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9話補完小説

「勘弁してよ、山じい・・・・・」

山本元柳斎重國の遺言により、京楽春水が総隊長となった。

「大丈夫か、京楽」

「あ、うん・・・昨日の今日で、ちょっと寝れてないだけだよ」

「それにしても、先生が京楽を総隊長に任命する遺言を書いていたなんて・・・・」

「ほんとに、冗談にしてほしいよね。でも、決まりだ。総隊長には、今から僕がなる」

「がんばれよ、京楽!後は無理はするな!」

恋人を抱き締めて、口づけた。

京楽の右目は、。光をなくした。耳も欠けた。

今は、黒い眼帯に覆われている。


「卯ノ花隊長、本当にいくのか?」

「どうしたのですか、浮竹隊長。そんな蒼い顔をして」

「だって、更木隊長と切り合いってことは・・・・・・」

「ええ。どちらかが死ぬでしょうね。多分私が」

浮竹は、卯ノ花を抱き締めた。

「浮竹隊長?」

「あなたには世話になった。先にいくとしても、きっと俺も後に続くから」

「ええ。寂しくはありません。すでに山本元柳斎重國がいるのですから」


京楽は、四十六室にいき、卯ノ花と更木の切り合いを承知させた。

「ほんとに、四十六室は、自分の保身だけでいやになるね・・・・・」

浮竹のところに戻ってくると、その膝枕に頭を乗せた。

「少し眠るよ・・・・」

「ああ、おやすみ・・・・・・」

卯ノ花は、死を覚悟して罪人を閉じ込める空間の無闇に、更木と一緒に消えていった。

「卯ノ花隊長-----------------」

護廷13隊のために死なば本望。

命を散らせてまで、更木に強くなってほしいのだ。

山本元柳斎重國の次は卯の花烈。きっと、その次は自分。

そんな予感を抱きながら、深い眠りについてしまった京楽を布団の上に寝かせて、その隣で寝転んだ。

「山本元柳斎重國、卯ノ花烈、そして浮竹十四郎--------------」

死者と死にゆく者へ、自分の名を並べてみる。

なんとも、一番印象が薄い。

山本元柳斎重國は総隊長、卯ノ花烈は卯ノ花八千流と名乗っていた、初代剣八。

その中に自分が並んだとしても、色あせてしまうなと思いながら、京楽の眼帯に手をかける。

そっと眼帯をずらして、摘出した眼球のかわりに入れられていた義眼に、キスをした。

「忙しくなるな・・・・・」

卯ノ花の、葬儀をしなければならない。

まだ、今は生きているが、死ぬのも時間の問題だ。

「死ぬのが怖くないんだな、卯ノ花隊長---------------」

自分は恐い。

死にたくないと思う。

無闇に去り際の。卯ノ花のことを思い出す。

死にに行くにしては、楽しそう顔をしていた、久し振りに、自分の本性を現せるのだ。死をかけた、命をかけた切り合いが楽しくて仕方ないのだ。

さすが、初代剣八といったところか。

「俺も、少し眠るか・・・・・・」

起きた頃には、卯ノ花の遺体が棺に入れられるだろう。

山本元柳斎重國のように、白い百合の花で満たしてやろう。そう思った。


----------------------------------

キンキンカキン。

斬魄刀がぶつかり合う。

「今日は随分饒舌なのですね。私は、寡黙なあなたのほうが好きです」

「ぬかせ!」

何度、剣を合わせただろう。

「けっ、こんなもんかよ!」

更木が、卯ノ花の剣を叩き折ろうとした。

けれど、その剣はびくともしない。

「くそっ・・・・・俺は、あんたに憧れてた」

「剣を交じり合わせての戯言は聞きません」

「あんたが・・・・あんたが、俺に恐怖をくれた。暗闇だった俺の空間に、切ることで生きがいができた」

卯ノ花の背中を切ろうろした・

「甘い!」

卯ノ花の剣が、それを制する。

「卯ノ花八千流・・・・あんたのことが、好きだった。護廷13隊の初代11番隊隊長にして、最強の剣八!」

ザシュ。

いくつもの傷が、更木を血まみれにする。

「俺は、あんたが好きだ」

「戯言を・・・・・」

剣で右肩を貫かれながら、卯ノ花を抱き締めた。

「ああ、一度でいいからあんたを抱きたかったなぁ」

「更木剣八・・・・・あなたは弱い。けれど、死線を潜り抜く度に強くなる。あなたの強さが、今の尸魂界には必要なのです」

唇を重ねていた。

血の味がした。

「何を・・・・・」

「尸魂界きっての大罪人だ、俺もあんたも。護廷13隊の隊長であるということがなければ」

「その程度のこと、知っています」

「続けようじゃねぇか。殺し合いを!」

「望むところです!」

ああ---------------。

私は、この男に殺される--------------。

その味の、なんと甘美なことか。

「死を覚悟なさい!」

それは、私だ。

私が、死を覚悟しなければいけない。

更木剣八。

私の---------------卯ノ花八千流の死体を踏み台にして、その強さを高みの先へと伸ばせ。

ザシュ。

「あ・・・・・・」

ぽたりと、卯ノ花の口から血が溢れた。

「おい、まだ終わりじゃないだろうな!」

「なんのために、私が回道を学んだと思っているのです」

回道で、血止めだけして、また更木と切り結びあった。

ああ。

この浴びせられる斬撃の痺れは、とても甘い。

死の香がする----------------。


卯ノ花と、更木は血を流し、傷だらけになりなあがら、一心不乱で切り結びあった。

「私は、卯ノ花八千流。初代剣八にして、初代護廷13隊11番隊長」

にっと、笑った。

残酷な笑みだった。

私の願いに適わぬ程度なら、いっそ殺してしまおう。

どうかどうか。

私を踏み越えて、高みへと昇ってくれ。

相反する感情を抱きながら、二人は切り結び合うのだった。



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