ、菊の花を添えてくれと、浮竹に渡した。

その菊の花を、棺の中央にいれた。

なんと安らかな死に顔であるだろうか。血のあとはぬぐいとられ、まっさらな死覇装と隊長羽織を着せられていた。

「卯ノ花隊長-----------どうか安らかに」

我慢できなくなって、浮竹は京楽の隣に並んだ。

「ねえ、卯ノ花隊隊長。満足でしょ?更木剣八は、始めてて斬魄刀を持った。君のお陰だよ」

更木を高みにのぼらせるためとはいえ、卯ノ花の死は大きかった。

4番隊の隊長が死ぬ----------それだけ、治癒に余計に時間がかかる。

「卯ノ花隊長、どうか安らかに」

「おやすみ、卯ノ花隊長」

浮竹と京楽は、棺を閉じて火をつけた。

ぱちぱちと、火が爆ぜる。

空高く昇っていく煙は、山本元柳斎重國の時と同じように、雲一つない晴天へと還っていく。

「卯ノ花隊長!」

勇音は、何時までいつまでも泣いていた。

やがて、棺が灰になる。

遺骨を拾う。

一緒に入れて置いた斬魄刀は、灰にはならなかった。

「仕方ない。斬魄刀は、墓にいれようか」

京楽の言葉に、皆頷いた。


大戦が終わり、仮のものではなくきっちりと建てられた卯ノ花の墓の前に、京楽は来ていた。

「満足かい、卯ノ花隊長。更木隊長は強くなり、敵を葬ったよ」

山本元柳斎重國が死に、卯ノ花烈が死に・・・・・愛しい、浮竹十四郎も死んだ。

「今回の大戦は、尸魂界の歴史の中で一番厳しいものだったね」

卯ノ花の墓の前に、菊を添えた。

「でも、悲しくないでしょう、卯ノ花隊長。そっちには、山じいの浮竹もいる。案外、楽しそうに過ごしたりして」

人が死にゆくと尸魂界に来る。

死神が死ぬと、その膨大な霊圧は霊子の流れに還る。

「浮竹ー!寂しくなんて、ないよね!?」

浮竹十四郎の葬儀は終わったが、墓はまだだった。雨乾堂を取り壊して、そこに墓を建ててやろうと思っていた。

聞こえるはずもない、浮竹に話しかける。

「僕は元気でやってるから、君も元気でね」

卯ノ花の墓石に、酒を注いだ。

今は、死者を尊ぶ真似もできない。死神の実に半部以上が死んだ。瀞霊廷は焦土と化した。

「君たちも、天から見守っていてよ。居残った、僕らのあがきを-----------」

例え、這いずり周りながらでも生きていく。

それが人という生き物。

潔く散った3人には悪いが、これ以上隊長副隊長を死なせるわけにはいかない。

「いうか僕もそっちにいくから、3人仲良く待っててね」

空を見上げる。

雲一つない、青空だった。



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